- 著者
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石井 智美
小宮山 博
- 出版者
- 日本酪農科学会
- 雑誌
- ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.2, pp.125-130, 2010 (Released:2014-03-15)
- 参考文献数
- 28
- 被引用文献数
-
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モンゴル国ではゴビ地方でフタコブラクダが飼われてきた。伝統的にラクダを飼育してきたゴビ地方ではラクダ乳酒(ホルモグ)をつくってきた。ウムヌ・ゴビ県でホルモグを製造する遊牧民宅と,首都に近いダルハン・オール県で,新たにホルモグをつくり始めた遊牧民宅で調査を行った。ダルハン・オール県のホルモグの性状は酸度1.2%,pH 4.2,アルコール度1.5%で,ウムヌ・ゴビ県のホルモグと大きな違いは無かった。ホルモグの一般成分分析をした結果,アイラグと比べたんぱく質,脂肪,可溶性無窒素物が多かった。飲用量は成人男性で 1 日あたり 2~3 L,女性で 1 L だった。製造方法はスーダンのラクダ乳酒であるガリス,カザフスタンのシュバトと同様だった。スターターにはゴビ地方と同じく,ヤギ乳の発酵乳を用いていた。飲用には「健康に良い」「内臓の病気に良い」等の効能が伝承されていた。発酵に関与する微生物由来の代謝産物が,腸管で良い働きをするとともに,免疫賦活作用があると考える。ホルモグに伝承されてきた効能を科学的見地から明らかにすることは,民族飲料の価値について考えるきっかけになると思われる。