著者
谷口 綾子 川村 竜之介 赤澤 邦夫 岡本 ゆきえ 桐山 弘有助 佐藤 桃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_309-I_316, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
13

本研究では,運動着(ジャージ・スウェット)の日常的な着用が大学内の景観と授業態度に与える影響を定量的に明らかにするため,運動着での登校が学内の景観イメージにネガティブな影響を及ぼす,運動着での登校と授業態度との間にネガティブな関係が存在する,との二つの仮説を措定し,筑波大学の学生を対象としたアンケート調査により検証した.その結果,運動着での登校は大学内の景観イメージに「似合わない」とネガティブな影響を及ぼすこと,運動着で登校している学生は遅刻や居眠りをする度合いが高いなど授業態度との間にネガティブな関係が存在することが明らかとなった.また,公共交通で通学する学生の方が,そうで無い人と比べ運動着登校経験が少ないこと,運動着登校経験がある人の方が運動着登校にポジティブな意見を持つことが示された.
著者
谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_1103-67_I_1112, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
12

カーシェアリング(以下CS)は欧米諸国で一定の成功を収めているものの,我が国での加入者は未だ単体で採算が取れるレベルには至っていない.本研究では,CSを大規模事業所である大学に導入した筑波大学を事例として,その導入経緯について需要予測と利用促進を中心に紹介するとともに課題を整理した.筑波大学のCS潜在需要予測で用いたBI法による推計結果は,導入後1年半現在の加入者数とほぼ同じ水準であり,BI法の妥当性が検証された.また,体育の授業を介した利用促進策は,これまでバスの利用促進等で成功してきた方法であるにも関わらず期待された結果とならず,CSの特殊性が明らかになった.今後は環境負荷や自動車保有状況の変化等の効果を長期的に計測していく必要がある.
著者
岡本 直久 川田 真理絵 石田 東生 堤 盛人 谷口 綾子 諸田 恵士
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.801-806, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

本論文では、つくばエクスプレスの周辺地域における住民の交通行動の変化と、交通手段に対する意識の変化を把握し、つくばエクスプレス開業が住民に与えた影響を把握することを目的としている。2005年8月24日、つくば市と秋葉原を結ぶつくばエクスプレスが開業し、つくば市とその周辺地域では、路線バスの再編や駅の新設・道路整備などが行われ、地域内の交通体系が大きく変化したことが期待される。結果として、駅などの幹線公共交通へのアクセス手段について、つくばエクスプレス開業前に比べて住民がより合理的に交通手段を選択する傾向が示唆され、アクセス手段の交通サービスレベルが変化していることが伺えた。
著者
川村 竜之介 谷口 綾子 大森 宣暁 谷口 守
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_511-I_521, 2015

本研究では,我が国において,公共交通車内における「弱者に席を譲る」「騒ぐ自分の子どもを注意する(抑止する)」という二つの協力行動を促すための有効な方策を明らかにすることを目的とし,欧州と東アジアの6か国における協力行動と規範の関係性に着目した.協力行動と規範の主観的評価については国際アンケート調査から,「マナーに関するアナウンスや掲示物」等,協力行動に影響を及ぼすと考えられる環境要因については鉄道会社のWebサイトや現地調査から把握し,分析を行った.その結果,「優先席」で席を譲る行動を促すアナウンスは,優先席以外で席を譲る行動を阻害している可能性がある事,また「騒ぐ自分の子供を注意する」行動を促すためには,周囲の協力行動に対する認知「記述的規範」を高める事が効果的である可能性が示された.
著者
谷口 綾子 宮川 雄貴 石田 東生
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.54-64, 2014
被引用文献数
2

本研究では,2010年8月に開通したかしてつバス導入経緯に着目した物語を整備関係者・利用者へのインタビューより作成し,職員教育の一環として沿線自治体職員にその物語の読了を要請することで,物語が自治体職員の地域愛着に与える効果を把握した.物語の効果計測調査では,物語を読む群,物語と同一の内容を年表にまとめた資料を読む群,統制群の3群を設定し,群間や物語の評価の高低により地域愛着等に差があるかを分析した.その結果,物語を高評価した人はバスへの愛着が高く,バス利用意図も高いことが定量的に示された.さらに,資料群の感想は即物的・個別的内容に限られたが,物語群の感想は,公共交通の大切さや人と人とのつながりの大切さといった普遍的な記述が多いことが示され,物語読了の効果を質的に把握することができた.
著者
谷口 綾子 香川 太郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.329-335, 2009 (Released:2009-08-20)
参考文献数
11

本研究では,都市の中心市街地の商店街において,自動車との接触が歩行者の心理状態に否定的な影響を与えているであろうとの仮説を措定し,その仮説を検証するため,東京都目黒区自由ヶ丘商店街を対象に,歩行者の街路歩行に対する主観的評価と自動車からの物理的干渉を測定する調査を行った.歩行者の主観的評価の指標として「歩きやすさ」「雰囲気のよさ」「楽しさ」の3指標を用い,これらを自動車流入規制のある時間帯と無い時間帯で比較を行うとともに,共分散構造分析による因果構造分析を行った結果,歩行者が自動車から何らかの干渉を受けると,上記3指標が有意に低下することが統計的に示された.これらより,歩行空間への自動車の流入は,歩行者の意識に否定的な影響を及ぼすことが示唆された.
著者
渡邊 芳樹 谷口 綾子 張 詠皓
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.24-36, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
26

高齢ドライバー向け認知機能検査の結果通知の場面において、メタメッセージの存在が懸念されている。本研究では、メタメッセージを緩和させるべくデザイン・レイアウトを変更した結果通知書の効果計測の為、65歳以上の高齢ドライバー2,000名を対象として、事前アンケート/模擬認知機能検査/結果通知書の提示/事後アンケートから成るWeb調査実験を行った。第一に、メタメッセージの影響を受け易い個人属性について探索的に分析した結果、女性や年齢が高い人ほど、「運転に対する自信」や「運転の自己評価」の点数が増加していた。このことは、調査設計者の意図せぬ副作用と言える。第二に、メタメッセージ緩和策を講じた改訂案結果通知書は、旧版結果通知書と比して検査後の「運転に対する自信」を有意に減少させる効果を有していることが示された。
著者
溝口 哲平 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00081, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
59

移動中の活動による移動の不効用低減・効用増進効果は,従来,活動種類や道具・機器をもとに検討されてきた.本研究は,移動中の活動が行われる“理由”と持たれる“認識”を「移動中の活動の主観的意味」(SMTM)と呼び,どういったSMTMが移動の不効用低減・効用増進効果を有するのかを検討した.SMTMと移動時間短縮意向との関連を調べた結果,移動中の活動は,“暇つぶし”ではなくその活動を行うこと自体を目的に,“行いたいと思って”行われる場合,移動時間の維持を,“暇つぶし”が目的である,あるいは“行いたいと思って”行われない場合,短縮を希望する方向に寄与することが分かった.移動の不効用低減・効用増進効果は前者の場合のみ有すると推察される.
著者
宮谷台 香純 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_798-II_811, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

自動運転システム(以下,AVs)の実証実験や運転支援技術の実装に伴い,将来利用者となる人々のAVsに関する議論や課題も多様化していると考えられる.今後,AVsの社会的受容性を検討するうえで,これらを把握する必要がある.そこで,マスメディアの一つである新聞による報道に着目する.新聞は議題設定効果を有していると言われており,新聞分析では人々が抱える議題を明らかにできる.本報告では,AVsについて新聞が社会に提供した議題を明らかにし,AVsの開発・導入の議題の変遷を把握することを目的とする.読売新聞を調査対象とし,「自動運転」の登場よりAVsに関する記事を収集し,質的分析を行った.その結果,国際競争で勝つために開発するといわれる背景にガラパゴス携帯の失敗があること,技術への過信が危惧されていることなどが明らかとなった.
著者
谷口 綾子 藤井 聡
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.115-120, 2006-10-25
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

本研究では,商店街における自動車流入規制に反対意向を表明している商店主は,「商店街活性化に対して自動車規制が肯定的な効果を持ちうる」」という事実を十分に認知しておらず,それ故,その事実を認知すれば自動車流入規制,あるいは,歩行者天国施策に対する態度が肯定的な方向に変容する可能性が存在しうるものと考えた.そこで,本研究では,他の文献により報告されている実証データを商店主に提供することで,商店主の歩行者天国への賛否における態度変容がおきるか否かを検証することを目的とした調査,分析を行った.その結果、本研究の仮説が支持されるという結果を得ることができた。本研究で活用した歩行者意識を計測するための歩行者調査,あるいは,そこで見いだされた実証的知見を商店街に提供していくという取り組みは,商店街における歩行者天国の導入,あるいは,見直しにむけた様々な取り組み一つとして,一定の有効性があるものと考えられる。
著者
川村 竜之介 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_335-I_344, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
8

本研究は,都市空間における自宅・職場・学校以外の場所を「まちなか」と定義し,まちなかで人々に「居場所」として認知されている場所を分類し類型化すると共に,まちなかの居場所の有無と生活の質・地域への意識(地域愛着など)との関係性について明らかにすることを目的としている.具体的には,まちなかの居場所の有無や,生活の質・地域への意識に加え,既存研究を参考に作成したまちなかの居場所感を計測するためのWEBによるアンケート調査を実施した.分析の結果,特に飲食店や友人・親戚宅,図書館などが多くの人に居場所として認知されていること,居場所の有無と生活の質・地域への意識との間にはポジティブな関係があることが統計的に示された.また居場所感尺度の特徴の違いによって,まちなかの居場所を7種類に類型化することができた.
著者
根本 美里 谷口 綾子 佐々木 邦明 小菅 英恵
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.1-9, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

本研究では、認知機能検査が受検者にもたらす心理的影響の効果・副作用を検証するため、インタビ ュー調査と認知機能検査によるメッセージ効果検証実験を実施した。インタビュー調査の結果、認知機能検査結果に関わらず多くの対象者が、検査を難しいと感じていることや過去の検査結果と比較して結果を解釈していることが明らかになった。認知機能検査によるメッセージ効果検証実験の結果、認知機能の低下のおそれがない第3分類の人は、クルマ利用抑制意図・運転免許返納行動意図など4項目の値が、検査実施後に有意に低くなり、検査による副作用の存在が示唆された。認知機能の低下のおそれがある第2分類の人は、運転免許返納行動意図が事後に有意に高くなった。以上より認知機能検査による心理的効果・副作用の両面が存在する可能性が明らかになった。
著者
谷口 綾子 奥山 有紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1133-I_1142, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,乳幼児連れの移動者による移動中のマナー・モラルの低下が指摘されている現状を受け,子連れ移動に対する意識における世代間ギャップの存在と,段差解消など物理的なバリアフリー化推進が人々の意識にもたらす副作用の可能性を明らかにすることを目的とした調査分析を行った.その結果,子連れでの外出頻度,子連れ可だと思う場所,子連れ外出可の時刻,夫の育児参加への意識など,子育てに関する意識や行動には世代間ギャップが存在すること,ならびに物理的バリアフリーにより慣れていると考えられる若年層かつ海外居住経験のある人ほど高い行政依存傾向,すなわち,施策が意図せざる副作用の可能性が示された.
著者
藤井 聡 谷口 綾子 羽鳥 剛史
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は,土木計画における公共受容や合意形成の問題を考える上で,個人の心理的傾向性として「大衆性」に着目した.そして,オルテガの政治哲学理論を踏まえ,行政行為が一切変化しない状況でも,公衆が大衆化することで公共事業に対する合意形成が困難となるであろうという仮説を理論的に措定した.そして,大学生100名を対象としたアンケート調査を通じて,その仮説を実証的に検証した.その際,大衆社会論の代表的古典であるオルテガ著「大衆の反逆」(1930)を基にして構成された個人の大衆性尺度を用い,それら尺度が,政府・行政や公共事業に対する態度に及ぼす影響を分析した.その結果,本研究の仮説が支持され.大衆性が公共事業に対する合意形成を阻害する可能性が示された.以上の結果は,人々の大衆性が昨今の行政不信と公共事業を巡る合意形成問題をもたらし得る本質的な原因であり,そうした問題の解消にあたっては,人々の大衆性を低減することが本質的課題であることを示唆するものである.次に,以上の先行研究を受けて,個人の大衆性を低減するための方途を探ることを目的として,人々とのコミュニケーションを通じた態度変容施策の一つとして,「読書」の効果について実証的に検討した.そして,内村鑑三著「代表的日本人」(1908)に着目し,本書を通読することによって,人々の大衆性が低減するという仮定を措定し,実証実験を通じて本仮説を検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,「代表的日本人」を通読することによって,人々の大衆性が低減し得る可能性が示された.
著者
谷口 綾子 川村 竜之介 赤澤 邦夫 岡本 ゆきえ 桐山 弘有助 佐藤 桃
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_309-I_316, 2013

本研究では,運動着(ジャージ・スウェット)の日常的な着用が大学内の景観と授業態度に与える影響を定量的に明らかにするため,運動着での登校が学内の景観イメージにネガティブな影響を及ぼす,運動着での登校と授業態度との間にネガティブな関係が存在する,との二つの仮説を措定し,筑波大学の学生を対象としたアンケート調査により検証した.その結果,運動着での登校は大学内の景観イメージに「似合わない」とネガティブな影響を及ぼすこと,運動着で登校している学生は遅刻や居眠りをする度合いが高いなど授業態度との間にネガティブな関係が存在することが明らかとなった.また,公共交通で通学する学生の方が,そうで無い人と比べ運動着登校経験が少ないこと,運動着登校経験がある人の方が運動着登校にポジティブな意見を持つことが示された.
著者
谷口 守 石田 東生 岡本 直久 堤 盛人 谷口 綾子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

現在、エクメーネは荒廃が続いており、その構造面からの修復を本気で考えねばならない段階にある。特に都市域のコンパクト化やスマートシティ化といった政策や、およびエコロジカル・フットプリントなど適切な評価指標の開発も必要である。本研究ではそれら諸課題に主に統計的な観点から対応するとともに、対応する都市計画制度や意識改革に至るまで、次の時代のための新たな解決策の提示を行った。
著者
谷口 綾子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ベビーカー連れの外出の難易度認知について移動時満足度(STS)を用いて評価するとともに,ベビーカー連れのSTSに周囲の人々の対応がどの程度関係しているのかを探索的に検証し,欧州の先進国と我が国の比較を行った.その結果,我が国ではベビーカー連れの移動時に周囲からの支援を受けた経験が欧州各国よりも少ないこと,ベビーカー連れの移動の認知的幸福感は,一般にSTSが低いとされる通勤目的よりもさらに低いことが示された.また,ベビーカー連れでの移動時に周囲の人々から受けた支援の経験や,記述的規範の知覚が,ベビーカー連れのSTSに正の影響を与えていることが示された.