著者
小林 潤司
出版者
国際基督教大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

トリフェニレンにヘテロールが縮環した化合物であるトリヘテラスマネン合成の別法としてトリフェニレンの湾部が6箇所リチオ化されたヘキサリチオ体経由の合成法を活用してトリヘテラスマネン類の合成を行った。2,3,6,7,10,11-ヘキサブトキシトリフェニレンを出発原料として、TMEDA存在下、過剰量のn-BuLiを作用させ、加熱かくはんを行ったところ、効率よくヘキサリチオ体が発生することを見いだしていたので、このヘキサリチオ体に、各種典型元素試薬を反応させトリヘテラスマネンの合成を検討することとした。ヘキサリチオ体にフェニルジクロロホスフィンを作用させ、引き続いて単体硫黄を作用させることで、トリホスファスマネントリオキシドの合成に成功しており、生成物の構造異性体の分離構造決定を行った。また、別の典型元素源として、ジアルキルジクロロスタンナンを作用させることで、ヘキサスタンナスマネンの合成にも成功した。有機スズ化合物は、その他の典型金属元素と効率よくトランスメタル化が進行することが知られているため、このトリスタンナスマネンを新たな出発原料として、新たなトリヘテラスマネンへと誘導することを検討した。そこで、母体のスマネンと同様な骨格的歪みを持ち、かつ物性材料としても有用性が期待されるトリボラスマネンの合成を目指し、ホウ素原子とのトランスメタル化を検討した。その結果、各種NMRスペクトルより、少なくとも湾部の1箇所がホウ素化されたと思われる化合物の生成が示唆された。
著者
杉浦 裕子 大和 高行 小林 潤司 山下 孝子 丹羽 佐紀
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.258-287, 2011

"Romeo and Julietta" is the 25th novel of William Painter's The Palace of Pleasure, Tome 2 (1567), and is one of the sources of William Shakespeare's Romeo and Juliet (1595). Painter's "Romeo and Julietta" is a minor source compared to Arthur Brooke's The Tragicall Historye of Romeus and Juliet (1562), which Shakespeare mainly referred to, and therefore has not been paid much attention to so far. This essay first tries to evaluate Painter's work as the second source of Shakespeare's Romeo and Juliet by comparing it with Brooke's and Shakespeare's. Through the comparison of each work's introduction of the story, handling of "Fortune", characters of Romeo/Romeus and Juliet/Julietta, and the ending of the story, it is obvious how Shakespeare arranged his sources to make his dramatic version effective for the audience's minds. It can also be seen that Shakespeare is not only under the influence of Brooke's long poetic story, but also had the effects of Painter's simple and compact story in mind. The latter part of this essay is a Japanese translation of Painter's "Romeo and Julietta", which will make it easier to compare Shakespeare's two sources.
著者
川島 隆幸 狩野 直和 小林 潤司 後藤 敬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、斬新な特定位置占拠型配位子の設計と、それらを活用した高配位典型元素化合物の創製を目的に行われた。まず、電子・立体効果の両面で安定化能力にすぐれた三座配位子の実現を目指し、三方両錐構造の二つのアピカル位と一つのエクアトリアル位を占拠するように独自に設計・開発した、新規な平面型三座配位子の応用を検討した。次に、配位座の完全固定化による高配位状態の安定化を指向し、全てのエクアトリアル位と一つのアピカル位を占拠しうる剛直な四座配位子を開発し、その高配位リン化合物および高配位14族元素化合物の合成への応用と、四座配位子のアピカル炭素原子を他の典型元素へ置き換えた新配位子の開発を試みた。続いて、デンドリマー型置換基の開発を行い、これを3個導入することにより、フレキシブルなエクアトリアル位占拠型置換基として機能し得るかどうかを検討した。さらに、ジチオカルボキシラト配位子およびカルボキシラト配位子を二座配位子として活用した6配位ケイ素化合物の構築について検討した。これらの検討の結果、熱的に安定な4配位1,2-ヨードキセタンの酸化剤としての応用、三つの酸素原子がエクアトリアル位を、炭素原子が一つのアピカル位を占めたカルバホスファトランやカルバシラトラン、および5配位ケイ素原子あるいは7配位ケイ素原子同士が連結したジシランの合成に成功した。加えて、これらの関連化合物、リンとアルミニウムからなるホスファアラトラン、オレフィン重合活性を示すカチオン性シラノラトジルコニウム錯体、および電子供与能の最も高いアミノ(イリド)カルベンの創製にも成功した。このように独自に開発した配位子を活用して、従来の配位子では安定化し得なかった新規な有機高配位典型元素化合物を創製し、その構造、結合様式および反応性を明らかにするとともに、有機元素化学の発展に貢献する新構造に基づいた新しい知見を得ることができた。
著者
丹羽 佐紀 山下 孝子 大和 高行 小林 潤司 杉浦 裕子 Niwa Saki Yamashita Takako Yamato Takayuki Kobayashi Junji Sugiura Yuko
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 人文社会科学編 (ISSN:03896684)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.145-223, 2008

2006年1月から2007年7月にかけて、鹿児島在住の英国近代初期演劇研究者の仲間たちが集まって、月に1回の割合で、エリザベス1世時代の劇作家、ジョージ・ピールの『ダビデとバテシバ』の輪読会を行なった。一連の翻訳は、その輪読会の成果である。ジョージ・ピールは彼の劇作品に様々な題材を取り入れており、『ダビデとバテシバ』は、聖書のサムエル記下の記事を題材として扱ったものである。劇のあらすじは、基本的には聖書の中に書かれた内容と同じであるが、その描き方にはかなりの相違点が見られ、ピールの独自性が顕著である。翻訳に際しては、毎回、担当者が準備してきた試訳を全員で細部にいたるまで議論、検討し、その都度必要に応じて修正した。それを、丹羽佐紀が取りまとめて文体の統ーを図った。従って、原文の解釈については5名の共訳者が等しく責任を負い、訳文の文体および表現については、主に丹羽に責任がある。解説と訳注の執筆は、丹羽が担当した。