著者
山本 憲二郎 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.561-564, 2014-11-01 (Released:2015-01-15)
参考文献数
2

世界の約6割もの人々が組積造構造物を住宅として使用している.組積造構造物の問題点は,地震に対する脆弱性が非常に高い点にあり,これまでに発生した地震による組積造構造物の崩壊で,世界中で多くの人的被害が出ている.組積造構造物の耐震性能を向上させるために,多くの技術的方法が開発されてきた.しかし,それらの方法は,実際の組積造構造物に適用する際,多くの時間と労力を必要とし,更に,多くの方法は新築の組積造構造物に対してのみ適用できる技術である.これらの問題は,技術を普及する上での妨げとなっている.そこで本研究では,既存・新築の組積造構造物の両方に適用でき,更にこれまでの方法と比較して,圧倒的に施工が簡単な耐震補強方法を提案する.この方法に使用する材料は,「SG-2000」というガラス繊維を混ぜ込むことにより強化された特殊繊維塗料である.本稿では,この材料の組積造構造物の耐震補強への適用可能性と効率的な塗布方法に関する実験的な検証結果を紹介する.
著者
熊谷 英彦 玉置 尚徳 鈴木 秀之 山本 憲二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1.(1)大腸菌γ-グルタミルトランスペプチターゼ(GGT)の転移活性を利用して、γ-グルタミル-DOPA、γ-グルタミル-リジン、γ-グルタミルグルタミンを酵素合成した。この結果、γ-グルタミル-γ-グルタミル-DOPA、α位またはε位がγ-グルタミル化されたリジン、γ-グルタミル基が3重につながったグルタミンの合成が明らかになった。(2)大腸菌GGTの低温(20℃)での高発現について、その機構の解明を試みた。その結果、低温でのmRNAの発現量が高くまた低温でmRNAの安定性が高いことが明らかになった。(3)大腸菌GGTのX線結晶構造解析を行いその主鎖構造を明らかにした。(4)大腸菌でのグルタチオン代謝においてGGT反応によってペリプラスムで生成するシステイニルグリシンは、細胞内に取り込まれそれぞれの構成アミノ酸へ分解されること、その際ペプチダーゼA、B、D、Nのいずれもが作用することを明らかにした。ペプチダーゼBについては精製しその性質を解明するとともに、遺伝子のクローニングを行った。2.(1)ビフィズス菌β-グルコシダーゼの遺伝子を大腸菌にクローニングし、大腸菌のβ-グルコシダーゼ高発現株を得た。本高発現株からβ-グルコシダーゼを結晶状に精製し、本酵素が加水分解反応の逆反応(合成反応)を触媒することを発見した。(2)本酵素の固定化カラムと活性炭カラムをタンデムにつなぎ、連続的に合成反応を行い、ゲンチオビオースとフコシル(β1-6)グルコースを合成した。このフコシルグルコースを用いて、ビフィズス菌、乳酸菌、その他種々の腸内細菌による資化性テストを行い、ビフィズス菌9種のうち8種が資化することまた他の細菌類は資化しないことを確認した。(3)ビフィズス菌のα-ガラクトシダーゼが誘導的に生合成されることを明らかにし、単離精製した。本酵素の性質を明らかにするとともに、大腸菌α-ガラクトシド資化能を利用して本酵素遺伝子のクローニング株を取得し、その高発現に成功した。
著者
山本 憲二 芦田 久
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ニワトリ卵黄より抽出した糖ペプチドまたは糖ペプチドに糸状菌エンドグリコシダーゼ(エンド-M)を作用して遊離した糖鎖を縮合反応または還元アミノ化反応によりアルギン酸やキトサンに多価に重合した糖鎖結合ポリマーを合成し、糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸残基にインフルエンザウイルスを結合させて捕捉する新しい概念の感染阻害剤として応用した。阻害剤について動物細胞を用いたインフルエンザウイルス感染阻害能を調べた結果、高い感染阻害活性を示すことを確認した。
著者
芦田 久 加藤 紀彦 川原 彰人 田中 祐樹 梅川 碧里 山本 憲二
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.137-143, 2009 (Released:2009-10-15)
参考文献数
48
被引用文献数
1 1

エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)は,糖タンパク質のアスパラギン残基に結合したN-グリカンのコア部分に存在するN,N´-ジアセチルキトビオース構造に作用し,糖鎖を遊離させるエンドグリコシダーゼである.われわれは土壌より単離した糸状菌Mucor hiemalisより高い糖鎖転移活性を有するENGaseであるEndo-Mを見出し,種々の糖鎖化合物の酵素合成に応用してきた.Endo-M遺伝子のホモログが線虫Caenorhabditis elegansのゲノム中に見出されたため,われわれは真核多細胞生物における本酵素の機能を明らかにする目的で線虫eng-1遺伝子の解析に着手した.リコンビナントENG-1を大腸菌で発現させ諸性質を調べたところ,高マンノース型糖鎖によく作用し,Endo-Mと同様に糖鎖転移活性を有することが明らかになった.またENG-1はN末端にシグナル配列を持たず,細胞質に局在することが示唆された.主に哺乳動物細胞を用いた他グループの研究から,細胞質にはN-グリカン由来の遊離糖鎖(free oligosaccharide; FOS)が存在し,ENGaseはFOSの代謝に関わっていることがFOSの構造解析結果から推測されてきた.そこでこれを直接的に証明するために,野生株とeng-1変異株の線虫のFOSをピリジルアミノ化してHPLC等で分析した.予想どおり,野生株では還元末端にGlcNAcを1残基有するFOS-GN1が主成分であったが,eng-1変異株ではFOS-GN2が蓄積していた.FOSは主にミスフォールドした糖タンパク質が小胞体関連分解される過程で生成すると考えられている.ミスフォールド糖タンパク質は小胞体内腔から細胞質へ逆輸送され,そこでペプチド:N-グリカナーゼ(PNGase)により糖鎖が切り出される.線虫のPNGase(PNG-1)は哺乳動物や出芽酵母由来の酵素とは異なり,PNGase活性を担うトランスグルタミナーゼドメイン以外にチオレドキシンドメインを有していた.大腸菌で発現させたリコンビナントPNG-1はPNGase活性以外にタンパク質ジスルフィドレダクターゼ活性を示したことから,線虫PNG-1はユニークな多機能酵素であることが明らかになった.野生型線虫のFOSを詳細に調べたところ,主要な分子種はMan5GlcNAc1であったが,哺乳動物細胞で報告されているM5B´異性体とは異なり,M5A´異性体であった.哺乳動物においては細胞質α-マンノシダーゼがM5B´を生成すると考えられているが,線虫には細胞質α-マンノシダーゼのホモログは見出されなかった.線虫特異的なM5A´の生成に関わるマンノシダーゼを特定するためにRNAi法を用いて種々のマンノシダーゼをノックダウンした線虫のFOSを解析した結果,ゴルジ内腔のα-マンノシダーゼIや,小胞体内腔のα-マンノシダーゼ様タンパク質EDEMが,線虫特異的M5A´の生成に関与していることが示唆された.