- 著者
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山口 俊雄
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.6, pp.38-48, 1998-06-10 (Released:2017-08-01)
石川淳の戦前の代表作の一つ「マルスの歌」(一九三八)について、まず、流行歌や映画による感覚的総動員、および登場人物の性格付けについて検討することで、大衆が加担する総力戦下銃後の風景が巧みに取り込まれている点を確認し、次に、語り手の反戦的態度のあり方を、題名の由来となったアランの作品と、石川淳の自然観・思想観の中に探る。これによって、時代に対峙しながら書くという作者の精神の孤独な営為を確認したい。