著者
宮田 潤 村木 功 磯 博康
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.327-333, 2020-05-15 (Released:2020-06-02)
参考文献数
25

目的 近年,薬局・薬剤師による公衆衛生の向上に向けた取り組みへの期待が高まっており,禁煙支援もその一つである。一方,一部の薬局・薬店ではタバコ販売が行われていることが知られている。筆者らは,本邦の薬局におけるタバコ販売の実態調査を行い,地域差や運営形態の差がないかを検討することとした。方法 全国調査として,2018年の地方財務局「製造たばこ小売販売業許可者一覧」と地方厚生局「保険薬局一覧」を突合させ,2018年開設の保険薬局のうち,タバコ販売許可を受けた数と割合を調べた。加えて,コンビニエンスストアの名称を含む保険薬局について,各コンビニエンスストアのウェブサイトの情報をもとに,タバコ販売状況を確認した。さらに,既存保険薬局の実態調査として,大阪府A市(都市部)と石川県B市(地方)の2地域を対象に,2018年12月~2019年2月に「保険薬局一覧」に掲載された薬局の巡視調査を行い,タバコ販売状況,喫煙スペースの設置状況,薬店・コンビニエンスストアの併設状況を確認した。結果 全国で2018年に新規指定の保険薬局1,766軒のうち,124軒(7.0%)がタバコ販売許可を受けていた。都道府県別では千葉県(72軒中18軒;25%),山梨県(9軒中2軒;22%),青森県(17軒中3軒;18%)に多く,地方区分別では関東地方(602軒中71軒;11.8%),東北地方(110軒中9軒;8.2%)に多かった。一方,22府県では,タバコ販売許可を新規に受けた保険薬局数は0軒であり,地方区分別では四国地方(64軒中0軒;0.0%),九州地方(211軒中1軒;0.5%)において少なかった。全国におけるコンビニエンスストア併設保険薬局の検討では,都市部を中心に併設薬局は42軒あり,そのうち東京都の8軒を除く34軒(81%)で,タバコ販売が行われていた。保険薬局の巡視調査では,A市で28軒中1軒(4%),B市で29軒中3軒(10%)が対面のみによるタバコ販売を行っており,いずれも薬店併設の薬局であった。そのうちA市の1軒とB市の2軒では周辺と遮蔽されていない屋外喫煙スペースがあった。結論 今回の研究より,タバコ販売を行っている保険薬局が少なからず存在することが確認された。薬剤師による禁煙支援の推進において,薬局・薬店におけるタバコ販売の在り方について十分な議論が望まれる。
著者
宮田 潤 阪本 直人 二川 真子 新野 青那 新野 保路 大濱 弘光 鈴木 友輔 武藤 理 此下 尚寛 楠川 加津子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.70-74, 2019-03-20 (Released:2019-03-28)
参考文献数
17

第30回学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナーで,本ワークショップ(WS)を開催した.参加者は,健康情報の信頼性の評価やヘルスリテラシー(HL)に配慮した医療面接などを実践し,「満足した」,「理解できた」などの反応を示した.本邦の医療界ではHLの概念が十分に浸透していないこともあり,このようなWSのニーズは高いと考えられた.本WSで得られた知見をもとに改良を重ね,HLの普及と発展につなげたい.
著者
宮田 潤子 濱田 裕子 川田 紀美子 藤田 紋佳 森口 晴美 小幡 聡 桐野 浩輔
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

排泄障害が原因で女性としての自尊心に傷を負いながら成人に至る患者に対する支援を考える。その第一歩として、総排泄腔遺残症という排泄障害と性機能障害を合併する稀少難病の患者を対象として研究に取り組む。患者・家族、医療従事者が求める支援を明らかにし、全国的な支援体制構築の促進、支援の均てん化に繋げることを目指す。第一段階は患者・家族、医療従事者を対象にアンケート調査を行い、各々のニーズを明らかにする。第二段階として、第一段階の結果をもとに、患者・家族らによる闘病体験手記を出版する。患者の苦悩を広く公にし、現状に沿った情報が行き届かない全国の患者・家族へ患者側の視点による情報提供を行う。
著者
川田 紀美子 牛島 廣治 宮田 潤子 濱田 裕子 野口 ゆかり
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

総排泄腔遺残症は、女児にのみ発生する、胎生期に尿道・膣・直腸が分離不全を来し、排泄孔を一つしか持たない先天的難治性稀少泌尿生殖器疾患である。出生直後からの複数回の手術により生殖器に後遺症状を伴うため、思春期には恋愛や性交、妊娠等に支障を来す場合が多い。そのため患者には性に関する特別な配慮が必要であるが、セクシャルヘルスへの支援には母親の役割が不可欠であり、本研究結果より母親を含めた支援システムの構築を目指す。具体的には、国内複数の病院で通院治療を受けている総排泄腔遺残症患者とその母親を対象に調査を行い、母親による患者への家庭内性教育の実情と母子関係の特徴、およびそれらの関連について検討する。