著者
山下 優 奥村 能城 井村 友紀 奥田 知宏
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.309-314, 2020 (Released:2020-09-10)
参考文献数
11

災害発生時は衣食住資源と共に医療資源確保も困難となる.今回我々は集中豪雨による河川増水・土砂崩れの影響で孤立した療養型病院でテレビ通話を使用し正常分娩に至った症例を経験した.29歳女性,2妊1産,自然妊娠で当院通院中であった.妊娠40週に陣痛発来あるが豪雨による冠水・土砂崩れにより来院不可であり自宅近くの当院分院を受診.分院には内科医・看護師のみで,産科・小児科・助産師不在であった.陸空路移送は不可能であり,本院からテレビ電話を使用し分娩状況を確認.分娩指示を行い経腟分娩に至った.児は2,900gでApgar score 9/10点の男児であった.胎盤もテレビ電話でBrandt法を指示し剥離を施行した.産後1日目に道路開通し本院搬送となるが母児共に経過良好で,産後4日目に軽快退院となった.災害時の医療資源確保は困難だがデバイスを駆使することや周産期教育推進で医療連携が取れ資源確保ができる可能性が示唆された.
著者
山下 優希
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.220, 2016 (Released:2016-11-22)

【目的】音楽にはリラクセーション効果があり,最近では様々な分野に治療の一貫として注目を集めている.スタティックストレッチング(以下ストレッチ)は運動後に行うことにより傷害予防や疲労回復の促進,疼痛の軽減の効果があるとされている.そこで運動後,ストレッチを実施している最中に音楽のリラクセーション効果を同時に取り入れることによりさらなる効果が得られるのではないかと考えた.【対象と研究方法】被験者は運動疾患のない健常な29名(男性13名 女性16名 年齢32±22歳 身長164±15cm 体重60±40kg),測定場所は静寂空間で実施した.曲はモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ二長調(ケッヘル四四八番) 第一楽章」を選定.ストレッチはハムストリングスに対して実施し,痛みを感じない最大伸展位を至適強度とした.運動機器はコンパス コンパクト レッグプレス(以下レッグプレス)を使用した.立位体前屈指床間距離(以下FFD)の測定は距離が遠い方とした.測定の順序は, 膝伸展位股関節屈曲角度(以下SLR),FFDを測定後,レッグプレス 負荷30㎏ 10分を実施.運動後SLR・FFDを測定.運動後に①音楽聴取(2分間)群(以下A) ②ストレッチ(30秒間)群(以下B) ③音楽聴取とストレッチの同時群(以下C)の実施後にSLR・FFDを再測定.効果の影響を考慮して各群の間隔は1週間とした.検定方法は一元配置分散分析と多重比較を使用し,有位水準は5%未満とした.【結果】SLR右下肢はAとC間のSLRが優位に上昇した.(P=0.037263)SLR左下肢はAとC間,BとC間のSLRが優位に上昇した.(P=0.000102)FFDは,各群の平均値は上昇したが,優位な差はみられなかった.【考察】今回の研究においてSLRがAとC間において左右の下肢ともに優位な上昇がみられた.左下肢ではBとC間においてSLRの優位な上昇がみられたが,右下肢ではBとC間においてSLRの優位な上昇はみられなかったものの数値的にはSLRが向上している.このことから音楽聴取とストレッチを同時に実施することで,それらを単独で行った場合に比べてハムストリングスの柔軟性が向上することが示唆された.これは音楽聴取により交感神経の活動が抑制され,副交感神経の活動が活発になりα波が優位になったことで筋緊張の緩和がみられたことが要因と考える.またトマティス理論により周波数が延髄に作用し,副交感神経優位となったことも柔軟性の向上に繋がった要因の一つと考える.FFDにおいて今回優位な差はみられなかった.これは松永らによるストレッチングの長期介入による腰椎骨盤リズムへの作用が今回の即時的な効果では結果に反映されなかった事が原因の一つと考える.しかし,平均値でみるとCが他のA,Bよりも改善はみられており,音楽の効果も影響していると考える.【まとめ】今回の研究では音楽を聴きながらストレッチを実施することで,音楽聴取とストレッチを単独で行った場合に比べて柔軟性が向上することが示唆された.今後もリハビリテーションの中に運動後の疲労回復,障害予防としてストレッチを取り入れていくことは重要であり,そこに音楽を同時に取り入れることでさらなる効果の増大に繋がることが示唆される.本研究の制約としては聴取音楽の統一や,健常者への実施が挙げられる.今後,音楽の種類や疾患等を考慮した更なる研究が必要である.【倫理的配慮,説明と同意】実施に関しては当該施設の倫理委員会に承認を得るとともに,対象者へ目的の説明を行い協力の同意を得た.
著者
山下 優毅 黒田 悦史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

悪性グリオーマは中枢神経系に原発する悪性の腫瘍で種々の治療法が試みられているが、予後不良のまま残されている。患者においてはグリオーマに対して免疫反応が誘導されるという報告はあるものの、免疫療法のみでグリオーマを治療するのは困難である。グリオーマに対して免疫療法が成功しない原因として、担癌生体では免疫反応が抑制されているためと考えられている。したがって、担癌生体における免疫抑制機構を解明し、免疫抑制状態を改善することにより、有効な抗グリオーマ効果が期待される。我々はグリオーマに対する免疫反応の機構を解析している際にグリオーマとマクロファージを共培養すると、マクロファージから大量のPGが産生されることを見出した。さらに、このマクロファージでは腫瘍免疫に重要なIL-12,TNF等のサイトカイン産生が低下していることから、グリオーマがマクロファージに作用して、PG産生を誘導し、免疫抑制状態を引起こすという仮説を提唱した。今回、中枢神経系のマクロファージとしてのミクログリアを用いて、免疫反応におけるミクログリアの役割と担癌状態における免疫抑制機構を解析し、次の点を明らかにした。(1)マウス脳内より分離したミクログリアをグリオーマと共培養することにより、ミクログリアが大量のPGを産生した。一方、TNFの産生は抑制された。(2)PG合成酵素をKOしたマウス由来のミクログリアはPGを産生しなく、TNF産生も抑制されなかった。(3)PG合成酵素をKOしたマウスでは腫瘍の増殖も抑制され、有効な免疫反応が誘導された。以上より、ミクログリア由来のPGが免疫反応を抑制すること、またPG産生をコントロールすることにより、腫瘍に対する宿主の抵抗性を誘導できる可能性が明らかにされた。
著者
築谷 康人 岡野 徹 山下 優嗣 豊島 良太
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.66-71, 2013-03-25
参考文献数
7

【はじめに】先天性無痛無汗症の骨折患者1例を経験したので報告する.【症例】1歳8か月,女児.3週間前に母親が右前腕腫脹に気付き,前医を受診した.右尺骨骨折と診断され,右上腕~手関節までギプス固定を受けたが,骨折部での変形が改善せず,治療目的に当院紹介となった.X線像で右尺骨骨幹部に骨折を認め,仮骨の増生を認めたが,受傷時より転位は進行していた.ギブスを石膏ギブスに変更し,右肘関節を約100度屈曲位で固定させ,さらにストッキネットで右上肢全体を体幹に密着させる形で固定した.その結果,受傷後6か月で骨癒合を得ることができた.【考察】先天性無痛無汗症は,温痛覚と発汗機能の欠如,自傷行為,精神発達遅滞が特徴であり,幼少時より骨折・脱臼を生じやすく,偽関節,変形治癒になりやすい.本症例では,固定法を工夫することで,骨癒合まで長期間を要したが,最終的に良好な結果を得ることができた.
著者
足立 年一 久保 清 山下 優勝
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.5-10, 1982
被引用文献数
1

兵庫県におけるイノシシの生態や行動習性, 農作物の被害実態について聞き取り調査を行うとともに, 電気柵によるイノシシの侵入防止の現地試験を併せて実施した.<BR>1. 被害を受ける農作物には水稲・イモ類・マメ類・栗・柿・竹の子などがあり, なかでも水稲の被害程度が高い.<BR>2. 兵庫県下の生息状況は捕獲数と被害面積から判断すると, 昭和48~51年頃 (約7,800頭捕獲/年) をピークに減少傾向を示している.<BR>3.イノシシは夜行獣で, 夜出没して農作物に被害を与える. ヌタうち, スリ木, きばかけなどの習性がある.<BR>4. イノシシは12月~2月に交尾を行い, 妊娠期間は約120日で4~6月頃出産し, 普通4~6頭産仔する.<BR>5. 餌のし好性を飼育イノシシでみると, 熟柿, サワガニ, 腐植土, 栗, マオ, クズの葉, シュズダマ, サツマイモのつるなどや, 野ネズミ, ヘビ類, ミミズなどの小動物を食べ, 非常に雑食性である.<BR>6. 電気柵による侵入防止効果試験において, 夜光塗料塗布線区ではイノシシの侵入を防止することはできなかった. 電気柵 (ポリステンレス線3~4段張り) 区では, 最初配線不備なところから侵入したが, 設置面を平らにし, 完全に配線したのちは, イノシシの侵入を防止することができた.
著者
益淵 正典 山下 優毅 田中 俊憲 林 鷹治 重田 征子 小埜 和久 佐々木 美枝子 新見 治
出版者
広島文教女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

『ホヤ喘息』や『ダニアレルギー』の治療用抗原に関して蓄積してきた知見を基にスギ花粉症治療薬の研究を行った。まず、スギ花粉蛋白質の抽出法の検討を行った。NaHCO_3抽出(CJP-N)ではF画分にCryj1、J画分にCryj2の溶出がみられ、Crij1とCryj2の精製に適していたがPBS抽出(CJP-P)ではよりアルカリ性の弱い画分に様々にアルカリ性度の異なるCryj1,Cryj2、その分解物及び主要抗原以外の抗原の溶出がみられた。次にスギ花粉中のCryj1,Cryj2以外の抗原の存在と、アレルゲンとしての寄与を検討した。CJP-PのSDS-PAGEブロット後のIgE染色では分子量の異なる10個のバンドがみられ、これらは全てCryj1,Cryj2とは異なっていた。Cryj1,Cryj2はSDSで変性を受けてIgEと全く反応しなかった。患者血清を主要抗原で中和後、患者IgEと反応した抗原量を見積った。実験は15人のスギ花粉症患者血清すべてで、主要抗原以外の抗原と反応した。反応は患者による個人差があった。これらの結果を基に、減感作治療用抗原の検索を行い、アレルゲン性が強く、抗体IgGを作る能力が高く、粘膜反応性(結膜反応)をもたず、分子量が1万から10万の間にある抗原、CJP-PのC画分がノミネートされた。この画分は主要画分を含んでいない。今後、主要画分との混合などを検討して、さらに有用なワクチン開発の工夫が必要である。一連の抗原検索中に、イオン交換で分画したCJP-P画分のSDS-PAGE後の、蛋白質のN-末端側のシークエンスを分析した結果、Cryj1のN末端側の分解物(p15)とC末端側の分解物(p29)を発見し、p29が発症抗原である可能性を示唆した。今回我々はスギ花粉ワクチン用抗原を得るために様々な検索を行い、ノミネートされた蛋白質は出てきたがまだ特定するには至っていない。今後、これらの蛋白質の中からさらに効果的なワクチンを開発する方向に向けて研究していく予定である。
著者
岡田 和将 山下 優毅 辻 貞俊
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.265-275, 2006-09-01

てんかん患者や種々のてんかんモデル動物において脳内のサイトカインやcyclooxygenase (COX)-2が増加していることが報告されている.本研究では,テレピン油投与で誘導した炎症反応がおよぼす遺伝性てんかん(E1)マウスのてんかん現象に対する影響を検討した.てんかん発作のパラメーターとして発作誘発閾値(痙攣誘発に必要な抛り上げ回数),痙攣持続時間,痙攣後意識混濁時間(痙攣終了から完全に回復するまでの時間)を解析した.また脳内のinterleukin (IL)-1β, IL-6, COX-2のmRNAをRT-PCR法で解析した.IL-1β, IL-6, COX-2のmRNA発現はてんかん発作前と発作24時間後で変化はなかったが,テレピン油投与24時間後には全て増加した.テレピン油投与24時間後に発作を誘発した場合,痙攣後意識混濁時間は投与前と比較して有意に延長した.発作誘発閾値と痙攣持続時間には有意差はなかった.痙攣後意識混濁時間の延長はインドメタシンの前投与により抑制されたが,インドメタシン投与はIL-1β, IL-6, COX-2のmRNA発現には影響しなかった.これらの結果からE1マウスのてんかん現象において,COX-2によって誘導されるプロスタグランデインは痙攣後意識混濁時間の維持に重要であることが推測される.