著者
安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.120-123, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
3
被引用文献数
1

Structural Equation Modeling (SEM) has changed psychological investigation drastically in two ways. First, SEM serves not only as a statistical technique for estimating descriptive statistics and testing causal model hypotheses, but also as a powerful tool to check validity of a theory or even to construct a new theory. Second, thanks to SEM, researchers have begun to think of constructing large-scale and systematic research projects in order to benefit from the advantages of SEM. SEM is, however, not a theory itself, but a tool for theory construction. It is researchers' critical thinking that tests and evaluates a theory. Close collaboration of researchers and statisticians in a research project is desirable, or even necessary.
著者
杉森 伸吉 安藤 寿康 安藤 典明 青柳 肇 黒沢 香 木島 伸彦 松岡 陽子 小堀 修
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.90-105, 2004-03-24
被引用文献数
1

心理学における研究者倫理への関心が高まる中,日本パーソナリティ心理学会では研究倫理ガイドライン検討特別小委員会を設け,性格心理学研究者倫理の問題を検討した.その中で,目本パーソナリティ心理学会員および他の関連諸学会員の合計262名と心理学専攻の学部生59名を対象に研究倫理観に関するアンケート調査を行った.研究倫理観は基本的に相対的なものであるという認識にもとづき,心理学研究者と学部学生を対象に52項目の倫理的問題に関する許容度判断を求め,その意見分布を示した.全体のうち半数近くの項目で研究者と学生の間に許容度判断の有意差が見られ,いずれも研究者のほうが寛容という傾向であった.また,主たる専門や研究法による倫理判断の相違,性差,研究年数による相違,ならびに基本的倫理観と個別の倫理判断の関連性分析,52の倫理問題に関する許容度判断の主成分分析と主成分ごとの許容度判断などについて検討した.基本的には,各人が研究を行う上で必要な事柄に関しては倫理的判断が寛容になり,研究を行う上で必要性が低い事柄については厳格になる傾向が見られた.本研究の結果は,日本パーソナリティ心理学会員をふくむ心理学者一般について,個別の倫理判断をする上でのひとつの判断基準を提供するものと考える.
著者
安藤 寿康 渡辺 恵子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.171-198, 1984

序 : 遺伝と教育第1節. 知能は遺伝的影響を受けている第2節. 遺伝的すなわち固定的か第3節. 「相互作用」の混乱 (1) 種レベルと個人レベルの混同 (2) 遺伝率に関する誤解 (3) 相関(correlation)と交互作用(interaction)の混同第4節. 遺伝要因の発達的意味第5節. 一次元尺度を越えておわりにThe present paper tried to review the recent trend of the studies on the nature/nurture problem. (1) Several researches in the last decade have revealed that the genetic factor has a strong influence on the individual differences of IQ, even if the shortcomings of the traditional twin and adoption studies are revised. (2) Intelligence in the sense of Piagetian scheme, however, changes developmentally, and its developmental prosess is influenced successively by gene throughout one's life. (3) The belief that to be genetic implies to be stable should be discarded, if we distinguish between the perspective of individual differences and the persprective of species. In addition, confusion and misunderstanding in the usage of the terms "interaction" and "heritability" must be avoided. (4) Several aspects of correlation underlying the interaction pattern at the phenotypic level were reconsidered. (5) As an attempt to overcome the shortcomings of past studies which treated the character in terms of one dimension, an experimental study using multidimensional scaling was proposed.
著者
安藤 寿康 福士 珠美 佐倉 統
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.324-330, 2009-06-01
被引用文献数
1

学術研究の表現はともすれば無機質である。それがどれだけ血の通った人間を対象としていても,そこに求められるのは客観的な科学的現象の記述であり,個人を超えた普遍性を持つものでなければならない。かくして学者の書く論文の文章も,話す講義も,抽象化され非個性化されたことばで埋め尽くされる。科学的厳密さの前に,人間の心のなまめかしいうごきは封印されるのである。仮にその科学がどれだけ心のなまめかしさを扱っていようとも。だがこのことは研究者が人を対象とした実験を行う現場でも無機質に振る舞ってよいことを正当化しない。研究者も被験者もそれぞれが生きた人間であり,実験室はそのような生きた人間同士が出会う場である。研究倫理とは,そうした研究場面という特殊な人間関係や契約関係が作り出す葛藤に生まれる問題である。倫理判断は原則として法に基づくものではなく,基本的に人倫に関する当事者たちの良識に基づくものであり,研究領域ごと,あるいは研究施設ごとに,様々な慣習的手続きが作られている。