著者
唐 鈺穎 小野 はるか 小川 祐子 小澤 美和 田巻 知宏 大谷 弘行 清藤 佐知子 鈴木 伸一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.169-177, 2021 (Released:2021-05-21)
参考文献数
27

【目的】対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつ・不安と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討する.【方法】交絡因子となる対象者の属性別にサブグループに分けて,抑うつ・不安と家族機能を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.【結果】各属性のサブグループにおいて,母親の抑うつが高い場合は母親の抑うつが低い場合よりも子どものQOLが有意に低いことが示された.きょうだいの有無のサブグループ,母親の化学療法の受療有無のサブグループにおいて,家族機能による子どものQOLに差異がみられた.【結論】今後,子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,子どものきょうだいの有無や乳がん患者の化学療法の受療有無などといった属性も考慮したうえで,母親の心理状態と家族機能にアプローチする必要があると考えられる.
著者
小澤 美和
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-16, 2004-02-29 (Released:2011-03-09)
参考文献数
40

1980年代に, 小児癌患児らの心理的問題がPTSD症状に酷似していると報告された.そして, 1994年のDSM-IVではPTSDとしてのトラウマの概念が拡大され, 生命を脅かしかねない疾患に罹患することもトラウマと解釈されるようになった.その後, 小児癌患児・家族の心の問題をPTSDの枠組みで考えることの有用性が検証され, さらに, 脆弱因子などの調査も進んできた.欧米での患児におけるPTSSの発症が2.6~47%に対して, 少ない報告ながらわが国の報告では80~83%と非常に高い頻度であった.PTSS発症における予防的介入は, 患児自身のみならず両親に対しても必要である.主観的治療強度, ソーシャルサポート授与感, 特性不安, 告知などを考えに入れて介入する.また, 日本での調査では, アレキシシミック (感情表現困難) な性格傾向とPTSS発症との関係が指摘され, これが, 日本人に特有な性格傾向であることは興味深く, 今後, 日本での調査を進め, われわれがもつ特性とPTSS発症の関係が明らかになることで, 小児癌患児にとってさらに有効な援助を行うことができるだろう.
著者
武井 優子 尾形 明子 小澤 美和 盛武 浩 平井 啓 真部 淳 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-33, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
19

本研究の目的は、小児がん患者の病気に対するとらえ方の特徴と、それらが患者の心理社会的問題や適応とどのような関連があるのかを検討することであった。小児科外来通院中の21名の小児がん患者を対象に半構造化面接を実施し、病気に対するとらえ方と退院後の生活における困難について聴取した。また、健康関連QOL尺度(Peds-QL)を測定した。Fisherの直接確率検定の結果、退院後の生活で経験する困難が病気のとらえ方に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、重回帰分析の結果、前向きなとらえ方がQOLに正の影響を、後ろ向きなとらえ方やあきらめの姿勢が負の影響を及ぼす様相が示唆されたが、統計的には有意ではなかった。今後は、対象者数を増やし、量的検討を実施していく必要がある。
著者
今井 純好 栗原 潔 小澤 美和 島本 由紀子 石田 和夫
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.58-64, 1995-02-28

北里大学病院では1989年7月より神経芽細胞腫マススクリーニング(NBMS)陽性者の精密検査を行ってきた。今回は精密検査を施行した84例の乳児を対象にNBMS陽性者から発見された神経芽細胞腫(NB)例の頻度や特性, NBMS陽性でありながら腫瘍を認めなかったNBMS疑陽性例の経過観察の方法などについて検討した。NB例は6例,疑NB例1例で進行例も認めたが, N-myc癌遺伝子の増幅を認めなかった。NBMS疑陽性例については,1歳までは腹部超音波や胸部XPなどの画像診断により腫瘍の確認を慎重に行い,それでも腫瘍が認められなかった症例については,2歳頃まで尿中VMA, HVAなどにより経過観察を行った方がよいと思われた。