- 著者
-
岡崎 宏樹
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3, pp.257-276, 2010-12-31 (Released:2012-03-01)
- 参考文献数
- 44
- 被引用文献数
-
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本稿は,日本の中等教育を社会学の観点から考察するものである.第1節では,「中等教育の中の社会学」という主題を考察する意義について検討し,国際的視野からみた中等教育における社会学教育の重要性,社会学の教育法や教材の開発を促進する可能性,中等教育の発展に対する貢献の3点を指摘する.第2節では,日本の中等教育において社会学的知識が周辺的な位置に置かれていることを,高校「現代社会」と中学「社会(公民的分野)」の学習指導要領をもとに確認し,その要因として,社会学の学問的性格,教育行政への制度的関与の不足,社会科教育と社会学教育との連携の欠如の3点を指摘する.第3節では,「総合的学習の時間」と社会学の関係を考察し,この科目が重視する問題解決的・体験的な学習に,社会学教育が貢献しうる部分が大きいことを確認する.また,サービスラーニングを導入した社会学教育に関する諸研究を参照し,中等教育や社会学の導入期教育に効果のある体験的な社会学教育について考察する.最後に,社会科教育における社会認識を,市民性教育や現代社会の構造変化との関連で考察するとともに,社会科以外の領域でも共同性や社会性に関わる多様な学習(「生命性の学び」「他者性の学び」)がありうることを論ずる.以上によって,中等教育に関する社会学教育の研究や実践,制度的な取り組みを進めることが,日本の社会学の未来にとって重要な意味をもつことを提言する.