著者
安藤 史江 杉原 浩志
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.5-20, 2011-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本稿では,半ばブラック・ボックス化しているトップ主導の組織アンラーニング実現のメカニズムを,社会福祉法人X会の詳細な事例分析を通じて考察した.その結果,X会の組織アンラーニングは,棄却対象の点でも棄却を行った当事者の点でも,段階的に進行したと解釈された.この段階性は,直接の上位層の棄却レベルが下位層のそれを下回るという形で存在するギャップに組織成員が何度も直面し,その都度それを解消することで生じていた.
著者
安藤 史江
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌 (ISSN:18820271)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.41-51, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
26

This paper focuses on “diversity” management in Japanese firms, which forms the basis of work-life-balance (WLB) policy. When discussing diversity, these firms in many cases focus on the validity of affirmative actions to the minorities, such as women with children. However, two aspects are frequently missed; (1) every new policy has not only positive but also negative effects, and (2) negative impact of the policy to the majority of the organization can be sometimes larger than the positives. The effects of diversity management policy to the overall morale of the firms, including both minority and majority, are investigated in this paper. In this aim, this study made a questionnaire survey to 222 sales employees of 15 branches of a firm, which is just starting to improve WLB and thus its diversity. The questionnaire utilizes parameters such as, “heterogeneous acceptability” which measures personal tolerance to diversity, “visualization of work” which means how they feel the transparency of work-flow in their workplace, and “improvement feeling of workplace.” Comparing the 15 branches, a clear trend was found; in branches the more visualization of work is, the better improvement feeling is. On the other hand, visualization and heterogeneous acceptability showed no correlation, which suggest the latter is regarded as personality inherent to individuals. Then improvement feeling was compared with heterogeneous acceptability. In 8 branches which are less transparent in work-flow, less-heterogeneous acceptability members showed smaller improvement feeling of workplace. However, in the other 7 branches with higher transparency to work-flow, improvement feeling was higher regardless of the degree of members' heterogeneous acceptability. The questionnaire survey results show, if a firm (or branch) provides better visualization of work, even the members who have less heterogeneous acceptability can significantly improve.
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、組織学習論の観点からみて望ましいと考えられるチーム・マネジメントを分析・考察した。具体的には組織アンラーニングやダイバーシティ、組織アイデンティティなどの他の概念とリンクさせて、効果的なチーム・マネジメントに必要と考えられる条件やメカニズムを探るとともに、それを実証するために、協力いただいた1社に対して、デプス・インタビューを行った。その結果、成果をあげているところは、チームのもつ多様性を活かすというよりは、統制しすぎることなく、共有する価値を基盤として柔軟に対応している様子が確認された。また、それにより組織内外の統合性を実現している可能性もうかびあがってきた。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、さまざまな企業の組織学習のタイプや水準を明らかにするとともに、その成立を可能にしている要因を探った。その結果、雇用形態や職務の違いよりも、そうした違いを乗り越えて、組織メンバーに一種の自己効力感や当事者意識を持つことを許されたと感じさせるような仕組みづくりに成功するときに、各組織が期待するような組織学習が成立すること、その状態が広いほど高次な組織学習が可能になる傾向が見いだせた。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

完成年度である本年度は、昨年度までに得られたデータを分析し、組織学習活動や当該組織における従業員各々のキャリア開発に対してモチベーションを高める環境要因、組織要因、個人要因を掘り下げる作業を行った。とくに、上司との関係、組織内地図の有無、企業の従業員育成制度のあり方、自己に対する自信などが、注目されるべき要素として浮かび上がってきた。その結果の一部は、本年度(2006年度)の夏(8月)に開催された三菱国際カンファレンスにおいて、英語で報告をし、参加者の方々から、貴重なご意見をいただくことができた。また、そのご意見をもとに考察を重ね、2006年10月には、東京大学大学院経済学研究科におけるワークショップ、2007年1月には、専修大学を会場としたシステムダイナミクス学会日本支部研究会で発表を行った。また、著作物としては、本研究内容に基づいた明治安田生活研究所への寄稿、南山大学経営学部の紀要への投稿なども行った。このような機会を得て、また、分析手法などについてその分野の専門家に教えを乞う機会も得ることができたことにより、さまざまなご意見・ご助言を得ることができた。しかしながら、まだ分析結果に納得がいかない点も残っているため、今現在でも改善作業中である。来年度の前半の完成を目指しているが、そのためには、来年度の初期にでも追加的なインタビューを行う必要性を、現在のところ改めて強く認識している。一方で、昨年度得られたデータは、比較的年齢の高いもの(若い人々も含まれているが、主対象は、40代の従業員)であったため、別の企業群が対象ではあるが、20代の従業員に対して追加的な調査も実施した。その結果、やはり上司との関係や組織内地図、育成の仕組みが、彼らの学習活動や行動、モチベーションなどの心理面などに大きな影響を及ぼしている可能性が確認された。この成果については、調査協力および事務局となっていただいた社団法人のもとで報告書を作成するとともに、やはり2007年1月に報告会を実施している。ただし、昨年度来のデータを論文にする作業を優先しており、今年度得られたこのデータについては、まだ論文執筆作業に着手していない。こちらもあわせて、来年度の課題としたい。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は、人事異動の主目的の1つである人材育成に焦点をあて、その人材育成のあり方が組織学習やその必要条件の1つである組織内地図とどのような関係をもちうるのかということを研究した。その結果、新たな雇用関係に移行する中、人材育成のあり方にも大きな変容、異なる役割が期待されていることがまず明らかになったが、それと同時に、組織学習の質を保ったり、活発な学習活動を実現するためには、先行研究が今後必要であるとする新たな雇用関係に関わるいくつかの施策を単純に、あるいは組織一律で導入することはあまり適切ではないとの考察が得られた。組織学習の活発化だけでなく、有能な人材の流出問題の改善にも貢献する組織内地図がどれだけ発達しているかによって、新たな雇用関係に関わる施策が良い方向に機能する場合もあれば、逆効果になる場合もあることが明らかになったのである。現在、この考察・分析結果については投稿中である。
著者
安藤 史江 上野 正樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.429-456, 2013-06-25 (Released:2016-07-25)
参考文献数
40
被引用文献数
3

修正したCrossan, Lane, and White (1999) の4I フレームワークに基づき、活用と探索をともに実現する両利きの経営に関する事例分析を行ったところ、活用成果を得るためには組織資源の十分な投入がなされる一方、探索については外部資源の積極的な活用を促す限定的な資源配分に留まる傾向が見出せた。質問票調査の結果もこれを支持した。