著者
永見 邦篤 中野 昭一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.112-121, 1979-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究は, ヒトの動作にみられる筋弛緩現象のうち, 拮抗筋の収縮によって主働筋活動を抑制する場合 (PR) と, 収縮している筋のみを弛緩させる (AR) , いわゆる脱力時にみられるものの2つの弛緩動作について, 筋弛緩時間を指標として, その遅速を生じる要因, ならびに生理的意義を検討したものである。動作は, 左右の上肢とも前腕部を回内および回外位とし, 肘関節を90°に固定して, 最大屈腕力の10, 30, 50%の筋力を発揮した後, 筋弛緩を行う方法であった。また, 筋力発揮条件は, 低周波発生装置によってブラウン管面上に示された鋸歯状波および矩形波に追随させる場合と, 検者の合図に従わせるものの3つである。筋電図は, 上腕二頭筋と上腕三頭筋から表面誘導法によって記録した。筋弛緩時間は, 実験装置の一部に取りつけた高感度の歪計で張力減少時を決定し, この時点と上腕二頭筋の棘波状放電の消失時点との差から計測した。その結果1) 筋弛緩時間は, ARよりPRの方が速かった。いずれの動作でも負荷の増加に従って, その時間は遅延した。また, 1例を除いて, 左右, 回内回外位それぞれで有意差が認められなかった。筋力発揮条件による差異は, ARの場合にみられ, 矩形波に追随したときにおいて速くなる傾向を示した。2) 被検者間で比較すると, ARで弛緩時間の速いものは, 弛緩動作後, いずれの筋放電も完全に消失していた。遅いものでは, 微弱な放電が続く傾向にあった。PRの場合, 上腕二頭筋放電の消失から上腕二頭筋放電の開始までの時間の短いものほど, 筋弛緩時間が速い成績を示した。3) AR, PRともに弛緩動作時に, 張力が一過性に増加する現象が認められた。この張力増加の勾配は, 負荷の増加に従って大きくなり, また, PRにおいて大であった。被検者間でみると, 筋弛緩時間の遅いものほど, この勾配が大きくなる傾向にあった。以上の結果から, ARの筋弛緩時間の遅速は, PRに比べて, より上位の中枢に想定される抑制系の疎通ならびに活動の強弱を反映するものと推察された。そして, 拮抗筋の性質およびその活動に関連する神経系の抑制作用に強く依存するPRとは, その抑制機構を異にすることも示唆された。
著者
葛西 順一 森 武 中野 昭一 油座 信男 飯本 雄二 吉田 和人 小林 一敏
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学人間科学研究 (ISSN:09160396)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.41-48, 1989-03-25

The purpose of his study was to investigate the speed and the accuracy of smash strokes of forehand in which conditions of various timing and hitting point in table tennis. Two male subjects participated in the world championships, and one of them participated in The 24th Soeul Olympic Games. The pictures of the action in hitting was recorded by a video cassette recorder while the reaction of three dimentional forces of forceplate and the wave of impact on the racket were synchronized on date recorder. The results obtained as followes. 1) The ball speed were between 17.6m sec. and 26.0m sec., and the accuracy were 69 % and 74 %. 2) Player with higher performance showed higher accuracy of smash strokes in front position trend to use his leg and arm more efficiently and sufficiently for make the distance the middle point of a circle of turning of trunk shorter. 3) Player with higher performance showed higher speed of smash strokes in middle position trend to use his leg and arm more efficiently and sufficiently for make the distance the middle point of a circle of turning of trunk longer. The results obtained were as follows. It was guessed that to control the distance the middle point of a circle of turning of trunk strongly influenced on the accuracy and the speed of ball smashed in front and middle position.
著者
寺尾 保 三好 基治 成澤 三雄 吉岡 利忠 中野 昭一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.235-244, 1984-10-01
被引用文献数
1

長期間にわたって持久的トレーニングを行ってきている長距離ランナーと,日常,運動習慣を有していない者を被験者として,それぞれの安静時,運動中,運動終了後のリポ蛋白代謝について検討した.被験者には,毎週150km以上走行している大学陸上部長距離ランナー5名,ならびに非運動群として文学部学生5名の計10名を選んだ.なお,これらの被験者は,すべて肥満,高脂血症,喫煙,加齢,疾病などを有していない.実験方法は,60%V^^・o_2maxの運動強度で30分間固定負荷法による自転車エルゴメーター運動を行わせた.その結果を示すと次のごとくである.1)安静時における長距離ランナー群は,非運動群に比べて,VLDL中のCho.,TG,PLが低く1%水準で有意な差を認め,一方,HDL中のCho.,PLが逆に増加し,5%水準で有意の差を認めた.2)安静時におけるVLDL-TGとHDL-Cho.,VLDL-TGとHDL-PLの関係は、それぞれ1%,0.1%水準で有意な負の相関を認めた.HDL-Cho.とHDL-PLの関係は,0.1%水準で有意な正の相関を認めた.3)最大下運動を行った場合,長距離ランナー群では,運動開始とともにVLDL中のTGが低下し,運動終了直後約12%の減少を示した.しかし,非運動群では,ほとんど変化がみられず,長距離ランナー群とは異なっていた.また,両群ともしDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかった.以上の成績から,運動に対応するエネルギー産生に際し,長距離ランナー群は,非運動群に比較して脂質を利用する割合が多く,今回行った最大下運動においても運動中VLDL中のTGが分解してエネルギーを供給していたことが考えられた.しかし,LDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかったことから、一過性の運動においてはVLDL中のCho.,PLが他のリポ蛋白へ転送される可能性の少ないことを示していた.しかし,安静時において両群間を比較すると,VLDLとHDL中の脂質組成に有意な差や相関が認められたことから,長期間にわたる持久的な運動の積み重ねによって体内リポ蛋白代謝過程に微妙な変化をきたさせ,VLDL中のPL,Cho.が徐々にHDLへ転送されていることが考えられた.