著者
大形 徹 辻尾 榮市
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

太陽を載せるエジプトの三日月の舟の観念は中国にも影響を与えたようだ。太陽が地を潜ったあと復活再生して天空に昇るように、死者もまた舟に乗ってあの世に復活した。中国では仰韶の墓に龍に跨る人の造形がある。龍の原形はワニであり、水平線から天の川を遡り、背に乗る死者の魂を天に運んだのだろう。龍の角は殷・周ではキリンで後に羚羊や鹿の角になる。角をつけなければ空にのぼれないのだろう。戦国から漢代にかけて龍と舟が結びついた。そして被葬者は龍の舟に乗り、あの世に復活再生するという観念が生まれた。これは扶桑の枝に再生する太陽とも重ね合わされた。死者が復活する初期の仙人の原形ともいえる。
著者
坂出 祥伸 鄭 正浩 大形 徹 山里 純一 松本 丁俊 内田 慶市 頼富 本宏
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本課題について平成12年度から平成14年度までの期間中、7回の海外調査、1回の沖縄調査、2回の調査報告会を行った。海外調査では、台湾、福建南部、香港、タイ、マレーシア、マニラ、シンガポールの道教的密教的辟邪呪物の調査を行った。ここには、特徴的な事象について説明する。(1)台湾南部では住宅整備と道路改修などの近代化・都市化に伴い、辟邪物が漸次減少化傾向にある。(2)金門島では台湾本島でも対岸の大陸でも見られない種々に珍しい鎮宅符が残っていて、ここは辟邪物の宝庫といえる。(3)厦門、泉州などの市街区では都市・道路整備のために辟邪物・呪符はほとんど消滅していたが、少し奥地の〓州では古い建築物が残っていて正一派道教の出す色々な呪符が見られた。(4)香港は市街区には呪符・辟邪物はほとんど見られないが、北部九龍地区の全真教系道観がいくらか呪符を出していた。(5)タイ、マレーシアにはともに福建南部出身の移住民が多いので、出身地の正一派や民間信仰の道観が出す呪符があったが、タイでは現地仏教との融合した辟邪呪物・呪符が見られ、本頭公という土地神がり、またマレーシアでは、マレーシア原住民の土地信仰・拿督公と融合した大伯公信仰が盛んであった。(6)マニラでは福建南部・晋江の道教との結びつきが強く、道観が種々の呪符を出していたのと、カソリック信仰との融合したサントニーニョが辟邪物として信仰されていた。(7)シンガポールの華人は近代には都市整備が進んでいるために辟邪呪物・呪符もほとんど見ることができなかったが、ここでも現地マレーシア人の拿督公と融合した大伯公信仰が見られた。全体としては、本課題の調査は非常に大きな有益な成果があったという感想である。
著者
大形 徹
出版者
大阪府立大学人文学会
雑誌
人文学論集 (ISSN:02896192)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.127-143, 1997-01-10

金子務教授・片倉穰教授停年退官記念号

1 0 0 0 IR 仙人の飲食

著者
大形 徹
出版者
大阪府立大学 人文学会
雑誌
人文学論集 (ISSN:02896192)
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-41, 2018-03-31
著者
大形 徹
出版者
大阪府立大学人文学会
雑誌
人文学論集 (ISSN:02896192)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.45-62, 1994-03-01

砂原教男教授停年退官記念
著者
坂出 祥伸 大形 徹 大庭 脩
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

私たちは、上記の課題について、哲学・医学・古文字学の三方面から二年かけて研究した。私たち三名の研究者が毎週1回集まって(引書)を読み、その注釈と翻訳を行った。また私たちは2年間に5回の研究発表会を開いた。第1回1993年9月11日京大会館 猪飼祥夫「脈書」と「引書」の性格第2回1993年11月4日京大会館 工藤元男睡虎地泰簡「日書」に現れた治病・鬼神関係資料をめぐって第3回1994年10月22日近つ飛鳥博物館 永田英正 長城守備隊の勤務第4回1994年11月20日京大会館 大形徹 新出土資料より見る鬼と気の問題第5回1995年1月29日京大会館 坂出祥伸 出土医書にみえる自然リズムにもとづく治病・養生 大庭脩 武威早灘坡王杖簡冊の復原 以上の共同研究によって、私たちは以下のような新しい知見を得た。1)張家山出土<引書><脈書>には早くも、天・地の気の運動と人間の身体の気の運動とを同調させれば、長生が獲得できるという考えが説かれている。2)<引書><脈書>には、疾病の原因として、気の流れの不調が挙げられている。しかし、鬼による病因論は、これらの資料には見えない。3)馬王堆漢墓医書と同様に、張家山出土医書も、鍼による治療はまだ記述されていない。それらは灸による治療を記述しているに過ぎない。また、これらの資料には、十二経脈に関する祖型的記述は見えているが、しかし、それらはまだ五臓と関係づけられていない。
著者
大形 徹
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.18, pp.151-175, 1998-09

「茅」という漢字は「ちがや・かや」と訓まれる。植物学の分類によれば、カヤ(=ススキ、Micanthus siensis Anderss)とチガヤ(Imperata cylindrical (L.) Beanv)は異なる植物である。しかし古代の日本や中国では、しばしば混同されている。 茅(チガヤ)は典型的な魔除けの植物である。「茅は霊草をいう(『漢書』郊祀志上、顔師古注所引張晏)」と、茅には不思議な力が認められていた。日本では、端午の節句の時期にシメナワに茅と艾(ヨモギ)を結わえ、屋根に飾る風習がある。これは家屋に侵入しようとする悪鬼をしばりあげるためのものであろう。茅(チガヤ)は葉が矛の形に似る。また茅の葉は刃物の様によく切れる。「茅(ち)の輪くぐり」は輪をくぐることによって身についた悪鬼をそぎおとし、「茅(かや)葺き(カヤ=ススキ)」は屋根から侵入しようとする悪鬼をふせぐのだろう。また端午や夏至に食べる粽(チマキ=茅巻)は、茅(チ=チガヤ)で巻いたから、この名があるとされている。祇園祭のかざりチマキは門口にぶら下げられる。本来、正月のシメナワと同様の悪霊除けであったように思われる。