著者
山口 裕文 中尾 佐助
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.32-45, 1975-02-28
被引用文献数
2

栽培植物の近縁野生種や同伴雑草(companion weeds)は作物の進化に重要な役割を果している(HARLAN1965)。雑草系統には品種改良の遺伝子源として重要なものが含まれる。燕麦の育種の基礎的研究として,日本の雑草燕麦をMALZEW(1930)のsystemに従がって分類地理学的に検討した。また,雑草燕麦の適応と日本への渡来について考察を加えた。 1970〜1971年の筆者の蒐集標本と京都大学,東京大学,国立科学博物館所蔵の措葉標本について調査したところ,3種(11亜種);Avena strigosa Schreb. subsp.barbata Thell., A. fatua L. sens. ampl., A. sterilis L.が雑草と認められた。A.fatua L.は7亜種:subsp. septentrionalis, subsp. nodipilosa, subsp. macrantha, subsp. cultiformis, subsp. praegravis から成り,最も多様であった。その内容は25変種,6亜変種,1品種で,このうち3変種(var. pilosiformis, var. hyugaensis,var. nipponica), 4亜変種,(subvar.pumila,subvar. Zine, Subvar. maniformis, subvar. pseudonana),1品種(forma subcontracta)を新分類群として記載した。
著者
道下 雄大 梅本 信也 山口 裕文
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.81-89, 2009-05-30
被引用文献数
1

観賞利用を主な目的とした植物の人為的移動が及ぼす生物多様性への影響を考察するために、長崎県、和歌山県および静岡県の民家庭園にみられるRDB掲載植物の種類と常在度を調べ、導入経緯の聞き取りを分析した。環境庁または県のRDB掲載植物は、3県の民家庭園に25科53種みられ、82%の民家庭園に少なくとも1種確認された。聞き取りでは、自生地よりの採集が89例、親戚や知人等よりの贈呈が45例、購入による導入が12例あり、この傾向には地域による違いはなく、調査した民家庭園では採集による導入が多い傾向にあった。集落ごとにみられるRDB掲載植物の種数と多様度は、漁業を主とする海岸の集落では低く、農林業を主とする中山間地の集落で高い傾向にあった。民家庭園のRDB掲載植物には地域外からの導入や園芸品種化した植物があり、これらは野生化や近隣の自生個体との自然交雑をとおして生物多様性の劣化要因となると考えられた。