著者
大木 秀一 彦 聖美
出版者
石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.7-18, 2013

英米の書籍(基本書)をもとに研究方法論としての文献レビュー(文献研究)について検討した.インターネットで書籍検索を実施した結果,システマティック・レビューやメタアナリシスなど高度な文献研究のみを扱った書籍を除外すると2012年9月現在,文献レビューに関する英文の書籍は13種類25冊であった.各書籍の最新版をもとに内容を検討し以下の知見を得た.書籍の起源は1998年と推定された.文献レビューは,一定の手順と技術に基づいて実施される,それ自体が独立した研究方法論と言える.優れた文献レビューには網羅性(情報量)と独創性の2側面が要求される.大学院生(学位論文の執筆)では必須の素養に位置付けられる.文献レビューのトレーニングは,文献検索(情報収集)能力,文献の品質評価能力,各種データの統合力,オリジナリティの創出力,学術的作文能力など,研究に必要な基礎的能力を習得する機会として有用だと思われる.(著者抄録)
著者
彦 聖美 大木 秀一
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2016

男性介護者は女性介護者と比較して,介護生活が破綻しやすいハイリスク集団である.増加する男性介護者が性別特徴による課題を有する集団として注目されたのは最近のことである.男性介護者の健康支援を考える場合には,社会学等で先行する多くの知見を加味する必要がある.男性介護者の健康は,個人レベルでは,性差,婚姻,経済状況,就業,生活習慣,心理状態,社会的サポート,社会的ネットワークなど,集団レベルでは,ジェンダー,性別役割,家族形態の変化,ワーク・ライフ・バランス,介護保険制度,ソーシャル・キャピタル,地域差などの様々な社会的要因が関与する.今回,これらの要因について現在までに得られている知見をまとめた.男性介護者に対する個人レベル・集団レベルでの包括的な健康支援は,介護者全体を取り巻くより本質的な問題の解決につながり,その結果,性別を問わず,介護者全体が健康に暮らせるような社会につながる可能性が期待できる.
著者
大木 秀一
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.97-105, 2017 (Released:2017-10-31)

The usefulness of twin studies as an approach to genetic study in the field of physiological anthropology is discussed. Twin studies are used to investigate the heritability of multifactorial traits, including physiological traits. The study of twins is also a powerful tool in molecular genetic studies, for example, in the detection of epigenetic differences between monozygotic twin pairs. The importance of a life-course approach is also discussed. However, a literature review showed that less than 5% of studies in physiological anthropology in Japan were genetic studies, and very few of these were twin studies. More genetic studies are expected to be performed in the field of physiological anthropology in the future.
著者
大木 秀一
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.77-92, 2001 (Released:2010-06-28)
参考文献数
41

A genetic analysis was conducted in order to evaluate to what extent alcohol use and smoking are influenced by genetic or environmental factors. The subjects were adult 149 monozygotic twin pairs and 87 parent-offspring pairs who answered a mailed questionnaire, including requests for information on alcohol use and smoking. Covariance structure analysis was performed using program packages PRELIS2 and LISREL8. The results demonstrated that (1) significant heritability were obtained for both alcohol use (73% for male and 64% for female) and smoking (58% for male and 33% for female), (2) dominance genetic effects were observed for male alcohol use and common (within family) environmental effects were observed for female smoking, (3) a higher genetic effects were observed for alcohol use than for smoking in both sexes, (4) a higher environmental effects were observed for female than for male in both behaviors, (5) the co-occurrence of both behaviors were in part influenced by common genetic/environmental factors, with the additive genetic correlations of. 54 for males and. 50 for females, and random environmental correlations of. 34 for males and. 33 for females. These results show that lifestyles, such as alcohol use and smoking, are under substantial genetic control. It is concluded that not only environmental factors, but genetic factors should be considered in the proper management of alcohol use and smoking.
著者
大木 秀一 彦 聖美
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa journal of nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-11, 2012

ライフコース疫学では,妊娠期から小児期,思春期,成人期にわたる人生の流れを通じて,健康や疾病の生物学的(遺伝要因を含む)・社会学的・心理学的なリスクが相互に蓄積・連鎖し,修飾されていく状態を検証する.また,リスクの世代間伝達にも関心を向ける.ライフコース疫学が固有の研究領域として確立したのは1990年代後半以降である.その背景には,成人期以降の慢性疾患に対して,成人期のリスク因子を個別に同定し,個人レベルでライフスタイルに介入する現在主流のアプローチに限界が見られてきたことがあげられる.また,胎内環境・発達起源仮説,エピジェネティクス,社会疫学,行動遺伝学など近接領域の研究が大きく進展したことも大きい.ライフコースを重視した健康格差の是正は,ライフステージで区分けされた従来の予防対策とは異なり,より包括的・長期的な視野のもとで健康課題に挑むものであり,新たな健康政策への提言に結びつく.(著者抄録)
著者
大木 秀一
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-37, 2002 (Released:2014-07-03)
参考文献数
18

目的は包括的な健康習慣に対してどの程度遺伝要因が関与しているかを数量的に評価する事である。対象は東京大学教育学部附属中等教育学校を卒業した成人双生児である。2000年前半に、卒業生双生児に対して「生活習慣等についての質問紙調査」を実施した。ペアで回答を得ることが出来た同性双生児 (一卵性双生児145組、二卵性双生児14組) を分析対象とした。包括的な健康習慣を表わす指標として以下の基準を採用した。「7~8時間の睡眠時間」「週に1度以上の運動をする」「自覚的なストレスが中等度以下である」「毎日飲酒でない (過度の飲酒をしない)」「喫煙をしない (喫煙習慣なしまたはやめた)」「朝食を毎日食べる」「栄養のバランスを考えている」の7項目を良い生活習慣とみなした。良い生活習慣を取っている個数の合計は0点から7点に分布し、高得点の方が包括的な生活習慣がよいと考えた。全ての質問項目の回答を得た141組に対して双生児研究法の原理に共分散構造分析を応用し、健康習慣の背後に仮定した遺伝要因・環境要因の関与の程度を推定した。潜在変数としては2種類の遺伝要因 (相加的遺伝要因 (A)・優性遺伝要因 (D)) と2種類の環境要因 (共有環境要因 (C)・非共有環境要因 (E)) および年齢要因を仮定した。最適のモデルはAESモデル (年齢要因を考慮したAEモデル) であった。相加的遺伝要因の寄与は27%、非共有環境要因の寄与は72%であった。我が国ではこれまで、生活習慣は環境面からのみ検討される事が多かったが、一部で遺伝的に規定されている事が確認された。量的遺伝学の概念は集団を対象に定義されており個人に対するものではない。また、生活習慣に対する遺伝規定性と言った場合には、単一の遺伝子や生物学的な問題を想定しているわけではない。広く、ある種の行動パターンを選択したり、嗜好するような心理的要因・性格傾向の遺伝規定性をも念頭に置いている。ただし、健康習慣を全体として見れば70%以上が非共有環境要因により説明されており、個人に特異的な環境要因の影響が強い。それゆえ、環境要因を改善することで生活習慣の是正を図る事は行動遺伝学的な見地からも妥当なものである。生活習慣の評価や改善を論じる上でも遺伝要因の影響を無視し得ないと結論できる。
著者
金川 克子 山岸 映子 田村 須賀子 西村 真実子 大木 秀一 杵淵 恵美子 伴 真由美 浅見 洋 曽根 志穂 梅山 直子 高窪 美智子 杉原 敏雄 田中 理 吉村 香代子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-9, 2007

石川県立看護大学はJICAの依頼のもとに,タジキスタン共和国の母子保健の向上に資する目的で,2005年から概ね3年間の予定で「母と子の健やか支援プロジェクト」の企画,運営を通して,支援活動に加わることになった.その一環として2005年10月から12月まで,タジキスタンより研修員6人を受け入れ,県内の他機関との協力のもとで,研修を実施した.本旨は研修プログラムの企画,内容,評価等の実施状況と,研修のありかたについての考察についての報告である.研修の目的はわが国における母子保健や公衆衛生活動の現状を理解するのみでなく,研修員がこれらの成果を生かして,自国での母子保健の改善や新しいプログラム開発に向けてのアクションプランを作成し,実践することが課せられている.われわれもその目的に向けての研修のあり方の工夫が必要である.(著者抄録)