- 著者
-
村井 史香
岡本 祐子
太田 正義
加藤 弘通
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.3, pp.121-131, 2019 (Released:2021-09-30)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
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本研究の目的は,自認するキャラを対象とし,キャラ行動をすることによって,キャラを受容していくという過程が成立するかどうかを検討すること,さらにキャラ行動およびキャラの受け止め方と承認欲求,評価懸念との関連を明らかにすることであった。質問紙調査によって,中学生434名と大学生219名のデータを得て分析を行った結果,以下の3点が示された。第1に大学生は中学生よりも自認するキャラを有する者が多く,学校段階に関わらず,賞賛獲得欲求はキャラのある者の方が高かった。第2に,因子分析の結果,自認するキャラの受け止め方は“積極的受容”,“拒否”,“無関心”の3つが得られ,キャラ行動をすることでキャラを受容する過程が成立することが明らかとなった。第3に,賞賛獲得欲求だけがキャラ行動と正の関連を示し,賞賛獲得欲求に基づくキャラ行動が,キャラの積極的受容を促進することが示された。一方,評価懸念はキャラの積極的受容には負の関連を示し,キャラへの拒否には正の関連を示した。この過程は学校段階に関わらず,成り立つことが示された。賞賛獲得欲求に基づくキャラ行動は,“見られたい自分”を主体的に演出する行為であり,以上の結果はキャラが持つ肯定的な側面にも目を向けるべきであることを示唆するものであると考えられる。