著者
山中 速人 山田 晴通 園田 茂人 山本 真鳥
出版者
中央大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

フィールドワークの教育にあたっては、フィールドワークが野外調査をもっぱらとし、言葉だけでは再現できないリアルな現場を調査対象とするため、現場から離れた教室的環境での講義や演習には、事例の提示や技法の紹介などで多くの困難が存在してきた。本研究は、マルチメディアを活用し、現場から離れた教室環境においても、リアリティのある現場の映像や音声情報を学生にインタラクティブに提示することによって、これまで教室講義では果たせなかったフィールドワーク教育のための新しい教育方法の開発を行った。本研究で開発した教材は、1.初学者(学部教育レベル)を対象とし、2.フィールドワークのための基本的な知識と技能の習得をめざし、3.マルチメディアされた素材(映像・音声・文字)によって現場の事例を擬似的現実として提示しながら、4.ステップを踏んでインタラクティブに学習を行うものである。教材の媒体は、教室講義のための補助的教材を想定し、CD-ROMとした。その後、さらに、たんに補助教材の制作だけでなく、それとメディアミックスする印刷教材と組み合わせて使用するよう教材の内容が練り上げられた。執筆者として、研究分担者を中心に7人の社会学・文化人類学者が1章づつを担当し、印刷教材の内容に対応する著者自身のフィールドワークの現場と調査経験を写真、映像、文字によって再現した。これらの研究成果をもとにして、CD-ROMが添付された大学教科書を出版する契約が出版社との間で交わされ、CD-ROM付きの教科書が2001年度秋に出版の予定である。
著者
山本真鳥編
出版者
山川出版社
巻号頁・発行日
2000
著者
山本 真鳥
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

サモア社会の伝統的な互酬経済は、海外への移住が広範に生じると共に、その送金がきっかけとなって大きな変容にさらされた。互酬性による儀礼交換の経済はその中で過剰に加熱してきた。その後2000年前後から、政府のイニシアチヴにより生じた、女性の伝統的な仕事の見直しと、儀礼交換縮小および「伝統回帰」の政策介入により、その制度にはさらに大きな変化が生じている。
著者
山本 真鳥 棚橋 訓 豊田 由貴夫 船曳 健夫 安井 眞奈美 橋本 裕之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

・研究実施計画は、平成11年度については、若干の変更の後に、ほぼ予定通りに遂行された。平成12年度は、日程調整を行い、調査の足りない部分を補いながら全体の計画が遂行された。・芸術祭の事前に各国を訪れることによって、準備状況を観察し、また異なるジャンルの芸術の全体的な存在様式を観察することができた。・ポリネシアでは、「伝統」芸術の様態が観光と深く関わる部分がある一方、人々にとってそれらはアイデンティティに関わるものとして、社会生活のなかでも大きな意味をもつ。しかし、それぞれの社会で細部の事情は異なる。・パプアニューギニアでは、もともときわめて多様なエスニック文化が存在するなかで、それら伝統文化を織り交ぜながら、新しいアイデンティティのよりどころとなる「伝統の創造」が生じている。ダンスのみならず、多様な芸術の分野でも、ニューギニアらしさを出しながら、しかも特定の部族に直結しない芸術の創造が好まれる。・ミクロネシアは、芸術祭では後発のパフォーマーであり、ダンスの演技が観光と必ずしも結びついていない。その意味で、伝統的なダンスとは何か、伝統的な芸術とは何か、それらを芸術祭でいかに見せるかを、現在追究している段階である。・各国の芸術祭のリプリゼンテーション、つまり送り込む代表団をどのように選定するか、それら代表団がいかなる演技を見せるか、ということは、それぞれの国の国内事情や文化状況、国家としての様態などとさまざまな絡まり方をしていることが解釈できる。それらを明らかにするのは、個別社会の事情に通じた研究である。既に明らかになったことは、研究成果報告書のなかで論じている。・さらに芸術祭を主催すること自体が、それぞれの国の国内事情や文化状況と深く関わっている。それらが、個々の芸術祭のあり方を規定する大きな要因である。ニューカレドニアの第8回芸術祭に関していえば、フランスからの独立の可能性の生じてきている今、カナク文化をニューカレドニアのアイデンティティの正面に据えることは、先住民であるカナクにとって大きな意味を持っていた。
著者
山本 真鳥
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

サモア諸島出身者は、主として環太平洋の諸都市に移民してコミュニティを形成し、今では本国の人口をしのぐほどとなっている。彼らが慣習によって本国の内外で盛んに行う儀礼交換は、互酬性を通じて本国へ現金を送り出す仕掛けとなっており、海外サモア人にとっては大きな負担であるが、サモア人のアイデンティティの徴としてきわめて重要になっているために、なかなか参加がやめられない。一方で、移民アーティストたちはそれに批判的で、参加していない者が多いが、それは彼らが儀礼交換に頼らずともアートにより自らのアイデンティティを作り出すことができるからである。