著者
望月 宏美 山口 隆子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.135-141, 2021-03-31 (Released:2021-04-23)
参考文献数
15

ツマグロヒョウモンの著しい生息域の拡大は,地球温暖化の影響として広く一般に知られている.一方,近年,本種の食草であるスミレ類(パンジー等)の増加も一要因ではないかと言われているが,実際に双方の関係性に関する研究論文は少ない.本研究では,ツマグロヒョウモンの北上を,冬季の最低気温の上昇とパンジーの栽培地域の拡大という観点から複合的に考察した.その結果,1990年代初頭のガーデニングブームを契機に,パンジーの栽培地域は顕著に拡大した事が分かり,全国的な冬季の最低気温の上昇と共に,ツマグロヒョウモンの北上を助長した可能性が示唆された.
著者
山口 隆子 横山 仁
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, 2004-10-01
参考文献数
1
被引用文献数
1
著者
山口 隆子 Takako YAMAGUCHI 東京都環境科学研究所基盤研究部 The Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmental Protection
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 = Tenki (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.265-275, 2006-04-30
参考文献数
44
被引用文献数
1

日本における百葉箱の歴史と現状について調査した結果,以下のことが明らかになった.19世紀中頃のイギリスで開発が始まった百葉箱は,1874年に日本へ導入され,1875年からの観測に使用したものが最古の記録であり,1886年までに「百葉箱」と命名されていた.百葉箱の読み方は,「ひゃくようそう」と「ひゃくようばこ」が混在しているが,小学校理科教科書に関しては,1969年以降「ひゃくようばこ」もしくは振り仮名なしで統一されていた.百葉箱の現状であるが,現在,気象庁の観測では百葉箱は使用されておらず,教育現場においては,1953年の理科教育振興法公布以前から設置されている.また,その設置状況は,東京都のヒートアイランド観測を行っている106校の東京23区内の小学校に関して,設置地表面状態に関してはほとんどの学校が気象庁の設置方法に準拠しているものの,日当たりに関しては37%,風通しに関しては43%,扉の向きに関しては37%の学校しか準拠しておらず,設置基準全ての項目を満たしている学校は106校中4校のみであった.さらに,理科の授業における使用状況は32校中24校で使用しているものの,観測を実施している学校は2校のみであった.
著者
山口 隆子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3-4, pp.75-86, 2022-03-31 (Released:2022-04-22)
参考文献数
138

芝棟に関する既往研究を整理し,現地調査により,芝棟の現存状況と芝棟植物の分布特性が明らかとなった.芝棟は,岩手・青森県を中心とした東日本に約600棟が現存しており,そのうちの9割は岩手県に現存している.岩手・青森県を除く都府県では,芝棟の多くが文化財等に指定され,保存されていた.しかし,文化財等に指定されている建造物であっても,芝棟を維持できなくなっているものもあった.芝棟植物の分布については,シバは芝棟が分布する全地域に見られ,東北地方太平洋側と内陸山間部では,ユリ・カンゾウ・ネギ・ニラが,関東平野部ではイチハツが,関東山地周辺ではイワヒバが多く見られた.
著者
山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2020 (Released:2020-03-30)

伊豆諸島の島々では、島の上空だけが雲に覆われることがある。この現象を「島曇り」という。島曇りが発生すると、視界不良により航空機や船の発着が困難になる。伊豆諸島の島曇りに関する研究は、気象庁による報告書が複数あるものの、論文としてまとめられたものはない。そこで、本研究では、長期的な観測のデータを用いて、島における霧の発生条件を気候学的な推定を行った。 対象地域は、伊豆諸島のうち測候所が置かれており、欠測の少ない八丈島と伊豆大島とした。対象期間は目視による雲の観測が行われていた、1989年4月から2009年9月までである。島で広がる霧には、「島曇り」のみならず、海から侵入する「海霧」もある。しかし、島民は両者を区別しておらず、測候所での観測結果はいずれも「霧」となる。本研究では、島曇りと海霧を区別することが困難であることを考慮して、新たに「島霧」として定義を行った。 八丈島の島霧の発生頻度は、1年あたり約20.7日であり、大島の2.5倍弱に達した。このように、八丈島は大島と比べ、島霧が生じやすい。月別発生頻度は、両島ともに、5〜9月に多く、7月にピークを迎えた。一方、秋から冬にかけては、島霧の発生頻度が非常に小さくなる。6月から8月にかけては、気温が海面水温を上回る時期が現われるが、この時期と島霧が多発する時期が一致した。この点を各島霧日について、調べたところ、「気温-海面水温」の値が-3℃以上になると、島霧が急増することが明らかになった。 島霧は6,7月に多く、梅雨前線の影響が窺われたため、前線の位置を調べた。島霧時の前線の緯度は最多が北緯35度、次に37.5度であった。八丈島が北緯約33度であるので、これらの前線は、八丈島の北側かつ、近傍にあるといえる。したがって、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みやすい状況にある。一方、前線が32.5度以南、すなわち八丈島の南側に位置する場合、島霧の発生数は極端に少なくなる。これは、風向が北寄りとなり、陸地由来の乾燥大気が流入しやすくなるからだと思われる。 黒潮が島の南側を流れる場合、南方から湿った大気の移流により、島霧が生じていた。ただし、海面水温が低いため、他の条件が悪くても、大気が安定し、島霧となる事例もみられた。黒潮が島の北側を流れる場合、南寄りの風により気温が上昇し、海面水温を上回る際に、島霧の発生が多くなった。黒潮の影響により、北寄りの風の際にも、高温・多湿となることもあった。このように、黒潮の流路によりも、移流の効果が、島霧に影響を及ぼしていた。 島霧の発生条件の推定の結果、以下の条件が揃う際に、島霧が生じやすいことが明らかになった。①気温と海面水温の差が-3℃以上になること②湿度が85%を超えること③南西の風が吹くこと④850hPa以下の下層大気に安定層があること⑤日本列島上に停滞前線があること、もしくは南高北低の夏型気圧配置となること
著者
山口 隆子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.101-109, 2018-03-01 (Released:2018-04-10)
参考文献数
27

日本における公的機関による気象観測状況について概観するとともに,東京都檜原村を事例として,これまでの気象観測状況を明らかにした.日本における気象観測は,気象庁のみならず,国土交通省や海上保安庁,環境省,都道府県,消防署等において実施されている.しかし,それぞれの観測目的が異なることから,データの公開状況も異なり,観測システム間の連携が取れていないことが明らかとなった.東京都檜原村を事例として,気象観測状況を調査した結果,少なくとも 1938 年以降,公的機関による気象観測は実施されており,観測項目や観測方法は異なるものの,現在まで継続して観測が行われていた.
著者
堀内 雅生 山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>温暖な地域における風穴の研究事例は少ない。今回は,鹿児島の桜島において著者らが新たに確認した「黒神風穴」について報告する。風穴の気温は18.8℃で,外気温(23.8℃)と比べて5.0℃低温であった。風速は0.15ms-1であった。 清水・澤田(2015)の巻末資料より,全国の風穴情報をGIS上に取り込み,気象庁のメッシュ平年値(2010)より各風穴周辺の年平均気温を求めた。すると,黒神風穴は御蔵島の風穴(温風穴)と同率で,日本国内において現在確認されている風穴の中で最も周辺の年平均気温が高いことが分かった。</p>
著者
堀内 雅生 山口 隆子 松本 昭大
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.93, 2020 (Released:2020-03-30)

温暖な地域における風穴の研究事例は少ない。今回は,鹿児島の桜島において著者らが新たに確認した「黒神風穴」について報告する。風穴の気温は18.8℃で,外気温(23.8℃)と比べて5.0℃低温であった。風速は0.15ms-1であった。 清水・澤田(2015)の巻末資料より,全国の風穴情報をGIS上に取り込み,気象庁のメッシュ平年値(2010)より各風穴周辺の年平均気温を求めた。すると,黒神風穴は御蔵島の風穴(温風穴)と同率で,日本国内において現在確認されている風穴の中で最も周辺の年平均気温が高いことが分かった。
著者
松本 太 石井 康一郎 山口 隆子 安藤 晴夫 三上 岳彦 福岡 義隆
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.142, 2004

1. はじめに 近年,地球温暖化とヒートアイランドによる温暖化に呼応して都市域では開花が早くなったり,紅葉が遅くなったりするなど,植物季節に変化が見られるようになったといわれている.そこで,松本・福岡(2003)は,埼玉県熊谷市を例として,2001年春に,都市の気温分布とソメイヨシノ(Prunus yedoensis)の開花日の局地差との関係を調査した.その結果,ソメイヨシノの開花日の分布に関しては都心部の高温域で早く,都市郊外の低温域で遅い傾向がみられ,ヒートアイランドが開花日に影響を与えていることが明らかになった.しかし,ヒートアイランドの調査は移動観測によって行われたために,開花日に影響を与えると考えられる積算気温と開花日との関係を詳細に検討するまでには至っていない.したがって,常時気象観測データが得られるような条件下でそれらの関係を検討する必要がある. 東京都環境科学研究所および東京都立大学(三上研究室)では東京都区内100カ所の小学校で百葉箱に自記録式の温湿度計を設置し,毎時10分間間隔で観測を行っている(METROS100).そこで,本研究では2004年春,それらの小学校のうち都心部から郊外部にかけての数地点を選定し,小学校内あるいは近辺におけるソメイヨシノの開花日の調査を行った.そして積算気温に着目しつつ,東京都区部におけるソメイヨシノの開花日に及ぼすヒートアイランドの影響について評価することを試みた.2. 調査方法ソメイヨシノの開花日の観察は2月下旬_から_3月下旬まで東京都区内,中央区,千代田区などを都心部,練馬区付近を郊外部として,当該地域の小学校や小学校付近の公園などを巡回し,調査を行った(図1).開花日の基準については気象庁の生物季節観測指針に従って判断した.すなわち1本の観察木で5,6輪以上の開花がみられた期日をもって開花日とした.なお,本研究では一つの地点で2本以上の木がある場合には,50%の木が開花したの基準に達した日を開花日とした. 3. 結果2004年は2月から3月にかけて,平年よりかなり気温が高く推移したために,気象庁発表では東京(靖国神社)はソメイヨシノ開花日の観測史上2番目に早い3月18日の開花となった.本研究で調査した地点では開花日は都心部の高温域で早く,郊外部の低温域で遅い傾向が見られ,都心部の早いところで開花日が3月18日であり,郊外部との開花日の局地差は最大で6日であった.よって,東京都区部においてもヒートアイランド現象が開花日に影響を与えていると考えられる.また,都心部と郊外部における開花日は各々におけるある起算日からの積算気温の変化傾向に相対的に対応している.以上のことから,ヒートアイランド現象によって都心部,郊外部におけるソメイヨシノの開花過程に影響を与える積算気温の推移に局地差が生じ,結果的に都市内外における開花日の局地差につながっていると考察された.謝辞2002年のMETROS100のシステム立ち上げ以来,東京都環境科学研究所の横山仁氏,市野美夏氏,秋山祐佳里氏,小島茂喜氏,現東京都水道局金町浄水場の塩田 勉氏,江戸川大学の森島 済氏,東京都立大学の泉 岳樹氏には,気象データの処理などに関して,多大なご尽力をいただきました.ここに記して深くお礼申し上げます.
著者
堀内 雅生 山口 隆子
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

1.はじめに風穴とは,夏に山の斜面から冷風が吹き出す場所,およびそのような現象を指す(清水ほか,2015)。日本における主な活用事例としては,蚕種の貯蔵が挙げられる。海外においてもスイス・北アルプスなどのヨーロッパでは,冷蔵小屋にミルクを貯蔵するなどの活用がされてきた(佐藤,2008)。近年,自然ネルギーへの関心の高まりから,風穴の天然の冷源としての価値が再認識され,クールスポットとして観光や見学対象となっている風穴も多い。また,実用の冷蔵庫として種苗・野菜・漬物・果実などの貯蔵に利用している地域もあり,需要は増している。このような風穴の活用のためには,その性質を明らかにすることが必要不可欠であり,明治期より気候・地形地質・植生分野にまたがった多くの研究が行われてきた。田中ほか(2004)では,夏季には外気に比べ相対的に崖錐内が低温であることによって生じる対流により冷風が下方の風穴から吹き出し,冬季には崖錐内部が相対的に高温であることによって上部の風穴から温風が吹き出すことを明らかにしている。なお,本稿では夏季に冷風を吹き出す風穴を「冷風穴」,冬季に温風を吹き出す風穴を「温風穴」と呼ぶ。このような風穴の研究事例は,東北~北海道地方や高標高地域などの寒冷な地域において数多く報告されているが,気温が0℃を下回ることが少なく,風穴内部に氷が生じない温暖な地域における研究事例は,萩(森・曽根,2009)や神津島(鈴木,2019)などがあるものの,数は多くない。今後,温暖化による気温の上昇で地表面の熱環境にも影響が出ることが考えられており(Bogdan et al.,2012),風穴の熱環境も同様に変化する可能性がある。そのため,特に現時点で温暖な地域で調査を行うことは,地球温暖化が風穴および風穴周辺に生息している動植物へ与える影響を考える上でも重要であると考えられる。2.方法本研究では,瀬戸内海に面し,気候が温暖な香川県小豆島に位置する風穴(標高107.4m)を対象とした。温度計(TandD:RTR-502, 10分間隔で測定)を風穴及び周辺に設置し,気温の長期変動を記録した。また,8~11月には風穴に熱線風速計(CUSTOM:WS-03SD)を設置し,風速の日変化を観測した。3.結果観測開始(2019年6月8日)から10月初旬までの冷風穴気温は11~14℃前後で,外気温より低い状態を維持しながらも,徐々に上昇した。また,まとまった降水イベントの際には冷風穴気温の一時的な上昇がみられた。これは冷風穴内部に暖かい雨水が流れ込むことで,一時的に内部の温度を上昇させたものと思われる。降水や外気の侵入による影響が少なく,安定して冷風が吹き出していたと思われる6月9日11:00(11.3℃)と10月1日11:00(14.1℃)の冷風穴気温を比較すると,2.8℃上昇しており,この期間中の冷風穴気温上昇率は0.025℃day-1であった。風速観測結果であるが,冷風穴風速と冷風穴内外の気温差には比較的良好な相関関係がみられ,気温差が大きくなるほど風速が上昇することが分かった。これは,風穴の風が外気と風穴内部の空気の密度差によって生じるというメカニズム(高橋ほか,1991)を支持する結果となった。その後,10月中旬頃から冷風穴気温と外気温の差が夜間にほぼ無くなる日が増え,11月上旬にはほぼ毎日夜間の気温差が非常に小さくなった。風穴は冬季になると,夏季に崖錐内に蓄えられた熱によって内部で上昇気流が生じ,夏季に冷風穴で吹き出していた風が吸い込みに転じるが,今回観測された冷風穴気温と外気温の同調は,この吸い込み現象をとらえたものと考えられる。なお,12月に実施した調査では風穴の風向は実際に吸い込みに替わっており,風穴気温が外気温と同調する要因を裏付ける結果となった。また,温風穴について,冬季(2019.12.27)に周囲の地表面温度を放射温度計で測定することにより,発見することができ,観測を開始した。