著者
小杉礼子
出版者
横浜市
雑誌
勤労よこはま
巻号頁・発行日
vol.平成13年(1月), no.436, 2001-01
著者
小杉 礼子
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.71-92, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
21

本稿では,若年大卒者の仕事の変容について,3つの視点(①学卒未就職,失業,非正規雇用の状況,②就業先の企業規模,職種,賃金,③早期離職)から統計分析を行った.そこから,高卒者との比較においては,失業率も非正規雇用率も低く,また就業先は大規模企業が多いなど学歴間格差は拡大していること,一方,ブルーカラー職に就く男性卒業者が2割を占めるようになったり賃金の分散が大きくなるなど大卒内での就業実態の多様化が起こっていることが明らかになった.また,女性大卒就業者が大幅に増えていることも指摘した.こうした変容を踏まえて,大学が検討すべきことは,培うべき知識・スキルの認識を(産業)社会と共有する仕組み,女性卒業者のキャリア開発であることを指摘した.
著者
小杉 礼子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.355-369, 2004-03-31
被引用文献数
1

本稿では, まず, オランダの研究者が設定した集団主義-個人主義の尺度を用いて, 日本の若年大卒者が雇用形態によって職場で求められる個人主義的働き方の程度に違いがあるか否かについて, 大量質問紙調査結果から検討した.ついで, 非典型雇用においては, 一定の職業能力獲得・発揮が見込まれる職務であるか否かが, 個人主義的働き方の実現を左右するという見方から, 非典型雇用での職業能力の獲得・発揮状況を, 別の実態調査から雇用形態別に検討した.<BR>非典型雇用に流入する若年者には個人主義的志向が強いことは指摘されているところであるが, ここでの分析では, 個人主義的働き方を要請する非典型雇用の職場・職務は, 大卒の比較的年長の (経験年数が長い) 男性の職場や派遣社員の場合など, 特定の部分に限定的に存在する可能性が高いことが明らかになった.むしろ多くの若年アルバイトやパートタイマーの職場・職務は, 職業能力の獲得・発揮の機会が限られたものであり, 仕事の自立性や個人の意見の反映などの個人主義的な組織文化が支配する職場とはいえない.<BR>さらに, 非典型雇用での職業能力の獲得・発揮に重要だったのは, 学校教育などの企業外の機関でも幅広い多様な業務の経験でもなく, 就業先企業への長期勤続や企業からの支援を受けることであった.若者が非典型雇用を選択する背景には個人主義的志向があるが, 企業依存性を強めなければ, 職業能力の獲得は進まず, ひいては自立的な働き方も実現できない.この矛盾の克服には職業能力形成のための基盤を社会的に整備していかなければならない.
著者
小杉 礼子 堀 有喜衣
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.5-28, 2004-01-31
被引用文献数
1

これまで様々な論者によって研究が進められてきた「フリーター」は,主として「残業のない正社員なみ」に働いている若者が多く含まれていた.こうした若者を本稿では「中核的」なフリーターと位置づけ,「あまり働いていない」者を「周辺的」フリーターとし,さらに「働いていない」者を「無業」として,その現状と問題を明らかにした.政府統計を用いた分析によれば,(1)「周辺的フリーター」はおよそ35万人,無業者はおよそ80万人と推計される(2)90年代後半以降,非在学・非家事の「無業」が増加している,という傾向が見られた.また都道府県別に失業と無業の関係をみたところ,若年男性では雇用情勢の厳しい都道府県で無業化していたが,女性については家事従事者が増加するためはっきりした相関が見られなかった.こうした「周辺的フリーター」の増加に対して,すでに就業支援を行っている機関に対してインタビューを行い,若者に対する認識と,その認識に基づく支援の論理の構築を探った.インタビューによれば,これらの諸機関の活動はそれぞれの範囲では十分機能しているものの,しばしば限定的な支援を正当化する論理へと帰結しているという問題が見出された.今後は,これまで十分に注目されてこなかった「周辺的フリーター」の現状把握と,若者から信頼される支援のさらなる構築が求められる.