著者
由留木 裕子 岩月 宏泰 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.111-120, 2015-08-01 (Released:2016-09-01)
参考文献数
27
被引用文献数
3

健常者を対象にどの程度のラベンダー精油吸入で脊髄神経運動ニューロンの興奮性を抑制できるのかについて検討した。方法は濃度0%, 1%, 10%のラベンダーを2分間吸入させF波測定を行った。さらにラベンダー精油が脊髄神経運動ニューロンと自律神経にどのような影響を与えるのかについて検討した。濃度10%のラベンダーを10分間吸入, F波と同時に平均心拍数と心拍変動を測定した。これらの結果, 濃度1%と10%のラベンダー, 2分間の吸入は脊髄神経運動ニューロンの興奮性に影響を与えなかったが, 濃度10%, 5分の吸入で有意な抑制効果が認められた。また, ラベンダーが脊髄神経運動ニューロンを抑制する機序に関しては, 副交感神経が関与する可能性が示唆された。
著者
福本 悠樹 鈴木 俊明 岩月 宏泰
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.82-92, 2019-04-01 (Released:2019-04-11)
参考文献数
27
被引用文献数
7

運動練習後の運動イメージが運動の正確さと脊髄前角細胞の興奮性の関連性にどう影響するか検討した。健常者44名 (平均年齢20.8歳) を無作為に10秒間, 30秒間, 1分間, 2分間の練習時間群に振り分け比較した。安静のF波測定後, ピンチ力を50%MVCに調節する練習を与えた。練習後, ピンチ課題を与え, 規定値と実測値の誤差を算出した。運動イメージにてF波測定後, 再度ピンチ課題を与えた。イメージから安静の振幅F/M比と出現頻度を引いて振幅F/M比と出現頻度変化量を, イメージ後からイメージ前の誤差を引いて誤差変化量を算出した。誤差変化量と振幅F/M比変化量, 出現頻度変化量は, 30秒間・1分間の群で10秒間・2分間の群より減少した。運動イメージの実施が運動の正確さを向上させる場合は, 脊髄前角細胞の興奮性が増大するがその程度が過剰とはならない可能性が示唆された。
著者
安田 雅美 岩月 宏泰 岩月 順子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.G1743-G1743, 2008

【緒言】高齢者にケアサービスを提供する多くの関連職種は,職種間の協力及び連携無しにはサービスの質を維持し向上させることは困難となる.チーム医療には職種間の共働が欠かせない反面,顧客満足が重視される組織では役割期待の矛盾や,職業集団間での関心が相違するなど複雑な利害関係が生じやすい.この現状を踏まえ、適した協力体制を検討するために、各職業集団が持つ情意要因を明らかにすることも必要と思われる.今回,人間の心の要素を5つの自我状態から構成されるとする交流分析から,高齢者ケアに携わる職種間の特徴について検討した.<BR>【方法】対象は本調査の趣旨を理解した高齢者ケアに携わる職員に対し無記名自記式質問紙調査で回収し得た調査票151名(男性36名,女性115名)で.職種別に4群(看護職35名,介護職66名,療法士31名,その他19名)に分類した.調査票は基本属性(7項目),勤務状況(3項目),新版東大式エゴグラム(TEG2)ほかから構成されていた.TEG2は55項目から5つの自我状態(CP:批判的親,NP:養育的親,A:大人,FC:自由な子供,AC従順な子供)について各要素間の関係と外部に放出している心的エネルギー量を視覚化及びパターン分類したものである.統計学的検討は基本属性の項目とパターン分類間の関係についてX2検定を群間比較にKruskal-Wallis検定を行い,有意水準5%未満とした.<BR>【結果】全対象者のパターン分類ではN型(お人好し,殉教者,仕事中毒)37.8%と最も多く,次いで逆N型(孤高の人,自分勝手,気分屋)9.9%,平坦型(超人,凡庸,物静か)7.3%と続いたが,NP優位(世話焼き),NP低位(癇癪持ち)に属する者はみられなかった.<BR> 高齢者に日常的に接する職業では人間的,献身的に接することが求められる反面,サービスの成果を得るために客観的な態度も必要であり、その2つの心性を両立させることが期待される.全対象者のエゴグラムでN型(NPとACが同程度に高く,CPとAが相対的に低いパターン)が最も多かったのはこのような深刻な役割葛藤を要求させることの多い職業集団の情意を示すものといえる.一方,全対象者の基本属性の項目とパターン分類との関係では年齢階級に有意差を認めたが,性別,職種別及び就業年数との間で有意な差を認めなかった.なお,各自我状態の群間比較ではAに有意な差を認めたが,CP,NP及びACに有意な差を認めなかった.Aの一般的特徴である「現実的」,「冷静沈着」,「客観性の重視」の自我状態で看護職,療法士が他の2群より高値を示した.<BR>【結論】高齢者にケアサービスを提供する関連職種間の協力及び連携はサービスの質を維持し向上させるために欠かせない.そのため,組織内の各職業集団が持つ情意要因の客観的評価としてTEG2を活用することも有用と思われる.<BR><BR>
著者
岩月 宏泰 由留木 裕子 文野 住文 中村 あゆみ
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに】近年,本邦では医療や福祉の領域でも雇用就業形態や若者を中心とした職業観の変化が急速に進み,理学療法士を確保したい施設や企業のニーズとの間に解離が生じている。このため,理学療法士養成校では各方面との連携を深め,企業などの最新の情報や人材についてのニーズを把握する必要がある。また,在学中の学生に,将来従事する仕事や職場の状況を理解させ,自己の職業適性,職業生活設計について考える機会を与えることが不可欠である。例えば,理学療法士養成校や地域の実情に応じて,就業やボランティアの体験,卒業生との対話など多様な機会を与えることも前述の目的を達成する上で有用と考えられる。これまで理学療法学生が入学時から卒業までにどのような過程を経て就業意識を培うか,入職後の職業生活に対する適応力を高める教育方法に言及した報告は少ない。今回,理学療法学生の職業生活に対する意識について,質問紙調査の結果から学年別特徴を明らかにし,卒業後に社会的・職業的自立が可能となるような教育的方策について検討した。【説明と同意】本研究の対象者には,青森県立保健大学研究倫理委員会の指針に従って,予め調査の趣旨を説明し了承した上で実施した。また,調査票表紙には「調査票は無記名であり,統計的に処理されるため,皆様の回答が明らかにされることはありません」と明記され,集められた調査票は研究者が入力し,入力後はシュレッダーで裁断した。【方法】対象は青森県,北海道及び高知県に所在する理学療法学専攻の大学及び4年制専修学校に在籍する学生のうち,回答した569名(1年生146名,2年生143名,3年生143名及び4年生137名)であった。調査(留め置き法)時期は2011年6~9月と2013年6月の2回であり,調査票は基本属性,職業志向尺度(若林1983,12項目),成人キャリア成熟尺度(坂柳1999,9項目),職業決定尺度(研究者が作成,4項目)ほかで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,各測定尺度の下位尺度別に集計を行い,学年別比較には多重比較検定(Tukey法)を実施した。なお,各々の下位尺度間でPearson相関係数を算出した。【結果と考察】職業志向尺度の下位尺度のうち,「労働条件」と「人間関係」では学年差を認めなかった。しかし,「職務挑戦」については1~3年生が12.5点台であったが,4年生で11.7±2.8点と下位3学年より有意な低値を示した。また,成人キャリア成熟尺度の「関心性」には学年差を認めなかったが,「自律性」と「計画性」で4年生が下位3学年より有意な低値を示した。なお,職業決定尺度では学年差を認めなかったが,4年生における成人キャリア成熟尺度の下位尺度との相関係数は「関心性」0.27,「自律性」0.22及び「計画性」0.45(p<0.05)であった。1~3年生では学年進行に伴い,自己のキャリアに対して積極的な関心を持ち,それに対する取り組み姿勢も自律的と考えられるので,職業観や職業意識を高める啓発活動の継続性が重要と考えられた。一方,成人キャリア成熟尺度の学年別比較では「自律性」と「計画性」について,4年生では下位学年より有意な低値を示し,職業志向尺度の「職務挑戦」でも同様の結果を認めたことから,彼らには職業生活設計に対する積極的な関心が見出されず,社会的・職業的自立するためのレディネスの確立が遅れていることが推察された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果,4年生が下位学年より「職務挑戦」やキャリア形成で重要な位置を占める「自律性」と「計画性」で消極的な態度を示した事から,長期休暇や入職前に理学療法職場でインターンシップを体験させるなどの機会を与えることで,主体的に選択する職業観や就業意識を育成する必要性が示唆された。
著者
庭田 幸治 岩月 宏泰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G4P2309, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】共感とは単なる他者理解という認知過程ではなく、認知と感情の両方を含む過程とされる。医療における共感は患者と接する過程で第一印象を持ち、その独自性に気づき、共感的に理解し、積極的に関わり、信頼関係を深める、というプロセスを辿るとされ、医療者側の意識化、経験によってこのプロセスは影響されると考えられている。共感の重要性は理学・作業療法養成校の学生が臨床実習を行う場合でも同様であるが、学内教育での共感性習得はカリキュラムに盛り込まれることが少なく、今までその特色について議論されることもほとんどなかった。そこで今回、長期の臨床実習経験と共感性との関連について調べ、共感性習得のための教育のあり方について検討した。【方法】対象:青森県内の4年制の理学療法士及び作業療法士養成校に在籍する学生230名(1~4年生それぞれ54、55、66、55名)を対象とした。収集方法:質問調査票は自記式、無記名で、学生に配布後、留置法にて回収した(回収数184名、回収率80.0%、有効回答数181名、有効回答率78.7%)。調査内容:質問紙は加藤・高木ら(1980年)による情動的共感性尺度EES ; Emotional empathy Scale 25項目と下山によるアイデンティティ尺度(1992年)20項目、職業未決定尺度(1986年)6項目で構成されており、今回基本属性とEESについて解析した。統計学的検討は(1)因子分析(主因子法、バリマックス回転、因子は固有値2.0以上、因子パターンは0.5以上のものを採択)により因子の構造について分析を行い、因子負荷量の大きい質問項目に対しては学年間の差についてKruskal-Wallis検定を行った。(2)EES下位尺度「感情的暖かさ尺度」「感情的冷たさ尺度」「感情的被影響性尺度」ごとに合計点数を算出し、学年間について同様に1元配置分散分析を行った。【説明と同意】調査票には調査の目的、無記名で統計的に処理することを明記し、提出は調査に同意した場合に自由意志で行うこととした。【結果】EESの下位尺度はいずれにおいても学年間で有意な差は見られなかった。因子分析では3因子が抽出され、それぞれ「他者感情の冷静な把握」、「他者感情と自己決定の分離」、「他者への同情」と命名された。3因子の信頼性係数αはそれぞれ0.806、0.528、0.678であり、内的整合性を認めた。各因子との因子負荷量の大きい質問項目から学年間で有意な差が見られたのは、「人が嬉しくて泣いているのを見るとしらけた気持ちになる」、「他人の涙を見ると同情的になるよりも苛立ってくる」であり、4年生は他の学年より「全くそう思わない」との回答が多かった。【考察】他者への共感の獲得には患者の気持ちに気づき、患者と双方向の協力関係があると認識して関わることが重要であるとされる。このような態度は医療者がもともと備えている感性や姿勢に、経験を通して実感したことが加わって患者に対する姿勢に現れるものと考えられる。長期実習では対患者との人間関係を構築する必要性が高まり、この過程で共感性が習得されると思われる。したがって患者が置かれている現状と学生自身の経験との類似性を見出すことができないと共感性を持つことは困難となる。また、1~3学年で学年間の差が見られないことは、学内教育での共感性習得の困難さを示すものと考えられ、今まで理学・作業療法教育において臨床実習で学生自身が自ら共感性を習得するのに任せていた現状もあると思われる。したがって、養成校の教員には専門的知識のみでなく、広い教養を持つことが経験の不足を補い、患者と学生自身の経験の類似性を見出すのに有効であることを学生に理解してもらい、共感性を得るためのスキルトレーニングやロールプレイを行うことが必要であると考える。また、本研究の結果は長期臨床実習時に患者、実習指導者によって提供される患者への気づき、患者との協力関係を体験する道徳的環境が共感性習得に重要な機会であることを示唆するものである。共感性の習得は自己の周囲の状況を認知する能力、その状況の中で自己の果たすべき役割を理解する能力によって促され、共感的な人が周囲にいることは最も効果的であるとされる。したがって臨床実習指導者の共感的な医療提供場面を学生に示すことは共感性の育成に果たす役割が大きいと思われ、教員には学生が共感性を習得しやすい環境を具体的に実習指導者に提示することも必要と思われる。【理学療法学研究としての意義】臨床実習は学内教育と異なり、学生の心理面への影響が大きい。心理的尺度を用いて共感性習得に対する学内教育ならびに臨床実習の効果を明らかにすることは、学生の心理的成長を目的とした理学療法・作業療法教育のあり方、さらに看護など他の職種における教育との差異を検討する際に有用であると考える。
著者
岩月 宏泰 室賀 辰夫 木山 喬博 金井 章 石川 敬 篠田 規公雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.41-44, 1991-01-10
被引用文献数
2

骨格筋を強制振動すると緊張性振動反射(TVR)により拮抗筋の筋活動が低下する。そこで健常者を対象として, TVR用の加振器を用いて5種類の周波数(40, 60, 80, 100, 120Hz)で振動した際と停止後の拮抗筋の運動ニューロンの興奮性(H反射)を経時的にとらえ, 振動周波数の変動による拮抗筋の筋緊張抑制の影響について検討した。結果:(1)H反射振幅の抑制は振動周波数により振動開始5秒後で約55〜69%, 30秒後で約80〜90%と異なったが, その後2分まで最初の抑制と殆ど変化を認めなかった。(2)振動停止直後からH反射振幅は振動前の約50〜80%まで回復し, 約1分で40Hzは約83%まで回復し, 他の周波数では振動前に戻った。以上のことから, 振動刺激を拮抗筋の筋緊張の抑制として利用する際には, 40Hz近傍の周波数が有効であることが認められた。