著者
竹下 浩 奥秋 清次 中村 瑞穂 山口 裕幸
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.423-436, 2016
被引用文献数
4

近年日本の製造業で生産技術者の育成が急務となっており, 高等教育でも「ものづくりPBL」の取り組みが増加している。しかし実際のチームワーク形成過程は解明されておらず, 効果的な授業評価法を確立するために, その解明が求められている。そこで本研究は, ものづくり型PBLのチームワーク形成プロセスを説明・予測できる理論モデルを提示する。6校13名からデータを収集, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した結果, 42の概念が生成された。ものづくり型PBLにおけるチームワークの形成プロセスは, ものづくり・チーム活動・スキル蓄積という3つの過程で構成されており, 主な特徴は以下の3点である。(1) 製作段階ごとにスキルが試される結果, ものづくり過程はチームワーク形成過程に強制力を有していた。(2) チーム活動課程は, サブチーム(製作物の専攻科別担当チーム)の形成から発達し, 協業あるいは孤島化へと至る。(3) 成員はものづくりを目的としてチーム活動する一方, チーム活動の派生物としてスキルを習得していく。考察では, 先行研究では説明できない点を議論する。さらに, 高等教育や企業の人材育成への示唆を提示する。
著者
白坂 憲章 山口 裕加 吉岡 早香 福田 泰久 寺下 隆夫
出版者
日本きのこ学会
雑誌
日本きのこ学会誌 : mushroom science and biotechnology (ISSN:13487388)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.147-153, 2012-10-31
参考文献数
14

トキイロヒラタケ子実体よりピンク色と黄色の色素を分離した.ピンクの色素は,硫安塩析,DEAEトヨパール,トヨパールHW55によるクロマトグラフィーにより色素タンパク質として精製され,分子量はSDS-PAGEおよびHPLC-GPCによって,それぞれ24.5kDa,30kDaと推定された.本色素タンパクは267,348,493nmに吸収極大を示し,28℃およびpH4から10で安定であった.一方,黄色色素からはSephadex G-25を用いたゲルろ過により3つの色素が精製され,分子量はHPLC-GPCにより10.8kDa,5.3kDa,4.4kDaであると推定された.これらの色素は可視領域に特徴的な吸収極大が見られず,水のみに溶解性を示した.本色素はH_2O_2,KMnO_4,NaOClといった強力な酸化剤で脱色され,Fe^<3+>をFe^<2+>へと還元した.これらの性質は,メラニン色素の性質によく合致した.
著者
道下 雄大 山口 裕文
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科学術報告 (ISSN:18816789)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.13-37, 2006
被引用文献数
1

民家庭園など人の身近な場には,遺伝資源または文化遺産として重要なさまざまな維管束植物が生育している。これらの植物の多様性を体系的に知るために,2005年の春と秋に長崎県平戸市の2集落と松浦市の2集落において庭園に生育する維管束植物を調査し,その利用法と導入経緯を聞き取り調査した。確認された161科868種の植物について,確認した戸数,常在度,鉢植えの実態(鉢比率),利用法をまとめた。有用植物では,ナンテン,イヌマキ,ヒラドツツジ,ツワブキ,ツバキ,マンリョウ,シンビジュームの順で常在度が高く,雑草ではカタバミ,オニタビラコ,ムラサキカタバミ,メヒシバ,ツユクサ,キツネノマゴ,コミカンソウ,ツメクサの順に常在度が高かった。651種の植物は,観賞用,垣根,食用,薬用,儀礼用,工芸用などにされていた。有用植物の約8割は観賞用で,花や葉や果実が観賞対象とされ,盆栽や忍玉としても利用されていた。国外産多肉植物は鉢植えとされる傾向が高く,シンビジューム,フチベンベンケイ,クンシラン,クジャクサボテンの順で鉢比率が高かった。40科58種では地方名を記録した。調査対象地の民家庭園の植物は,観賞植物を中心として高い多様性を示した。
著者
三沢 良 佐相 邦英 山口 裕幸
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.219-232, 2009
被引用文献数
1

The purpose of this study was to develop the Teamwork Measure for Nursing Teams and to examine its reliability and validity. Based on the theoretical model of teamwork components proposed by Dickinson and McIntyre (1997), initial pools of items to measure three components (team orientation, team leadership, and team process) were generated. A questionnaire was administered to two different samples of nurses (study 1:N=568, study 2:N=650). The results of factor analyses revealed that every component of teamwork had subcomponents. Team orientation consisted of two-factors ("orientation for completing tasks" and "orientation for interpersonal relations"). Team leadership also consisted of two-factors ("job directions" and "concern for interpersonal relations"). The team process consisted of four-factors ("monitoring and coordination", "clarification of task", "information sharing", and "mutual feedback"), Scores on these subscales revealed acceptable levels of internal consistency (Cronbach's alpha). Teamwork components positively related to group identification and job satisfaction, and negatively related to incident rates. These results confirmed the validity of the scales. Finally, potential applications of this teamwork measure and the implications for team management practice are discussed.
著者
橘 雅明 伊藤 一幸 渡邊 寛明 中山 壮一 山口 裕文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.175-184, 2008 (Released:2009-01-24)
参考文献数
29
被引用文献数
3 2

東北地域の転作コムギ畑で問題となっているハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris R.Br.),カミツレモドキ(Anthemis cotula L.)および侵入が危惧されるイヌカミツレ(Matricaria inodora L.)の防除法を策定するために,出芽を中心にこれらの生活史を調査し,除草剤と中耕による管理について検討した。カミツレモドキは,青森県の秋播きコムギ畑では,主に秋季に出芽する越冬個体が雑草害の原因となっていた。カミツレモドキは春季と秋季の年2回種子より出芽していた。コムギ畑に発生したハルザキヤマガラシ,カミツレモドキおよびイヌカミツレの帰化雑草3草種に対しては,播種直後のリニュロン水和剤土壌処理,秋季の出芽終期にあたる11月上旬のアイオキシニル乳剤処理,5月上旬の条間中耕またはアイオキシニル乳剤処理に高い除草効果がみられた。上記の3つの除草管理時期のうち,いずれか2つの時期に適切な除草管理を実施すれば各草種の収穫期乾物重は無除草区の4%以下となり,帰化雑草3草種のいずれでも防除できる。カミツレモドキとイヌカミツレについてはチフェンスルフロンメチル水和剤による茎葉処理でも高い除草効果がみられた。
著者
中山 祐一郎 梅本 信也 山口 裕文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.205-217, 1999-10-29 (Released:2009-12-17)
参考文献数
33
被引用文献数
16 20

温帯東アジアのヒエ属 (Echinochloa) 植物の形態的特徴の変異は非常に大きく, ときに分類群の同定が困難である。そこで, 中国雲貴高原を中心とした外国産および日本産のヒエ属植物の16の分類群または型-E. obtusiflora (2倍体), E. crus-pavonis (2倍体), E. stagnina (4倍体と6倍体), タイヌビエの群 (4倍体: タイヌビエのC型とF型, 非脱粒性タイヌビエ, 栽培型タイヌビエおよび E. phyllopogon), イヌビエの群 (6倍体: イヌビエ, ヒメタイヌビエ, ヒメイヌビエ, ヒエ, リコウビエおよび E. oryzoides) およびコヒメビエの群 (6倍体: コヒメビエおよびインドビエ)-のアイソザイムの変異を分析した。酵素6PGD, AATおよびADHにおいて, 4倍体および6倍体の種は, それぞれの倍数性に応じたバンドの重複を示した。イヌビエの群 (6倍体) とコヒメビエの群 (6倍体) では, アイソザイムパターンは異なっていた。タイヌビエの群 (4倍体) とイヌビエの群 (6倍体) は, 小穂の形態では識別が困難であるが, 群内のアイソザイムの多型はわずかしかみられず, アイソザイムパターンによって倍数性の異なる2群が識別できた。数種の酵素を用いてアイソザイム分析すれば, ヒエ属植物の倍数性群が判別できるので, 分類群の同定が容易となる。
著者
山口 裕
出版者
一般社団法人 軽金属学会
雑誌
軽金属 (ISSN:04515994)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.204-215, 2009-04-30 (Released:2009-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
8 6
著者
山口 裕
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.65-73, 1964-03-15 (Released:2018-11-30)
著者
有吉 美恵 池田 浩 縄田 健悟 山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.53-61, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
20

従来の研究では,定型業務はワークモチベーションを抑制することが明らかにされてきたが,どのような心理プロセスによってワークモチベーションを抑制するのかについてはさほど注目されてこなかった。本研究では,定型業務のもとでワークモチベーションを抑制する心理プロセスを明らかにすることを目的とした。9企業と1大学で働くオフィスワーカー261名から質問紙調査への回答を得た。質問内容は,職務における定型業務度,職務意義(他者志向,自己志向,報酬志向),ワークモチベーションに関するものであった。調査の結果,定型業務がワークモチベーションを抑制する関係にあることと,定型業務では顧客と社会への貢献感(他者志向)と,自己の成長,達成感(自己志向)が感じられにくいことでワークモチベーションが抑制されることが示された。一方,社会的,経済的な報酬(報酬志向)は影響しなかった。このことは,定型業務のワークモチベーションをマネジメントするうえで単に報酬を高めれば良いという訳ではなく,他者や自己に関わる意義を職務に感じさせる重要性について示唆を与えている。
著者
有吉 美恵 池田 浩 縄田 健悟 山口 裕幸
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-14, 2018 (Released:2019-11-14)
被引用文献数
1

Conventional work motivation theories have focused on tasks that require a certain level of performance and achievement. However, it is not clear what kind of psychological process would improve work motivation for performing jobs in which such performances and achievements are not presupposed. By focusing on social contribution, this study aimed to clarify the psychological process to improve work motivation of jobs in which do not require objective or concrete performances and achievements. A survey was conducted on 179 operators from 6 call centers. The questionnaire comprised items on sense of social contribution, feedback from supervisor, work motivation, and work behavior with consideration for the customer. The results showed that the sense of social contribution to customers and to organization mediated the association between positive feedback from supervisors and work motivation. However, negative feedback from supervisors did not have a significant relationship with sense of social contribution and work motivation. These results suggest the importance of enhancing the experience of a sense of contribution to others through the provision of positive feedback while managing jobs in which do not require objective or concrete performances and achievements.
著者
田原 直美 三沢 良 山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.74-86, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
20

本研究は,病棟クラークの導入が看護師の業務の安全性と円滑さに及ぼす影響を,看護師の行動的及び心理的側面から検討した。K大学病院のA病棟に2名の病棟クラークを約8ヶ月間試験的に導入し,看護師の,業務中断経験,業務中のトラブル経験,ストレッサー,及びチームワークについて,導入前後の変化を追跡調査した。分析の結果,クラーク導入後のポジティブな変化として,看護師の業務中断経験及びトラブル経験の減少が確認されたが,ネガティブな変化として,患者に対応の遅れを指摘される経験の増加と看護師のチームワークプロセス認知の悪化が認められた。クラークの導入は看護師の業務負担軽減や安全性確保に有効であるが,そのためには,一定の時間とクラークと看護師の連携が不可欠であることが示唆された。
著者
山口 裕
出版者
福岡工業大学FD推進機構
雑誌
FD Annual Report (ISSN:2185890X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.22-31, 2022-07-20
著者
阿部 智和 山口 裕之 大原 亨
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
Discussion Paper, Series B
巻号頁・発行日
vol.179, pp.1-23, 2020-03

セイコーマートは大手コンビニエンス・チェーンの攻勢にさらされながらも、北海道において最多の店舗数を保持し続けている。コンビニエンス・ストアの合併などが進んだ現在では、地方企業がトップ・シェアを有する都道府県は北海道のみである。コンビニエンス・ストア業界内で激しい競争が展開されていくなか、セイコーマートはいかにして北海道市場における競争優位を確立し、維持できたのだろうか。本稿では、創業から2000年頃までの同社の出店戦略、物流システム、情報システム、商品力強化および販売活動に関する動向を整理することで、同社の競争優位の背景を探っていく。
著者
山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.77-84, 2005 (Released:2006-04-29)
参考文献数
38

本稿では,公共事業の実施を巡る社会的合意形成の過程における葛藤のマネジメント方略について,全体連合の形成メカニズムを参照しながら検討を試みた。全体連合は,もともと独立した存在で互いに競争関係にある3者以上の当事者たちが,互いに譲歩したり妥協したりして,皆全員で一致して協同に合意する行為であり,より円滑な社会的合意形成方略の検討に有益な示唆をもたらすことが期待される。連合形成に関する実証研究の知見をレビューして,全体連合への動機づけを高めるには,当事者が自己利益だけでなく全体の利益までも考慮する視野の拡大が効果的であることを確認した。その一方で,当事者たちの協同への動機づけが高まり全体連合の提案頻度は高まっても,報酬分配交渉を経ることによって,実際に形成に至る頻度は減少してしまうことも確認された。これらの知見に基づき,人間は,協同を選択する際にも,より大きな自己利益を追求する動機づけを絶えず持ち続けることを認識することの重要性について議論し,インプリケーションの提示を行った。