著者
佐倉 統
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.168-178, 2016-05-30 (Released:2023-09-11)
参考文献数
28

In response to the severe accident in Fukushima Daiichi Nuclear Power Plants, some STS researchers prioritize criticizing the discourse and attitudes of radioactivity experts. This phenomenon could be due to the academic and social approach of STS to criticize paternalistic authoritarianism and scholar biases in science and technology to invite non-experts to govern S&T. Even though this approach is necessary in ordinary times, it leaves a negative impact in crisis situations. Particularly, in case of the Fukushima accident, heavy criticization towards radioactivity experts would degrade the reliability of proper scientific knowledge and lead to confusion about the evaluation of radiation health risks. Tackling this issue, I propose a Double Interpreter Model between local people and experts, and a Two-front War against Anti-intellectualism and Expert Paternalism. Together, these frameworks (suggesting that in complex modern society, the enemy of our enemy is not always our friends) could inspire further communication between reliable experts and local people.
著者
佐倉 統 平石 界 池田 功毅 中西 大輔 横田 晋大 三浦 麻子 小森 政嗣 松村 真宏 林 香里 武田 徹 水島 希
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

放射線リスクの認知特性と社会内拡散動態を明らかにし、風評被害や差別の抑制に貢献することが目的である。個人の認知的特性を対象とする行動免疫班の実験は、放射線リスクに対する忌避感情が当初の予想より強固で制御困難であることを明らかにした。放射線リスク関連情報のツイッターでの動態を解明するソーシャルメディア班は、放射線についての否定的感情が強力であり、他の災害リスクと異なる拡散パターンを確認した。抑圧的でないリスク管理の方途を考察する社会実装班は、感染症などの過去の風評被害や差別の事例との比較分析やメディア論的考察をおこなった。研究遂行および成果発表は福島の研究者や生活者と共有することを心がけた。
著者
杉山 幸丸 三谷 雅純 丸橋 珠樹 五百部 裕 ハフマン マイケル A 小清水 弘一 大東 肇 山越 言 小川 秀司 揚妻 直樹 中川 尚史 岩本 俊孝 室山 泰之 大沢 秀行 田中 伊知郎 横田 直人 井上(村山) 美穂 松村 秀一 森 明雄 山極 寿一 岡本 暁子 佐倉 統
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2000-09

食う-食われる,エネルギー収支,どうやって子孫を残すか……サルたちはさまざまな生物的・非生物的環境とどのように関わりながら暮らしているのだろうか.本書によって,霊長類社会の研究者はその社会の生物学的背景をより深く理解でき,他の生物の生態研究者は霊長類における生態学的研究の最前線に触れられる.
著者
佐倉 統 福住 伸一 中川 裕志
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

この論文の目的は,人とAIが一緒に写っている写真を対象にしてそれらの構図を分析すること(図像分析)が,人−AI関係の文化的相違の解明に資すると示すことである.試行的に得られたインターネット上の画像から,日本由来の写真では人とAI/ロボットは横並びに位置してこちらを見ていることが多く,欧米由来の写真では人とロボットがお互いに向き合っている構図が多いことがわかった.共視論研究(北山,2005)によれば,日本の浮世絵の母子像は何か別の物(第三項)を一緒に注視していることが多く,西洋の絵画ではこのような共視は少ないという.このような“共視”は人では生後9か月から見られるようになる.浮世絵の母子関係と同じパターンが人−AI関係にも見られるのだとすると,それはAIやロボットが人間の子供と同じく何物か(第三項)を共同注視することのできる存在,それだけの認知能力をもった存在として日本では無意識に認知していることを示唆する.欧米ではAI/ロボットはもっと人に従属する存在として位置づけられているのではないか.今後より体系的な図像分析をおこない,東アジア内での国際比較(日韓台)をおこなう必要がある.
著者
佐倉 統 福士 珠美
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.18-27, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1

近年、脳神経科学における高次脳機能画像の研究や脳-機械インターフェイス(BMI,BCI)などが普及することにより、極端に言えば「誰でも脳を研究できる」ようになった。その結果、非医療系研究者のおこなう実験において、脳に器質的な疾患が偶発的に発見される可能性が高まっている。医療行為に従事する資格を持たない研究者が直面するかもしれないそのような事態に備えて、非医療系基礎研究に関する倫理体制の整備が必要である。また、脳の情報はゲノム情報やその他の生理学的情報に比べると、一個人の精神活動に直接関係する度合いが高いという特徴をもつ。すなわち、社会においては脳といえば意識や自我、人格などと密接な関係にあるものとして位置づけられている。しかしこれらのトピックについて、そのような社会からのニーズに明解に応えるほどには科学的な解明は進んでいない。このような科学と社会の「はざま」に付け込むようにして、科学的に不正確な一般向け通俗脳科学書が氾濫している。マスメディアと科学の関係も含め、科学と社会の接点領域をデザインする展望が必要である。また、これらの諸課題に適切に対応するためには、省庁や学会の縦割り構造を超えて横断的に対応できる組織と指針の整備が必要である。
著者
林 衛 加藤 和人 佐倉 統
出版者
裳華房
雑誌
生物の科学 遺伝
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-34, 2005-01

科学コミュニケーションとは何か,それがいままでの「科学普及」や「科学啓蒙」とどう違うのか,なぜその概念が有効なのか,とくに生命科学でこれを考えることの意味をさぐるのが,本特集のねらいである.科学をいままで以上に深く考え楽しみながら,専門家と非専門家,あるいは一般市民がつながりをもって社会の中に本当に必要な科学を育んでいけるようになるために,いま双方向・多方向の科学コミュニケーションが求められている.そのためには,情報を共有し,交流をしながら,研究者も一般市民も同時に高まっていけるしくみが必要だ.
著者
山野井 貴浩 佐倉 統
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 36 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.285-286, 2012-08-27 (Released:2018-05-16)

本研究では,進化論の学習機会および創造論を知る機会がほとんどなかったと考えられる文系大学生を対象に進化論と創造論の両方を紹介する講義を行い,進化論の方が科学的であると考えられたかどうかを講義前後アンケートによって明らかにすることを目的とした。その結果,事前に科学的な考え方に関する講義を行っていたとしても,創造論を知ることで進化論への支持率が高くなるとは限らず,逆に,創造論への支持率が高まってしまう可能性があることが示唆された。
著者
湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統 湯沢 友之 佐倉 統
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-17, 2022-09

科学コミュニケーターとしての訓練を受けてない研究者が科学コミュニケーションを行なう場合,しばしば困難に直面するが,それは聴衆の背景知識への配慮が足りないからであると考えられる.本論文ではこの点について,大学院での教育内容だけでは不十分であり,博物館などで実施されている科学コミュニケーター養成プログラムがそこを補っているという仮説を設定し,養成プログラム修了生を対象として非専門家にどのような配慮をするように認識が変化したのか,半構造化インタビューによって検証した.その結果,修了生は,非専門家への配慮が重要であるという意識を明確化しており,エンターテインメント的な要素を付加するなどの意識変容が生じていたことがわかった.さらに大学院での自然科学系の専門教育では,非専門家を聴衆とするコミュニケーション・スキルは重視されておらず,これが非専門家を対象とする科学コミュニケーションに負の影響を与えている可能性が示唆された.この点について補足的な追加調査を行った結果,研究重視型大学院における研究者養成教育が非専門家を対象としたコミュニケーションに抑制的に働いている可能性が示唆された.しかしこの点については,さらに調査が必要である.