著者
宮澤 正典 Masanori Miyazawa
出版者
同志社大学一神教学際研究センター
雑誌
一神教学際研究 = Journal of the interdisciplinary study of monotheistic religions : JISMOR (ISSN:18801080)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.7-24, 2015-03-31

昭和戦時下のひとつの転換点は1937年の日独伊防共協定、40年の三国軍事同盟であった。各新聞はそれに先立ってヒトラー総統に対して厳しく批判してきた。しかし、1935年にまず『朝日新聞』がヒトラー讃美に転じ、他紙も競って三国同盟を「人類の福祉に貢献すべき世界史の新時代」とうたい、ドイツのユダヤ人弾圧にも共鳴化した。それを批判する自由主義者たちの一人清沢洌はナチスの運動は論理の解剖にたえない宗教運動であり、ヒトラーの一人芝居になっており、恐ろしく独断的、狭量であることを批判している。ユダヤ避難民の満州入国に尽力した樋口季一郎中将、ユダヤ避難民に外務省の意向をこえて日本通過ビザを発給した外交官杉原千畝などがいた。そのビザで敦賀に到来したユダヤ人に対する市民と新聞報道との落差についても考察した。