著者
河野 哲郎 松浦 講平 本田 律生 西村 弘 田中 信幸 岡村 均
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1188-1196, 1992-11-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
14

To investigate the usefulness of a semi-quantitative assay of urinary luteinizing hormone (LH) for predicting ovulation, the relationship among urinary LH, serum LH, serum estradiol (E2) and ultrasonographic observations of follicles were examined in 32 infertile women (35 cycles) at spontaneous (7), clomiphene (13) or cyclofenil (3) induced or hMG (12) induced cycles. Their urine samples were collected 3 times a day for LH assay, starting from about the 10th cycle day or when follicles having a diameter of 10mm or more were detected to the day of ultrasonographical confirmation of follicle ruptures. In the morning on these days, blood was taken twice daily for LH and E2 determination at intervals of 30 min. In spontaneous cycles, urinary LH was (P<0.001) correlated to a significant extent with the serum LH and E2 levels, and follicle rupture was observed 1.9 days after the urine LH surge. In contrast, there was no significant correlation between the urine LH and serum LH or E2 levels in the ovulation induced cycles. In addition, the period from urine LH positive to follicle rupture was significantly (P<0.05) prolonged in those cycles compared with that in spontaneous cycles. These results suggested that the urine LH determination was good for predicting ovulation in spontaneous cycles, but it was also necessary to monitor the follicle sizes by ultrasonography in ovulation induced cycles.
著者
岡村 均
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.232-237, 2009 (Released:2009-09-25)
参考文献数
24

Most of organisms living on the earth have internal clocks and thus, the circadian rhythm represents a basic feature of life. In mammals, as in other many organisms, the cellular circadian core oscillator is thought to be composed of an autoregulatory transcription-(post)translation-based feedback loop involving a set of clock genes. The signal transduction cascade originating from this core oscillatory loop induces the expression of a variety of genes in a circadian fashion, and regulates many cellular functions such as cell division and energy metabolism. This cell oscillation system localizes in most of cells in the body. The circadian system has evolved in a close connection to light which synchronizes the internal phase to environmental rhythms. In mammals, the master clock is located in the suprachiasmatic nucleus (SCN) of the hypothalamus, from which clock signals are transmitted through neuronal and hormonal oscillation conducting systems to the whole body. Arrived clock signals entrain the cell-clocks in peripheral organs, and the intracellular oscillating loop coordinates the timing of the expression of a variety of genes with specific cellular functions. Thus, the mammalian clock system displays a multidimensional complex structure constituting the central oscillator, oscillation conducting systems, and peripheral cellular oscillators.
著者
岡村 均
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.979-986, 2000-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

最近,ホルモン分泌,自律神経活動などの約24時間周期の内因性振動も引き起こす,哺乳類時計機構を司る遺伝子群が発見され,急速な勢いでこの分野の仕事が展開している.哺乳類の時計の振り子はPer1,Per2という2種の時計発振遺伝子であり,この転写活性は24時聞間隔で変動する.この転写調節は,mPER1,mPER2,mPER3,mCRY1,mCRY2が巨大な複合体を形成し,BMAL1/CLOCKのEboxを介する転写促進を抑制することによりなされるネガティブ・オートフィードバックループによると想定されている.このループでは,抑制因子の産生から抑制までの「時間のずれ」の長さによって周期が決定される.これには,リン酸化による振動分子や関連タンパクの修飾,核内への移送制御などの戦略が採られる.リン酸化はPERタンパク量を決めるきわめて重要な過程で,核内・細胞質を問わず,casein kinase1εが司ることが判明した.また,核移行に関しては,PERタンパク相互のヘテロダイマー形成により決定される.さらに最近,この中核的なネガティブ・オートフィードバックループを補佐する,遺伝子,タンパク,細胞,組織レベルでの幾重ものフィードバックループが明らかになりつつある.このような強化・安定化された遺伝子転写のリズムは,ついには,行動やホルモンのリズムに至ると考えられる.
著者
岡村 均
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.97-102, 2008-03-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
20

億年前, 自転する地球に現れた生物は, 巨大な発光体である太陽から周期的にエネルギーを得, また, それによる障害から個体を守るため, 体内で時間システムを進化させてきた.これが, 時間形成に特化した時計遺伝子であり, それが形成する生物時計である.これは, ヒトにおいても時間機構の骨格をなし, 近年の時計遺伝子の研究により, 近年の生活スタイルの激変に伴うリズム障害が, 睡眠異常のみならず, うつ病, メタボリック症候群, 発癌などさまざまな疾病の要因となりうることが明らかになりつつある.
著者
井端 泰彦 井上 慎一 岡村 均 千原 和夫 本間 さと 貴邑 冨久子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は昨年に続き12名の班員による研究により,生体リズム発現及び同調機構,内分泌リズム,自律神経リズム,ヒトにおけるリズム発現,時間記憶などの研究課題について研究を行ってきた。平成9年度に多電極皿上における培養視交叉上核のリズム解析(井端),行動リズム位相変化と哺乳類時間遺伝子(岡村),視交叉上核VIP,AVPニューロンの自律神経反応と高血糖反応への影響(永井),視交叉上核におけるリズム同調機構に対するCREB,CREMの関与(井上)マウスにおける概日リズム突然変異体の分離(海老原),概日リズム光同調に対する心理的ストレスの影響(柴田)GnRHの概日リズム発現に対する視交叉上核AVP,VIPニューロンの影響(貴邑)視床下部成長ホルモン分泌制御機構(千原),条件恐怖刺激に対する視床下部オキシトシン,バソプレシン分泌反応に対する視交叉上核の関与(八木),ヒトにおける生物時間同調因子について(本間),高血圧における血圧の概日リズム機構異常とその治療(田村),睡眠覚醒障害に対する高照度光治療(佐々木)についてそれぞれ研究を行い昨年12月に班会議を開催し研究成果の発表と討論が行われた。特筆すべきことは昨年哺乳動物(ヒトにおいても)にショウジョウバエの時計遺伝子とホモローグである遺伝子が存在することが異なる研究施設から時を同じくして発表されたが(Science,Nature)本研究班の一人である岡村はこの研究グループのひとりであり,彼は続いてこの遺伝子のマウス視交叉上核での発現や光照射による影響や位相変化について"Cell"に発表したことである。即ち哺乳動物における概日リズム発現機序の手がかりが得られたことは大きな成果と考えられる。
著者
岡村 均 原田 攻 森川 博史 大島 正義 西村 敏雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.811-816, 1977-07-01

ヒトにおいて,排卵時に卵胞腔内から放出された卵が卵管内に移行する機構については,一般的に卵管采によるpick-up mechanismがいわれているが,いまだ詳細に検討されていない点が多い.この問題解明のため,われわれは卵巣と卵管采の間に存在する卵管間膜,mesotubarium ovarica (MTO)を超微形態学的に検索し、このMTOに微細構造上典型的な平滑筋細胞が束状に存在し,しかも卵巣と卵管采を機能的に連絡しているかのごとき配列を呈していることを観察した.MTOの構成成分はこの平滑筋の他に血管とcollagen fibersでありmast cellのような遊走細胞も観察された.卵管間膜表面被覆上皮細胞にはciliaは全く観察されない.従つて排卵時に卵胞壁の収縮により卵胞腔から排出される卵は卵管間膜表面構造によつて移送されるのではなく,この卵胞の運動と同調したMTOの収縮により卵巣に近接する卵管采によつて直接pick-upされるものと考えられる.