著者
玉置 勝司 石垣 尚一 小川 匠 尾口 仁志 加藤 隆史 菅沼 岳史 島田 淳 貞森 紳丞 築山 能大 西川 洋二 鱒見 進一 山口 泰彦 會田 英紀 小野 高裕 近藤 尚知 塚崎 弘明 笛木 賢治 藤澤 政紀 松香 芳三 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.369-386, 2013 (Released:2013-11-14)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

難症例の1つに咬み合わせ異常感や違和感があり,その訴えに対応する客観的所見が確認できない症例に遭遇することがある.通常,咬合紙,ワックス,シリコーンなどを用いて確認はするものの,咬合接触状態に特に異常は見つからない.さらに,患者の咬合に関する執拗な訴えに対して歯科医師が患者に問題の部位を確認してもらい,患者の指示により咬合調整を行ってしまうといった患者の感覚主導型治療に陥ってしまうことがある.その結果,患者の訴えは改善しないばかりか,逆に悪化することもさえもある.そして,患者と歯科医師の信頼関係が壊れ,思わぬ方向に陥ってしまうことも珍しくない. このような患者が訴える咬合に関する違和感に対して,社団法人日本補綴歯科学会,診療ガイドライン委員会において,平成23年度「咬合感覚異常(症)」に関する診療ガイドラインの策定が検討された.診療ガイドラインの策定に際し,委員会の作成パネルによるガイドライン策定を試みたが,咬合感覚異常(症)に関する十分に質の高い論文は少なく,診療ガイドラインの作成には至らなかった.そこで,本委員会のパネルで協議した結果,「咬合感覚異常(症)」に対する日本補綴歯科学会としてのコンセンサス・ミーティングを開催して本疾患の適切な呼称の検討を行った.また事前のアンケート調査結果から,このような病態を「咬合違和感症候群(occlusal discomfort syndrome)」とした. 今回のポジションペーパーは,今後の診療ガイドラインの作成とそれに対する研究活動の方向性を示す目的で,過去の文献と咬合違和感症候群患者のこれまでの歯科治療の経過や現在の状況について実施した多施設による患者の調査結果をもとに作成された.
著者
後藤田 章人 山口 泰彦 岡田 和樹 松樹 隆光
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.93-102, 2007-02-28 (Released:2010-10-13)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

本研究の目的は, 咀嚼筋活動や顎位など管楽器演奏時の顎機能の特徴を明らかにし, 管楽器演奏により顎関節や咀嚼筋へかかる負荷を検討することである, 被験者として金管楽器奏者18名, 木管楽器奏者12名を対象に管楽器演奏時の咬筋, 側頭筋, 口輪筋, 顎二腹筋の筋電図測定, および下顎切歯点の移動距離の測定を行い, 以下の結果を得た.1.口輪筋, 顎二腹筋の筋活動量は比較的大きかったが, 咬筋, 側頭筋の活動量は最大咬みしめ時に比較すると極めて小さかった.2.音量の大小で各筋の活動量に明らかな変化はなかった.3.金管群と木管群の楽器群間では咬筋, 側頭筋, 顎二腹筋の筋活動量に明らかな差はなかったが, 金管群の方が咬筋活動量の個人間のばらつきが大きかった,4.下顎切歯点については, 木管群の方が下方への移動量が大きかったが, 移動方向の個人間のばらつきは金管群の方が大きかった.以上より, 一般的な楽器演奏では閉口筋の緊張は僅かであり, 顎関節への圧縮方向の力の負荷は少ない可能性が示唆されたが, 個人差の影響についての今後の検討が必要と考えられた.
著者
三上 紗季 山口 泰彦 斎藤 未來
出版者
一般社団法人 日本全身咬合学会
雑誌
日本全身咬合学会雑誌 (ISSN:13442007)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.16-23, 2020-11-30 (Released:2020-12-30)
参考文献数
17

側方運動を抑制する急傾斜の犬歯誘導を付与したオクルーザルアプライアンス(側方抑制スプリント)で治療した重度の睡眠時ブラキシズム(SB)症例について報告した.患者は,20 歳代女性で,歯ぎしり音を主訴に本院を受診した.SB の臨床診断のもと,当初一般的なスタビリゼーションアプライアンスを用いて治療を行ったが,睡眠時筋電図検査によるSB 評価では全くSB 波形数の低減が認められなかった.それに対し,側方抑制スプリントを適用したところ,大幅なSB 波形数の低減を示した.側方抑制スプリントの長期間の使用によっても,歯や歯周組織,顎関節,筋などに異常は認められず,良好な経過が得られた.本症例の治療経験から,オクルーザルアプライアンスの形態によってはSB が大幅に低減する場合があり得ることが示された.ただし,側方抑制スプリントがすべてのSB 症例に奏効する保証は今のところなく,睡眠時筋電図検査を用いた客観的な効果判定を行い,使用継続の適否の判断を的確に行うとともに,歯や歯周組織などに関する慎重な定期観察が必要と考えられた.
著者
由良 晋也 戸塚 靖則 大井 一浩 馬渕 亜希子 由川 哲也 出山 文子 大廣 洋一 後藤田 章人 松樹 隆光 岡田 和樹 山口 泰彦 小松 孝雪 井上 農夫男
出版者
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
雑誌
TMJ : journal of Japanese Society for Temporomandibular Joint : 日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.200-204, 2002-08-20

咬合力と関節内圧との相関関係を明らかにする目的で, クローズド・ロック症例と顎関節症状のないボランティアの咬合力と関節内圧を同時に測定したので報告する。<BR>対象は, クローズド・ロック症例4名4関節と顎関節症状のないボランティア4名4関節である。プレスケール50HタイプRを用いて咬合力を測定し, 動脈圧モニタリング用のトランスデューサーを用いて関節内圧を測定した。<BR>咬合力と関節内圧との間の相関係数は, クローズド・ロック症例とボランティアのいずれも0.7以上 (0.710~0.954), 決定係数は0.5以上 (0.504~0.910) であった。これらの結果から, 咬合力と関節内圧との関係は, 直線的な正の相関関係であることが示された。回帰係数は, 被験者により差のあることが示された (15.3~270.9)。<BR>関節内圧は咬合力の増加に伴って上昇することから, 強い噛みしめが顎関節に負荷を加える因子の一つであることが明らかとなった。
著者
三上 紗季 山口 泰彦 岡田 和樹 後藤田 章人 松田 慎平
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.121-130, 2009-02-28
参考文献数
32
被引用文献数
3

目的:歯科臨床における簡便で精度の高い睡眠時ブラキシズム(SB)の評価法の実現を目指し,我々はこれまで超小型コードレス筋電図計測システム,BMSを開発し,日中覚醒時の顎運動における測定精度や夜間睡眠時を想定した体動や装置への接触の影響の検討等を行ってきた.本研究ではBMSのSB評価装置としての実用化を図るため,実際に自宅における夜間睡眠時の咀嚼筋の活動を支障なく測定できるかどうかの検証を行った.方法:対象はブラキサー群9名,非ブラキサー群9名で,被験者の自宅にて2日間,右咬筋を対象に測定を行った.2日目のデータを解析の対象とし,最大咬みしめの20%以上の大きさで,0.25秒以上持続するバーストを抽出し,両被験者間で比較した.入眠と起床の確認には,小型睡眠センサー,アクティグラフ(A・M・I社製)を用いた.結果:すべての被験者で,自宅での装置の設定,操作が可能であり,記録されたデータでは筋活動波形の認識,解析が可能であった.稀に混入した通信エラーと考えられるスパイク状のノイズは,データ解析時に識別,除去が可能であった.ブラキサー群と非ブラキサー群の筋活動の比較では,睡眠1時間あたりのバースト数,バースト時間,バースト積分値において,ブラキサー群は非ブラキサー群と比較して有意に大きな値を示し,それぞれ前者は後者の6.3倍,3.2倍,2.5倍だった.バースト毎の持続時間の平均値は,ブラキサー群は非ブラキサー群と比較して有意に小さな値を示した.バーストRMS値,睡眠時間については両群間で有意差は認められなかった.結論:BMSを用いた測定では,ブラキサー群と非ブラキサー群の自宅における夜間睡眠時の咬筋筋活動波形の認識,解析が可能なことが示され,BMSは睡眠時の臨床的な咬筋筋活動モニターとして実用可能な装置と考えられた.
著者
山口 泰彦 久恒 泰宏 木村 朋義 小松 孝雪 内山 洋一
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1113-1120, 1995-12-01
被引用文献数
29 9

本論文は最近,咬合の診査に用いられはじめた工業用の感圧フィルムを応用したデンタルプレスケールについて検討したものである.咬合接触部位を診査する上で原理的には咬台紙を用いるのと似ているが,これの特徴は各々の咬合接触部位の接触圧が測定できることにある.したがって,顎の機能異常の診断などにその応用が期待されている.しかし,フィルムの厚さや物性によって,咬合のさせ方によっては本来の接触圧が正確に測定できない場合もあるので,本論文はその使用上の特性を明らかにし,それを踏まえて臨床で有効に使用しようとするものである.
著者
後藤田 章人 山口 泰彦 岡田 和樹 松樹 隆光
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.93-102, 2007-02-28
被引用文献数
2

本研究の目的は,咀嚼筋活動や顎位など管楽器演奏時の顎機能の特徴を明らかにし,管楽器演奏により顎関節や咀嚼筋へかかる負荷を検討することである.被験者として金管楽器奏者18名,木管楽器奏者12名を対象に管楽器演奏時の咬筋,側頭筋,口輪筋,顎二腹筋の筋電図測定,および下顎切歯点の移動距離の測定を行い,以下の結果を得た.1.口輪筋,顎二腹筋の筋活動量は比較的大きかったが,咬筋,側頭筋の活動量は最大咬みしめ時に比較すると極めて小さかった.2.音量の大小で各筋の活動量に明らかな変化はなかった.3.金管群と木管群の楽器群間では咬筋,側頭筋,顎二腹筋の筋活動量に明らかな差はなかったが,金管群の方が咬筋活動量の個人間のばらつきが大きかった.4.下顎切歯点については,木管群の方が下方への移動量が大きかったが,移動方向の個人間のばらつきは金管群の方が大きかった.以上より,一般的な楽器演奏では閉口筋の緊張は僅かであり,顎関節への圧縮方向の力の負荷は少ない可能性が示唆されたが,個人差の影響についての今後の検討が必要と考えられた.
著者
山本 智史 山口 泰彦 小松 孝雪 会田 英紀 岡田 和樹 大畑 昇
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-40, 2001-11-20
被引用文献数
2

これまで短期間で測定日を変え下顎限界運動のばらつきを調べた報告はほとんどない.そこで今回, 健常有歯顎者の短期間における経日的な下顎限界運動範囲の再現性についての検討を行った.また, 下顎運動の再現性に対し影響を及ぼす因子の一つである顎運動測定器の生体基準点の再現性についても検討した.〈方法〉被験者は26歳から31歳までの健常有歯顎者5名である.被験運動は, 矢状面内限界運動, および前頭面内限界運動とし, それぞれの運動を1日5回ずつ連続5日間計測して限界運動範囲の前後幅と左右幅を求めた.顎運動測定には, ナソヘキサグラフJM-1000(小野測器社製)を用いた.測定座標系の基準点は右オルビタと左右ポリオンとし, 運動解析点は下顎切歯点とした.各基準点および切歯点の経日的再現性を維持するため, ナソヘキサグラフの標点用ポインターの先端が適合するディンプル状の常温重合レジン製標点を作製した.基準点の標点は咬合器用フェイスボウを用いて固定した.標点の位置の再現性を確認するため, 咬合器上および被験者1名の日内, および被験者5名の日間の標点座標値を比較した. <結果>1.切歯点座標値の日間の標準偏差値は0.48〜1.49mm, 基準平面に関する標点間距離の日間の標準偏差値は0.31〜1.55mmと各被験者とも大きかった.しかし, 咬合器上の切歯点では0.19〜0.42mm, 被験者1名の切歯点の日内では0.23〜0.38mmと比較的小さかった.そのため, 標点座標の日間のばらつきには, 測定日毎の各標点の再装着時における位置のずれの影響が大きいものと考えられた. 2.下顎限界運動範囲の前後幅と左右幅に関して日内の施行順位間に有意差がみられたのは1名の左右幅のみであった.一方, 日間に関しては1名の前後幅, 4名の左右幅において有意差がみられた.日内と日間の標準偏差を比較すると, 日内より日間の方が大きい傾向を示した.しかし, その値は日間でも0.12〜0.62mmであり, 各標点に関する日間の標準偏差と比較して小さかった. 以上より, 健常有歯顎者における下顎限界運動範囲の前後幅, 左右幅には, 短期間の日間で変動が認められる場合があることが示された.しかし, 同時に, その変動は比較的小さいことも明らかになった.
著者
岡田 和樹 山口 泰彦 小松 孝雪 松樹 隆光 後藤田 章人 三好 貴之
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.107-115, 2005-02-28

本研究では, マイオモニター^[○!R]に温罨法同様の咀嚼筋血流改善効果があるか否かを明らかにすることを目的に, 温罨法およびマイオモニター施行前後の咬筋組織内ヘモグロビン量, 酸素飽和度(StO_2)の変動を測定し, 比較検討した.被験者は顎口腔系に異常が認められない健常者で, 温罨法群10名, マイオモニター群10名とした.ヘモグロビン量とStO_2の測定には近赤外分光血流計を用いた.測定項目は総ヘモグロビン量(THb), オキシヘモグロビン量(OXHb), デオキシヘモグロビン量(deOXHb), 酸素飽和度(StO_2)とし, 同時に脈拍(HR)も測定した.温罨法群では, 温め後THb, OXHb, StO_2に有意な増加が認められたのに対し, マイオモニター群ではTHb, OXHb, deOXHb, StO_2, HRすべてにおいてマイオモニター後に有意な増加は認められなかった.また, 温罨法群とマイオモニター群の群間比較でも, 温罨法群のTHb, OXHb, StO_2が, マイオモニター群よりも有意に大きな増加率を示した.一方, deOXHbとHRに有意差は認められなかった.以上から, 咬筋の血流改善の効果に関しては, マイオモニターより温罨法の方が有効であると考えられた.