著者
大西 正二 小菅 英恵 熊谷 恵子
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.34-45, 2022 (Released:2022-02-28)
参考文献数
26

漢字書字が困難な学習障害児61名において,見本の漢字を視写(見本を見て書き写す)するまでの6つの工程(①注視点の移行,②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,⑥視写結果)におけるつまずきの傾向について,10検査(13項目)の結果から階層的クラスター分析を行い,4群に分けられた。4群の集団的特徴を把握するため,Kruskal-Wallis検定を行った結果,第1クラスターは①注視点の移行,②形の記憶,⑤書字運動,第2クラスターは①注視点の移行,③画要素,第3クラスターは②形の記憶,③画要素,④筆順,⑤書字運動,第4クラスターは①注視点の移行の工程に問題がみられる群であることが示唆された。漢字書字が困難な児童の苦手な工程を補い,それぞれの特徴に合わせた学習支援が重要である。しかし,通常学級に存在することが多い学習障害児に対する視写の工程の詳細な評価が困難な学校現場においては,視写の工程のすべてを補う学習支援が必要だろう。
著者
福島 直樹 佐々木 邦明 上坂 克巳 小菅 英恵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00031, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
13

高齢運転者が健康状態に問題を感じながらも,代替的な移動手段が確保できないことから,運転を継続しているとの報告がなされている.このことから,高齢運転者の運転頻度は,個人的な要因だけでなく,地域的な要因が影響していることが指摘されてきた.そこで本研究は,教習所での高齢者講習時のアンケート調査で得られた,高齢者の目的別の運転頻度データを用いて,高齢運転者の運転頻度とアクセシビリティ,ウォーカビリティなどの地域の移動環境との関係性について検証を行った.ロジスティック回帰分析によって両者の関係を分析したところ,複数の目的の運転頻度において,地域のアクセシビリティ指標やウォーカビリティ指標が有意な係数を持つことが確認され,地域移動環境と高齢運転者の運転頻度に関係性があることが示された.
著者
小菅 英恵 山村 豊 熊谷 恵子
出版者
日本応用心理学会
雑誌
応用心理学研究 (ISSN:03874605)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.207-218, 2020-03-31 (Released:2020-06-29)
参考文献数
30

ADHD is a developmental disorder that is known to influence traffic accidents because of the characteristics. Therefore, it is essential to understand the effects of psychological and behavioral characteristics of ADHD on traffic behaviors to identify effective methods of preventing traffic accidents. This study used an analog study method and focused on "attentional dysfunctions while moving." A self-checklist by 5 choices method that made of ADHD 18 items in DSM-5 was administered to university students and correlations between the ability of two types of spatial attention tasks and scores of attentional dysfunctions while moving were examined based on the degree of ADHD tendency. A two-way ANOVA was conducted on ADHD tendency and the ability of spatial attention. The results showed the participants with high ADHD tendencies demonstrated a low change detection ability that decreased "attentional dysregulation scores" and "a decline in arousal level scores". It was suggested that difficulties in maintaining attention might decrease the change detection ability of people with ADHD tendencies, which might influence carelessness while moving.
著者
根本 美里 谷口 綾子 佐々木 邦明 小菅 英恵
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.1-9, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

本研究では、認知機能検査が受検者にもたらす心理的影響の効果・副作用を検証するため、インタビ ュー調査と認知機能検査によるメッセージ効果検証実験を実施した。インタビュー調査の結果、認知機能検査結果に関わらず多くの対象者が、検査を難しいと感じていることや過去の検査結果と比較して結果を解釈していることが明らかになった。認知機能検査によるメッセージ効果検証実験の結果、認知機能の低下のおそれがない第3分類の人は、クルマ利用抑制意図・運転免許返納行動意図など4項目の値が、検査実施後に有意に低くなり、検査による副作用の存在が示唆された。認知機能の低下のおそれがある第2分類の人は、運転免許返納行動意図が事後に有意に高くなった。以上より認知機能検査による心理的効果・副作用の両面が存在する可能性が明らかになった。
著者
小菅 英恵 熊谷 恵子
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-32, 2017-03-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
21
被引用文献数
1

車両の運転者や歩行者は、注意を働かせながら主体的に情報を収集しなければならない。多くの交通事故や道路交通違反の発生は、この注意機能の不全に起因している。 成人ADHD者や健常高齢者は特に注意不全が生じやすいが、彼らの運転時や歩行時 の注意不全に関わる特性は解明されていない。本研究では、これら特性解明のため定型発達成人の特徴と比較・照合可能なツールとして、運転時や歩行時の注意不全尺度を試作し、30代~50代の一般成人208名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、 (1) 試作した尺度が、「注意の制御不全」「注意の変更機能」「覚醒水準の低下」「注意の転導性」の4 因子構造をもつこと、(2) 得られたα係数値から尺度の信頼性が示されたこと、(3) 各下位尺度得点と既存のDSM-5・ADHD項目の合算得点との間に理論上一致する相関パタンを示し妥当性が示されたこと、を確認した。本結果より、当該尺度の信頼性および妥当性は示されたと考えられる。