著者
宇佐美 真一 工 穣 鈴木 伸嘉 茂木 英明 宮川 麻衣子 西尾 信哉
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.151-155, 2010 (Released:2011-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
10 8

低音域に残存聴力を有する高度感音難聴患者に対し人工内耳埋め込み術を施行した。症例は60歳女性。40歳頃から難聴を自覚した。50 歳頃からは右耳の補聴器の装用効果が認められなくなった。この症例にMED-EL社人工内耳(COMBI 40+:standard電極)埋め込み術を行った。電極挿入は、より低侵襲な正円窓からのアプローチにより行った。全電極を挿入したにもかかわらず、挿入後の低音部聴力が保存できた。残存聴力の保存が確認できたため、Electric acoustic stimulation用のスピーチプロセッサであるDUET®を用い、低音部は補聴器、高音部は人工内耳により音情報を送り込んだ。8ヶ月後の語音弁別能を評価した結果、術前15%であった最高明瞭度が50%にまで改善が認められ、日本語の聴取においても有用であることが明らかとなった。
著者
土師 誠二 宇佐美 真 平井 昭博 阪田 和哉 小谷 穣治 磯 篤典 金丸 太一 笠原 宏 山本 正博 斎藤 洋一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1652-1657, 1996-07-01
被引用文献数
8

大侵襲の消化器外科周術期の真菌血症の発生について検討した.対象は臓器真菌症を有さない胸部食道切除6例,胃全摘12例,膵切除4例で,術前,術後2,10日目に末梢静脈血を用いて細菌培養,カンジダ抗原価(Cand-Tec),β-D-glucan値(トキシカラー値とエンドスペシー値の差)を測定し,真菌血症の診断を行った.カンジダ抗原価,β-D-glucan値陽性率は2PODにはともに42.8%と有意に上昇し(p<0.01),カンジダ抗原価は10PODにさらに増加するのに対し,β-D-glucan値は減少し,一過性の上昇を示した.血液培養は全て陰性だった.術式別では食道切除術で陽性率が高かった.陽性群と陰性群で比較すると,カンジダ抗原価陽性群は手術侵襲が大きく,低栄養の症例が多かった.以上より,消化器外科手術後早期には培養陽性とはならぬが一過性の真菌血症が生じ,手術侵襲の程度や栄養状態と関連し,microbial translocationの可能性が強く示唆される.