著者
菅 弘之 能沢 孝 安村 良男 二木 志保 田中 伸明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 1988-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
21

収縮性の変化が心臓の酸素消費量に及ぼす影響は古くて新しい問題である. 我々は, この問題に新しい概念-収縮期圧容積面積 (PVA)-を用いて挑戦している. PVAは, 圧容積図面中の特定の面積であるが, 収縮によって発生する心臓の総機械的エネルギーを表すと考えられる. イヌ心臓を用いての実験では, 収縮性が一定なら, PVAは酸素消費量と直線的に良く相関した. 収縮性を高めると, この関係は酸素消費量を増すように平衡移動した. それは主として興奮収縮連関のための酸素消費量の増加による. この際, PVAに依存する酸素消費量は常にPVAの変化に比例することから, 収縮機構そのもののエネルギー効率は不変と考えられる.
著者
岩 祐生輝 宮本 俊朗 中川 彰人 安村 良男 玉木 彰
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.15-24, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
52

【目的】高齢急性心不全症例への神経筋電気刺激療法(以下,NMES)の安全性,有効性の検証。【方法】75 歳以上の高齢急性心不全入院症例を心臓リハビリテーションのみのcontrol 群とNMES を追加するNMES 群に無作為割り付けし,介入0 日目,2 週目に安全性,骨格筋指標,身体機能指標を評価した。【結果】control群8例(平均83歳)とNMES 群10 例(87 歳)が登録された。介入期間で両群ともに有害事象は認めなかった。また,NMES 群は,control 群に比べて2 週目の大腿四頭筋筋厚(control vs NMES; 9.6 ± 2.7 vs 13.8 ± 2.8 mm, p = 0.012),膝関節伸展筋力(0.2 ± 0.1 vs 0.38 ± 0.1 Kgf/kg, p = 0.016)に高値を認めたが,身体機能指標に有意差はなかった。【結論】高齢心不全患者の急性期において,NMES は骨格筋量および筋力低下を有害事象なく抑制する可能性がある。
著者
杉原 隆太 松尾 浩志 平田 明生 柏瀬 一路 樋口 義治 安村 良男 上田 恭敬
出版者
特定非営利活動法人 日本冠疾患学会
雑誌
日本冠疾患学会雑誌 (ISSN:13417703)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.26-30, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
8

症例は74歳男性.2013年11月上旬に近医で腹部大動脈瘤を指摘されて当院へ紹介された.術前の冠動脈CTでは,左冠動脈から右冠動脈が分岐する単一左冠動脈症と,左冠動脈主幹部と前下行枝の石灰化を伴う高度狭窄が認められた.腹部大動脈瘤は瘤径の拡大傾向と胸背部痛が認められたため切迫破裂状態と考え,まず腹部大動脈瘤に対して開腹手術を行った.術後狭心症症状が増悪したため,陳旧性脳梗塞による右半身麻痺や肺気腫などの全身状態を考慮し,経皮的冠動脈形成術による血行再建術を行う方針とした.術中は,ノルアドレナリン,アトロピンの使用に加えて,大動脈バルーンパンピングでサポートを行いながら,冠動脈灌流型バルーンを用いて経皮的冠動脈形成術を合併症なく施行することができた.術後経過良好であり,療養型病院へ転院となった.単一左冠動脈症例の左冠動脈主幹部病変に対して冠動脈灌流型バルーンを用いて経皮的冠動脈形成術を施行し得た1症例を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する.