著者
藤澤 秀幸 佐伯 孝弘 姫野 敦子 藤井 由紀子
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究会を開催して、研究メンバーの専門分野における「怪異」研究を報告した。「怪異データベース」と「怪異研究文献目録」の作成を行った。平成29年5月に笠間書院から『日韓怪異論 死と救済の物語を読み解く』を出版した。研究メンバーの藤澤秀幸・佐伯孝弘・姫野敦子・藤井由紀子の論文4篇、研究メンバーでない日本の研究者の論文1篇、韓国の研究者の論文(日本語訳)5篇、計10篇の論文を収録している。執筆者と論文題目は以下の通りである。藤井由紀子「「火車」を見る者たち─平安・鎌倉期往生説話の〈死と救済〉─」、藤本勝義「『源氏物語』における死と救済」、姫野敦子「中世文学における死と救済─能「鵺」をめぐって─」、佐伯孝弘「死なせぬ復讐譚─『万の文反古』巻三の三「代筆は浮世の闇」を巡って─」、藤澤秀幸「幸田露伴・泉鏡花における「死」と「救済」」、沈致烈「朝鮮王朝小説における死と救済の相関性─「淑英娘子伝」を中心に─」、金基珩「「水陸齋」における死の様相と儀礼の構造的な特徴」、姜祥淳「朝鮮王朝社会における儒教的転換と死生観の変化」、金貞淑「朝鮮王朝時代のあの世体験談の死と還生の理念性」、高永爛「朝鮮王朝後期の韓国古小説に見える女性の死と救済」
著者
姫野 敦子 ヒメノ アツコ Atsuko HIMENO
出版者
清泉女子大学人文科学研究所
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要 (ISSN:09109234)
巻号頁・発行日
no.36, pp.49-65, 2015

中世の日本文学において、死、そして救済はどのように捉えられていたのかを世阿弥(生没年一三六三?〜一四四三?)作の能「鵺」を通じて考えた。中世文学における「救済」は、仏教的意味での「往生」として表される。つまり「六道輪廻」という苦しみから抜け出る方策が、「往生」である。世阿弥の時代前後の「修羅能」では、終末部に弔いを頼み、成仏を願う様が描かれる一方で、「鵺」では成仏が約束されてはいない。これは、「鵺」という畜生道の存在が影響していると考察し、作者の世阿弥は、成仏の困難さを描くことで、より観客へ訴える能をつくっていったと結論づけた。 In Japanese literature of the Middle Ages, how was death and its relief represented? I thought through a Noh-play "Nue" by Zeami (1363? ~1443?). In medieval literature is expressed as "Ojo" in the meaning of Buddhism. "Ojo" is a way of getting away from the pains known as the "transmigration in the six worlds." Entering Nirvana is not promised in "Nue", but I ask for a postlude to mourning with "Shura- Noh" in the times of Zeami, and I describe a state of hope of entering Nirvana. I conseder the influence of the "Hell of Beasts" on "Nue" and conseder that this gave Zeami a stranger means of appealing to audiences by showing the difficulties of entering Nirvana.
著者
姫野 敦子 ヒメノ アツコ Atsuko HIMENO
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.36, pp.49-65, 2015-03-31

中世の日本文学において、死、そして救済はどのように捉えられていたのかを世阿弥(生没年一三六三?〜一四四三?)作の能「鵺」を通じて考えた。中世文学における「救済」は、仏教的意味での「往生」として表される。つまり「六道輪廻」という苦しみから抜け出る方策が、「往生」である。世阿弥の時代前後の「修羅能」では、終末部に弔いを頼み、成仏を願う様が描かれる一方で、「鵺」では成仏が約束されてはいない。これは、「鵺」という畜生道の存在が影響していると考察し、作者の世阿弥は、成仏の困難さを描くことで、より観客へ訴える能をつくっていったと結論づけた。
著者
藤澤 秀幸 藤本 勝義 佐伯 孝弘 姫野 敦子 青谷由紀子
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

研究会を開催してメンバーの怪異についての研究を報告し合った。その成果を公開シンポジウムで発表した。1年目のシンポジウムのテーマは「日本文学の怪異―信じる? 信じない?―」であった。2年目のシンポジウムのテーマは「日本文学における怪異と猫」であった。4年目のシンポジウムのテーマは「日本文学における〈死と救済〉―怪異の視点から―」であった。5年目に、韓国の5人の研究者を招いて、国際シンポジウムを開催した。そのテーマは「文学における〈死と救済〉―東アジアの怪異の視点から―」であった。このシンポジウムは書籍化されて出版されることが決定している。「怪異データベース」と「怪異研究文献目録」を作成した。
著者
松岡 心平 天野 文雄 磯田 道史 小川 剛生 落合 博志 高桑 いづみ 高橋 悠介 竹本 幹生 橋本 朝生 姫野 敦子 宮本 圭造 山中 玲子 横山 太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、観世文庫が所蔵する貴重な能楽関係文献資料の調査・整理・保存・公開によって、今後の能楽研究の発展の基礎を築いた。資料はマイクロフィルムに撮影・保存したうえで、これをデジタル画像化し、文献調査に基づく書誌情報と統合してデータベース化した。これはデジタルアーカイブとしてWeb上に公開され、資料が世界中から検索・閲覧可能になった。さらに「観世家のアーカイブ展」の開催を通じて、研究によって得られた知見の普及をはかった。