著者
森尾 博昭 山口 勧
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.120-132, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
45
被引用文献数
1 2

自尊心と様々な情動や行動,認知との関連性は従来,その高低を中心として議論されてきたが,その他の属性を検討することにより,より包括的にその影響を検討することができる。本研究は,自己評価が外部からの情報なしに,内発的に揺れ動く時,その変動の程度を『自己概念の力動性』と定義し,この力動性が自尊心と様々な情動や行動,認知の関連性の理解に重要な役割を果たす,と提唱する。本研究では,力動性を測定するための手続きとしてマウス・パラダイムと呼ばれる手法を用いた。大学生56名を対象とした準実験の結果,ローゼンバーグの尺度で測られた自尊心得点が,ナルシシズム傾向へと与える影響に対し,自己概念の力動性が調節変数として働くことが実証された。高い自尊心はナルシシズム傾向へと結びつくのは,自己概念の力動性が高い場合,すなわち内在的に自己評価が不安定な場合のみであった。自己概念の力動性が低い場合,すなわち自己評価が内在的に安定している場合は,高い自尊心はナルシシズム傾向に影響を及ぼさなかった。本研究の結果は,自尊心の関連性を考慮する場合に,自己概念の力動性という動的な性質を考慮することが重要であることを示している。
著者
森尾 博昭
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-12, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
30
被引用文献数
1

ダイナミック社会的インパクト理論(DSIT)は個人の間の社会的影響過程の結果,集団レベルでの自己組織化現象として,ばらつきの減少である合併と空間的な収束であるクラスタリングが生じると予測する。本研究では,この予測の実証の試みとして,Latané & L’Herrou(1996)の用いたコンピュータを通じたコミュニケーション(CMC)のパラダイムを拡張し,他者からの影響を促進するような教示を行わない,より一般的な社会的影響過程のもとでもDSITの予測が成り立つかどうか検証した。実験は5週間の間行われ,参加者は週に1回,他の参加者と意見の交換を行った。個人レベルの分析では,2つの話題のうち,一つの話題で他者からの影響力が有意であった。集団レベルでは,合併は観察されなかったが有意なクラスタリングが観察された。本研究は,先行研究における制限を取り除いた上でも,CMCによる実験において,個人間の社会的影響過程が観察されること,またその結果としてクラスタリングが生じることを実証した。また電子掲示板などで見られる弱い社会的影響過程の結果,合併を伴わずにクラスタリングが生じる可能性も示唆された。
著者
三浦 麻子 森尾 博昭 折田 明子 田代 光輝
出版者
関西学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

オンラインコミュニティでの社会知醸成過程を解明するため,1990年代に多数の利用者を集めた著名なコミュニティ(ニフティサーブ)のアーカイバルデータを分析した.特に心理学フォーラムを分析対象とし,6つの会議室のログをほぼ完全に発掘することに成功した.質量両側面からの分析の結果,利用者の質的差異がコミュニティで醸成される社会知の質に影響していた可能性が示唆された.また,書き込みと応答のコミュニケーションをネットワーク分析によって視覚化したところ,ネットワーク指標に応じてコミュニケーション構造が質的に異なることが示された.フォーラム参加者の名乗りについても探索的に分析した.
著者
山口 勧 村上 史朗 森尾 博昭
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

謙遜についての比較文化的研究を行い、21カ国の国民を対象にした調査及び実験的な研究により、謙遜が文化に共通した価値であることを確認した。より具体的には、謙遜の目的が低い自己評価の提示ではなく、謙虚であることを示すことにあることが、確認された。さらに、一方では、実験研究により、謙遜の程度や仕方には、文化差があることを示す結果が得られた。同じように謙遜しているといっても、文化により、その謙遜が意味する自己卑下の程度が異なっていることがわかった。
著者
山口 勧 森尾 博昭 八木 保樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

自尊心の国際比較では、一部において、日本人およびアジア人の自尊心は低く、アジアにおいては自尊心は重要でないことが主張されていた。これに対して、本研究成果は、日本人にとっても自尊心は欧米と同じような意味をもっていて重要であることを示した。さらに、自尊心の表明の際に控えめに表明することが日本では適応的であることが示された。