- 著者
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木田 重雄
宮内 敏雄
新野 宏
西岡 通男
宮嵜 武
近藤 次郎
三宅 裕
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2000
「要素渦」とは混沌とした乱流場の中に存在する微細な秩序構造であるが,近年のスーパーコンピュータや高性能の実験装置の普及のもと,高度な計算アルゴリズムや実験技術の開発により,ごく最近,その物理特性の詳細が明らかになり,また乱流エネルギーの散逸や乱流混合に重要なはたらきをしていることがわかってきたものである。この要素渦に着目し,自然界,実験室,そしてコンピュータ上で実現されるさまざまな種類の乱流に対して,その物理特性や乱流力学におけるはたらきのいくつかを,理論,実験,ならびに数値計算によって明らかにした。要素渦は乱流の種類によらず共通で,管状の中心渦に周辺渦が層状に取り巻いていること,中心渦の断面の太さや回転速度はコルモゴロフのスケーリング則に従うが渦の長さは乱流の大規模スケールにまで及ぶこと,レイノルズ数の大きな流れにおいては,要素渦が群を作り空間に局在化すること,複数の要素渦が反平行接近して混合能力を高めること,等々の特徴がある。要素渦の工学的応用として,要素渦に基づくラージ・エディ・シミュレーションのモデルの開発,要素渦を操作することによる壁乱流のアクティブ・フィードバック制御,「大規模要素渦」としての縦渦の導入による超音速混合燃焼の促進,「大気の組織渦」としての竜巻の発生機構,等の研究を発展させてきた。さらに,クエット乱流中に要素渦の再生を伴なう「不安定周期運動」(乱流の骨格とも呼べる時空間組織構造)を発見した。本特定領域研究によって得られた乱流要素渦の概念,反平行接近などの渦の力学,低圧力渦法などの流れ場の解析手法,などを理論的ツールとして,乱流構造や乱流力学の本質を探る研究が今後大いに進展されることを期待している。