- 著者
-
山本 俊郎
- 出版者
- 日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.1, pp.p49-58, 1979-01
単純子宮全剔術を行った患者につき,手術前後数日間に亘り血中LH,FSH,PRL,ACTH,Cortisol,Estrone(Eo),Estradiol(Ed),Progesterone(P)濃度を同一検体からRIA法により測定した.また去勢婦人にACTHあるいはEstrogenを投与しその前後の血中Steroid,PRL濃度を測定した.これらより以下述べる成績を得た.1)卵胞期には,開腹4時間後の血中Gonadotropin(G)が減少した.2)卵巣保存例の術後30日目の血中Ed,Pは前進に復した.3)黄体期をのぞき,手術直後の血中Eoに減少傾向を見た.4)手術後1日目から血中Ed,Pは減少傾向を示した.5)手術直後の血中Pは上昇し,卵巣剔出直後に於いても一過性に42%増加した.6)ACTH負荷後,6時間後の血中Colitisol,Ed,P,Pregnenolone,DHEAは何れも前値の2.3~8.3倍に上昇した.7)手術直後,PRLは2.7~4.2倍に上昇し,翌日は前値を復した.特に黄体期の増加率が著しかった.8) Estrogen投与後のPRLは1.7倍と有意に上昇した.以上の成績から次の事柄が示唆された.[○!1]GとACTH間には,手術のStressによる分泌のShift減少が存在する.[○!2]手術後,Eo,Ed,Pが減少するのはG分泌抑制と,卵巣に流入する子宮卵菅側吻合枝の遮断で一過性に卵巣機能低下を来す為である.[○!3]手術直後は一過性のACTH分泌亢進に起因する副腎性P増加がある.[○!4]PRLはStressに対し一過性の急激な分泌亢進を示し,またEstrogenなどの作用で徐々に分泌増加を来す.