著者
大橋 恵 山口 勧
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.71-81, 2005 (Released:2005-08-26)
参考文献数
30

日本人には自分を「ふつう」よりも「ふつう」であると知覚する傾向がある(Ohashi & Yamaguchi, 2004)。このように自分の「ふつうさ」を過大視することから,日本では人を形容する言葉としての「ふつう」に望ましい意味が付与されていると考えられる。本研究は,「ふつうであること」は好意及び望ましい特性と結びついてとらえられているという仮説を立てた。大学生150名及び社会人61名にある一定の条件にあった人物を想起させ,その印象を測定する方法で,「ふつうの人」は,「ふつうではない人」よりも好かれていると知覚されていることを示した。さらに,「ふつうの人」の印象は「良い意味でふつうの人」の印象に近く,「ふつうではない人」の印象は「悪い意味でふつうではない人」に近いか(大学生)「良い意味でふつうではない人」よりも悪かった(社会人)。固有文化心理学の立場から理論的な考察を行った。
著者
森尾 博昭 山口 勧
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.120-132, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
45
被引用文献数
1 2

自尊心と様々な情動や行動,認知との関連性は従来,その高低を中心として議論されてきたが,その他の属性を検討することにより,より包括的にその影響を検討することができる。本研究は,自己評価が外部からの情報なしに,内発的に揺れ動く時,その変動の程度を『自己概念の力動性』と定義し,この力動性が自尊心と様々な情動や行動,認知の関連性の理解に重要な役割を果たす,と提唱する。本研究では,力動性を測定するための手続きとしてマウス・パラダイムと呼ばれる手法を用いた。大学生56名を対象とした準実験の結果,ローゼンバーグの尺度で測られた自尊心得点が,ナルシシズム傾向へと与える影響に対し,自己概念の力動性が調節変数として働くことが実証された。高い自尊心はナルシシズム傾向へと結びつくのは,自己概念の力動性が高い場合,すなわち内在的に自己評価が不安定な場合のみであった。自己概念の力動性が低い場合,すなわち自己評価が内在的に安定している場合は,高い自尊心はナルシシズム傾向に影響を及ぼさなかった。本研究の結果は,自尊心の関連性を考慮する場合に,自己概念の力動性という動的な性質を考慮することが重要であることを示している。
著者
山口 勧
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-8, 1980-10-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

The present study manipulated fear-arousal (fear, non-fear) and anonymity (high, low) in a 2×2 factorial design. From the theory of deindividuation (Zimbardo, 1969), the two varlables were expected to induce an internal state of deindividuation, and thereby disinhibit aggressive behavior.Fifty-seven male undergraduates were randomly assigned to each of the four experimental groups. The subjects were asked either to take a pill which had side-effects (fear condition), or to take coffee (non-fear condition). In addition, the subjects in the low anonymity condition were asked their name and about their personal backgrounds, and they were always called by name during the experiment. They were also given a name tag to wear. In the high anonymity condition, subjects were not asked their name nor anything about their personal backgrounds. Instead, they were given a white robe to wear to decrease individuality.The subjects were then given an opportunity to deliver electric shocks to another subject (confederate) through a Buss-type aggression machine. Both the intensity and duration of the shocks were recorded during the administration of aggression. Deilldividuation was measured on a postsession questlonnaire that assesed the subjects' memory of their own aggressive behavior.Prior to statistical treatment, two orthogonal variates, direct aggression and indirect aggression, were identified by a principal component analysis of the aggression data. The effects of fear arousal and anonymity manipulation upon the variates were as follows: (a) fear arousal increased indirect aggresson but did not affect direct aggression; (b) anonymity manipulation affected direct aggression but did not affect indirect aggression. The questionnaire data did not confirm the mediation of the deindividuated intemal state.It may be concluded that fear arousal and anonymity manipulation affected different aspects of aggressive behavior, though it remains uncertain whether or net the effects were mediated by the internal state of deindividuation.
著者
福沢 愛 山口 勧 先崎 沙和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.117-130, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
31
被引用文献数
2

不安定な高自尊心を持つ人は,他罰的傾向などの望ましくない特性を持つことが,先行研究で示されてきた。これに対して本研究は,自尊心変動性とポジティブな機能との関連を検討した。不安定な高自尊心を持つ人は,ネガティブな出来事によって自尊心が脅威を受けた後,脅威軽減のために,遠い将来への期待を高く持つのではないかと予測した。146名のカナダ人大学生(男性40人,女性106人)を対象に7日間の日記式調査を行い,自尊心レベル,自尊心変動性,ネガティブな出来事の頻度,時期を想定しない将来への期待,5年後への期待を測定した。予測どおり,人間関係に関するネガティブな出来事を多く経験した高自尊心者の間で,自尊心変動性と,時期を特定しない将来,5年後への期待との正の関連が見られた。このことは,遠い将来への肯定的な期待が,不安定な高自尊心を持つ人にとって,ネガティブな出来事によって受けた脅威を軽減する機能を持つことを示唆している。
著者
山口 勧 村上 史朗 森尾 博昭
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

謙遜についての比較文化的研究を行い、21カ国の国民を対象にした調査及び実験的な研究により、謙遜が文化に共通した価値であることを確認した。より具体的には、謙遜の目的が低い自己評価の提示ではなく、謙虚であることを示すことにあることが、確認された。さらに、一方では、実験研究により、謙遜の程度や仕方には、文化差があることを示す結果が得られた。同じように謙遜しているといっても、文化により、その謙遜が意味する自己卑下の程度が異なっていることがわかった。
著者
村本 由紀子 山口 勧
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.65-75, 1997-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
25
被引用文献数
24 26

本研究は, 日本人の帰属における自己卑下・集団奉仕傾向の共存を実証することを目的に行われた。検証された仮説は以下の通り。(1) 集団の中の個人は, 自らの遂行については自己卑下的帰属を行い, 内集団の遂行については集団奉仕的帰属を行う傾向が見られる; (2) 仮説 (1) の傾向は内集団の他者に好印象を与えるための自己呈示戦術と考えられるため, 内集団成員の前で公に帰属を表明するときに, より顕著に現われる。成功状況を扱った実験1・失敗状況を扱った実験2の結果, いずれも, 仮説 (1) の通り, 帰属における自己卑下と集団奉仕傾向が実証された。この傾向は集団内の他者の自尊心への配慮の表れであると同時に, 集団を単位とした間接的な自己高揚の方策として捉えることができる。また, 仮説 (2) については2つの実験の結果は一貫していなかったが, いずれの結果も, 集団奉仕的帰属が, 単なる内集団他者への自己呈示戦術ではなく, より内面化された傾向であることを示唆するものであった。
著者
山口 勧 森尾 博昭 八木 保樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

自尊心の国際比較では、一部において、日本人およびアジア人の自尊心は低く、アジアにおいては自尊心は重要でないことが主張されていた。これに対して、本研究成果は、日本人にとっても自尊心は欧米と同じような意味をもっていて重要であることを示した。さらに、自尊心の表明の際に控えめに表明することが日本では適応的であることが示された。