著者
坪井 秀人
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.27, pp.21-42, 2004-03-01

The difference in sex between the author, the narrator, and the characters and their interconnection (the difference in sex of the reader could be included as well) is a fascinating topic, but one that is difficult to pursue. In an attempt to offer an approach this subject, this presentation will look at Dazai Osamu’s female monologue novels. Dazai, from the start of his creative career, devoted himself to meta-fiction and similar narrative styles, but from the 1930s to the 40s during the Asian-Pacific War, he focused on writing novels narrated by women. “Joseito” and the post-war work “Shayo” are supposed to be taking “quotes” from the already existing diaries of women, but these “quotes” are almost indistinguishable from “theft”. Rather than simply looking at similarities in expression as “theft”, I would like to focus on what kind of moral problems arise from a male author borrowing (stealing) the voice of a female narrator and the differences that arise due to differences in expression. The special period relevance and connectedness between the war and post-war periods, and if possible comparisons with Uno Chiyo and other female writers of narrative works at that time, will also be looked at.
著者
坪井 秀人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.22-33, 1990-04-10

前回にひき続き伊藤比呂美『テリトリー論1』('87)について以下の二点を中心に考察した。第一は詩集中ほどに配された「コヨーテ」「悪いおっぱい」他に見られる母系世界とプレ農耕的な始原のイメージについて。「娘」に仮託されたそのカオスへの志向を、制度が刷り込んだ<起源>を相対化するものと捉えた。第二は引用の導入を契機に獲得したミニマリズムの方法について。そこでの言葉の意味のずらし・変容による論理の自由さがモラルからの自由と一体のものになっていることを示した。
著者
坪井 秀人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-31, 2000

時代錯誤的な天皇在位十周年「国民祭典」が挙行される現在、<日本国民>の空疎な主体化は空疎な象徴システムによって末期的に進行している。こうした空疎な象徴性と、現在の大学改革における名と実との記号的関係の空疎さは奇妙に呼応してしまう。ちょうど二十世紀のスパンと重なる<国文学>を批判的に総括しておくべき時は、今を措いてないだろう。文献学/文芸学/歴史社会学派に通底する国民文学的な志向と、敗戦の日を挟んだその連続と断続の諸相について考察することで、その総括への通路を拓いてみたい。
著者
坪井 秀人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本の短詩型文学、特に和歌が西欧語に翻訳され、その翻訳テクスト歌曲として作曲された過程をドイツ語・東欧諸語・フランス語の翻訳テクストによる歌曲作品を対象に調査し、20世紀初頭、1930年代まで独墺仏および東欧・北欧地域の作曲家による歌曲作品のリストを作成し、その波及の実態を考察した。資料調査は日本国内の図書館、海外ではウィーンのオーストリア国立図書館、ベルリン州立図書館およびプラハのチェコ国立図書館などの海外の図書館と国内の大学図書館を中心に行い、その研究成果として日本語版論考を学術雑誌に発表し、そのドイツ語版を、本年中にスイスの出版社から刊行される論集に発表する予定である。
著者
坪井 秀人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.61-70, 1994

ベンヤミンのメディア論と同時代に著された大宅壮一の『文学的戦術論』と大熊信行の『文学のための経済学』『文芸の日本的形態』のメディア/文学論には、その読者論的な先駆性にもかかわらず、映画等の新しいメディアと比較される「印刷文学」の方法的劣性を前提にして、エクリチュールに対する抑圧として機能していく側面がある。一九三〇年代の文学の黙読性の問題を主軸に、大宅論における創作の「事実」と「技術」の問題、大熊の連載形式論などを検討して、右の抑圧性の所在を批判的に考察した。
著者
成田 龍一 竹内 栄美子 鈴木 勝雄 高 榮蘭 丸川 哲史 黒川 みどり 坪井 秀人 島村 輝 戸邉 秀明 渡辺 直紀 東 由美子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

高度成長文化研究会を定期的に開催し各自の成果を共有した。7月9日には、研究代表者・成田龍一と研究分担者・坪井秀人が、1960年前後の世相と社会運動をめぐって問題提起をした。また、2018年3月23日に『思想』「<世界史>をいかに語るか」(同年3月号)をとりあげ合評会をおこなった(WINCとの共催)。こうした研究活動の成果は、アメリカの研究者との研究集会によって還元した。6月9日~12日まで、UCLAでの国際ワークショップ「トランスパシフィック ワークショップ」に、成田、研究分担者・渡辺直紀、同・高榮蘭、岩崎稔、鳥羽耕史、坪井が参加、報告した。また、成田と岩崎、坪井は8月30日~9月3日まで、EAJS(ヨーロッパ日本学会)リスボン大会に参加し、報告し議論した。また、9月21日~23日、韓国・ソウルに国際シンポジウムに参加、成田、渡辺、坪井、岩崎、高、および、研究分担者・島村輝、同・竹内栄美子が報告した。10月25日~28日まで、アメリカ合衆国でおこなわれた国際シンポジウムに、成田と岩崎が参加し報告・討議をおこなった。2018年3月2日~4日には、国際日本文化研究センターが主宰する国際シンポジウム「戦後文化再考」で成田が報告したほか、島村、高、研究分担者・戸邉秀明が参加した。そのほか、成田は、琉球大学で開かれた戦争社会学会 4月22-24日)で報告したほか、日本社会文学会(10月4日、5日)で、井上ひさしについて報告をおこない、成果を還元した。12月17日には、シンポジウム「ジェンダー史が拓く歴史教育」(奈良女子大学)で報告した。また、各自が出版活動をおこない、随時、成果を公表している。高度成長の思想史を考察し、歴史学、文学史の領域で成果を着実に公表している。文献史料とあわせ、本研究では重要な核となる大衆文化にかかわる資料も、DVDをはじめ順調に収集され前進している。
著者
小松 史生子 坪井 秀人 古川 裕佳 山口 俊雄 一柳 廣孝 小泉 晋一 光石 亜由美
出版者
金城学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

1920~30年代の日本の言説状況において、<異常>という概念の知識が、好奇心と探求心をもって一般大衆に広まっていった経緯を、多様な一次資料の収集と復刻作業で確認することができた。論文の単行本化、通俗心理学雑誌の掘り起し、異常心理を扱った探偵小説同人誌の復刻などといった成果が得られた。また、学際的なシンポジウムも三回開催することができた。
著者
伊豫谷 登士翁 平田 由美 西川 裕子 成田 龍一 坪井 秀人 美馬 達哉 イ ヨンスク 姫岡 とし子 坂元 ひろ子 足立 真理子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

プロジェクトの目的は、ジェンダー研究の提起してきた課題をグローバリゼーション研究がどのように受け止めることができるのか、二つのG研究(ジェンダー研究とグローバリゼーション研究)の接点から現代という時代を読み解く課題をいかに発見するか、という点にあった。こうした課題への接近方法として、プロジェクトでは、移動する女性に焦点を当ててきた。それは、1)人の移動にかかわる研究領域が二つの研究領域を連接する接点に位置すること、2)二つのG研究が、国家の領域性と一体化してきた近代的な知の枠組に対する挑戦でもあり、定住あるいは居場所と対比した移動はそのことを明らかにするテーマのひとつであること、にある。プロジェクトでは、これまでの移民研究の方法的な再検討の作業から始め、民博地域企画交流センターとの共催で開催したシンポジウム「移動から場所を問う」は、その研究成果である。ここでは、人の移動にかかわる隣接領域の研究者を中心として、移動から場所を捉え返すという問題提起に対して、海外からの報告者9名を含めた11名の参加者を得た。移民研究の再検討を手がかりとして、移動のジェンダー化という課題を理論的に明らかにするとともに、人文科学と社会科学との対話を通じて、二つのG研究が提起する問題を模索することにした。<女性、移動、かたり>を掲げたワークショップは、韓国の世宗大学の朴裕河、アメリカのコーネル大学のブレット・ド・バリー両氏の参加によって、海外研究者との交流を進め、その成果の一部をオーストラリア国立大学、コーネル大学において報告した。これらワークショップを通じて、1)グローバリゼーション研究が新しい局面に入っており、2)再生産のグローバル化におけるジェンダーの課題として、ジェンダー研究の成果を踏まえた女性移民研究が要請されており、3)二つのG研究を含めた研究領域の間での対話の必要性が再認識された。
著者
坪井 秀人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.30-39, 2003-11-10

一九四五年八月一五日、天皇の玉音放送によってアジア太平洋戦争は敗戦を迎えたが、終戦の詔勅の意味を理解した聴き手は稀であり、雑音の中、天皇の声もうまく聞きとれなかった。このような空虚さのゆえにその声はアウラを身にまとい、国体護持を図る大きな歴史の中に敗戦の個別の経験を回収すべく機能した。本稿は高村光太郎の戦争詩における戦時と敗戦に対する姿勢を検討することで、このような〈経験の歴史化〉の機構を相対化しようと試みたものである。
著者
坪井 秀人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

戦時期および敗戦期に刊行された少年雑誌、朝日新聞社刊行の『週刊少国民』および日本少国民文化協會が刊行した『少国民文化』、さらに朝日新聞社の関連する雑誌『アサヒグラフ』その他のグラフ雑誌や『科学朝日』など戦時期の関連雑誌を収集し、本研究の主たる対象である『週刊少国民』については戦時期までの大部分は収集を終え、戦後期についても収集や調査を行い、全国的にも完備されていない同誌の資料整備と調査を行った。また同誌が後継した『コドモアサヒ』及びその戦後のその後継誌『こども朝日』についても調査を行った。『週刊少国民』の戦時期の収集分すべての号について内容目次のデータベースを作成し、グラビア記事を中心に(一部は全頁)スキャニング作業によってデータファイル化した。この資料調査とデータベース化によって『週刊少国民』とそれに関連する戦時期の少年雑誌およびグラフ雑誌の性格を位置づけるとともに、グラビア記事の写真表現と文学者らによる文学表現とが緊密に相関し、子どもの読者に対してどのようにプロパガンダとして機能したのか、あるいは戦時期の戦局に対してどのような葛藤を生じていたのかを分析した。これらの作業と平行して、戦時期の少国民文化、特に少年少女の歌謡文化や綴方等に関する分析を行った。以上の研究の成果の一部は単著『戦争の記憶をさかのぼる』(筑摩書房)に組み込まれた(同書は第14回「やまなし文学賞」を受賞した)。また、本年度(2005年8-9月)ウィーン大学で開催されたEuropean Association for Japanese Studies(ヨーロッパ日本学会)の大会でもパネル発表を行い、「Structuring Desire through Poetry and Photographs in Shukan shokokumin」と題してその成果を報告した。