著者
大江 真道
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.229-232, 2008 (Released:2009-07-02)
参考文献数
14

イネ科作物の分枝は分げつと呼ばれる.植物学的には側芽が発達した分枝であるが,わが国ではこのように呼ばれ,学術用語として位置づけられている.分げつの出現や成長,つまり分げつ性は種や品種によって特徴があり,その特徴が草型を特徴づけている.また,作物生産においては子実収量,バイオマス生産に直結する要素で,その消長は栽培の良否,施肥の適期,生育相を知る主要な手段として活用されている.一方,研究分野においても,その推移,規則性,他分げつとの相互関係の解析は,品種の特性,生育の特性,生育の良否を知る手段として重要な意味を持つ.分げつに関しては,分化発達,種や品種と分枝構造との関係,環境条件や栽培条件との関係など,興味深い側面を多々含むが,本稿では主にイネの分げつについて,基本となる表記や呼称,生育の様相,規則性,調査方法を述べることとした.
著者
大江 真道
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

不時の豪雨いわゆるゲリラ豪雨による冠水がイネ生育へ及ぼす影響を明らかにするために1、2、4、8日の冠水処理を生育時期別に行った。生育初期に生じた影響は生育とともに回復し、収量への影響は小さかった。生育後期では、籾の分化期、花粉の形成期、稔の前期の処理で影響が大きく、2日以上の冠水で収量が減少した。収量の減少は弱勢の籾の退化に因る籾数の減少に起因した。生育後期の長期冠水(8日)は通常出現しない遅発分げつ(分枝)を促進した。見かけの茎数は増えるが穂を形成することは無かった。このような分げつの出現は重心を高め、倒伏に弱い姿勢に導いた。以上の障害は水温が高い場合ほど顕著であった。