著者
岡 孝和 小宮山 博朗 中川 哲也 松浦 達雄 岡 佳恵
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.439-446, 1993-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22

六君子湯および補中益気湯の血清コルチゾル値および心電図R-R間隔変動係数 (CVR-R) に及ぼす影響を検討した。両剤をそれぞれ23例の Non-ulcer dyspepsia 患者および18例の不定愁訴患者に, 一日7.5g, 4週投与した。1) 六君子湯投与群では, 午前9時血清コルチゾル値は, 高値だった7例では有意に低下し (p<0.05), 低値の2例では逆に増加したが, 正常範囲内であった14例は不変であった。補中益気湯投与群では, 低値の3例, 正常範囲内の12例では増加した (p<0.05) が, 高値の3例では低下した。2) 副交感神経機能を表わすCVR-Rは六君子湯投与群では不変であったが, 補中益気湯投与群では, 投与前, 年齢に比して低値であったが, 投与後増加した (p<0.05)。以上の結果は, これらの漢方薬は副腎皮質および自律神経機能に対して調整的に作用し, この作用はストレス性疾患に対しては有用な作用と考えられた。
著者
原 信一郎 小宮山 博朗 前田 基成 中川 哲也
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.28-36, 1993-03-31 (Released:2019-04-06)

27歳男性の一次性夜尿症患者に対して,認知行動療法的アプローチを施行した結果,治癒にいたった症例を経験した。Kimmel法を柔軟に適用し,排尿我慢訓練を行なった。同時に,経時的に膀胱の超音波エコー像を撮り,患者に膀胱容量の増加を画像的にfeedbackすることによって我慢訓練を強化することに努めた。また,夜尿の持続は膀胱が小さく尿を保持できないため,という患者の強い思いこみの修正も行なった。この画像的feedbackの試みは,簡便で侵襲性もなく,患者の治療意欲をより高めていくすく・れた方法であると思われた。
著者
有村 達之 小宮山 博朗 細井 昌子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-15, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は慢性痔痛患者における生活障害を測定する疹痛生活障害評価尺度(PDAS)の開発である。32項目からなる予備尺度を慢性痔痛患者100名に適用して項目分析を行ない,最終的に20項目からなるPDASを構成した。さらに尺度の妥当性検討のため健常者113名のデータが収集された。PDASの内的一貫性,再検査信頼性は高かった。PDASと抑うつ重症度との間,およびPDASと役割機能障害度との間にはそれぞれ有意な相関が見られた。また,入院患者は外来患者より有意に高いPDAS得点を示した。さらに慢性疹痛患者は健常者より有意に高いPDAS得点を示し,PDAS得点を用いての両群の弁別が可能であった。
著者
石井 智美 小宮山 博
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.125-130, 2010 (Released:2014-03-15)
参考文献数
28
被引用文献数
1

モンゴル国ではゴビ地方でフタコブラクダが飼われてきた。伝統的にラクダを飼育してきたゴビ地方ではラクダ乳酒(ホルモグ)をつくってきた。ウムヌ・ゴビ県でホルモグを製造する遊牧民宅と,首都に近いダルハン・オール県で,新たにホルモグをつくり始めた遊牧民宅で調査を行った。ダルハン・オール県のホルモグの性状は酸度1.2%,pH 4.2,アルコール度1.5%で,ウムヌ・ゴビ県のホルモグと大きな違いは無かった。ホルモグの一般成分分析をした結果,アイラグと比べたんぱく質,脂肪,可溶性無窒素物が多かった。飲用量は成人男性で 1 日あたり 2~3 L,女性で 1 L だった。製造方法はスーダンのラクダ乳酒であるガリス,カザフスタンのシュバトと同様だった。スターターにはゴビ地方と同じく,ヤギ乳の発酵乳を用いていた。飲用には「健康に良い」「内臓の病気に良い」等の効能が伝承されていた。発酵に関与する微生物由来の代謝産物が,腸管で良い働きをするとともに,免疫賦活作用があると考える。ホルモグに伝承されてきた効能を科学的見地から明らかにすることは,民族飲料の価値について考えるきっかけになると思われる。
著者
神谷 康雄 松本 武司 上原 有恒 小宮山 博
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.859-869, 2011-08

中央政府から牧民レベルにまで踏み込んだ今回のゾド緊急調査の結果を要約すれば次のとおりである。ゾド被害が大きくなった要困は、①家畜頭数が急激に増加していた状況で2009年夏のガンで草地がダメージを受け、飼料が不足していたこと、②12月~2月まで異常な寒さが続き、さらに、これに追い打ちをかけるように4月に大雪が降ったこと、③政府は、ガンの状況をみて、乾草、補助飼料の準備の指令を出したが、政府の予算不足と家畜相場の下落による家畜の販売不振で牧民に資金が無く十分分な準備が出来なかったこと、④ウブルハンガイ県を例に取れば、オトル用地の確保、放牧地の緊急移動の計画は作成したが、ソムから牧民への的確な指令が行き届かなかったこと、⑤新規参入や若い層の牧民が増え、ゾドやガンに備える技量が不足していたことの5点に集約できる。ゾドの被害の主要因は寒冷など異常気象によるところが大きいが、その被害規模は、放牧地の適切な利用・管理による家畜の飼料の確保によってかなりの部分を軽減することができるであろう。現在、こうした自然災害を少しでも軽減し、モンゴル国の牧畜業の持続的発展を図るため、モンゴル国政府一丸となって対策に取り組んでいる。具体的な例としては、2010年5月に国会で承認された「モンゴル家畜国家プログラム」があげられる。これは、牧蓄業の市場経済の中における競争力を改善し、家畜の健康を図り、家畜の質を向上し、気候等のリスクを乗り越えられる牧畜業にすること、資産物の生産から販売の流通の流れを明確にすること等を内容とした畜産政策プログラムである。このプログラムの推進の柱は、①獣医や畜産技術者の行政サーどス能力向上を図ること、②国際市場でも競争力のある畜産物製品の生産・開発をすること、③牧畜業の主要な従事者である牧民を育成し、放牧地マネージメント能力の向上を図ることなどとなっている。