著者
岩本 佳子
出版者
Japan Association for Middle East Studies (JAMES)
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.69-95, 2017-01-15 (Released:2018-06-01)

本稿は、枢機勅令簿やワクフ総局所蔵台帳といった、遊牧民の定住化に関して発布された命令の記録を含むオスマン語公文書史料を基本史料として、17世紀末から18世紀初頭にかけてのクルド、テュルク系遊牧民のシリア北部、特にラッカ地域への大規模定住化政策を分析した研究である。 17世紀末の軍事および財政改革の中で、クルドやテュルク系遊牧民は、ラッカ北部地域を中心とした地域の農地開発のために定住化させられるようになった。その背景には、この時期に、遊牧民の夏営地・冬営地間の季節移動そのものを問題視し、農耕民として定住化させることを是とするように、遊牧民に対する認識が変化したことがあった。この点で、17-18世紀は、オスマン朝における対遊牧民政策の転換点であると見なすことができる。しかしながら、全ての遊牧民が強制的に定住化させられたわけではなく、イスタンブルに位置するウスキュダル地区のヴァーリデ・スルタン・モスクのワクフに属する遊牧民や自発的に定住化した遊牧民が、強制的な定住から免除される事例も存在した。 遊牧民への定住化政策においては、主な定住先はシリア北部、特にラッカ一帯であり、次点がキプロス島であった。また定住地から逃散して叛徒化した諸部族をラッカへ定住化させる、数度にわたって逃散や叛徒化を繰り返した部族に定住化を命じるなど、処罰としての定住化命令という側面も見られた。一度逃散した部族に対しても、以前に定住を命じた土地と同じ場所へ再度の定住することを命令し、命令に従わない部族を武力で制圧するなど、元の命令を実行することに固執する傾向が強くあった。このことは逃散と再定住化というパターンの固定化へとつながっていった。そのため、17世紀末から18世紀にかけて相次いだ遊牧民の定住化令は、遊牧民の逃散や叛徒化による治安の悪化に対する有効な手立てではなく、むしろ、逃散や山賊の固定化をもたらし、さらには、シリア北部のみならずアナトリアにも及ぶ地域の変化の一因にもなりえていたのである。
著者
岩本 佳子
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.282-309, 2010-03

遊牧民の歴史研究において、定住化という現象は各地で見られてきたが、その要因や内容について明らかにされてきたとは言い難い。本稿では、法令集、租税台帳といった財務帳簿から、史料を作った行政側の遊牧民認識に主軸をおいて一六世紀前半の中央アナトリアに位置するボゾク県を対象として、遊牧生活を送っていた遊牧民が同地に急速に定住化していった理由を明らかにする。同時代のボゾク県では、行政側がボゾク県の住民を遊牧生活に従事する「遊牧民」から村に定住し農耕に従事する「農民」として扱うようにその認識が変化した。そのために、ボゾク県住民から徴收される諸税の大半が農耕に関連する税に移行し、部族集団から村単位で地域の区分がなされるに至り、村の大幅な増加を生んだ。すなわち、同地での「定住化」には住民を遊牧民ではなく農民として認識するようになったという行政側の認識の変遷が大きく寄与していたのである。
著者
村田 勝 神戸 保 江崎 一子 岩本 佳子 村田 みどり
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-7, 2006-02

成熟(黄色)したカボスを用いて,食品を中心とした加工品開発を行った。この開発研究のコンセプトは,黄色化したカボス全体をすべて加工に使用することである。種子も果皮も,もちろん果汁も利用し,廃棄物をゼロにすることである。また,高齢者や病弱者に美味しく食べてもらえる黄色カボスの加工品開発も,この研究の目的の一つである。開発した53品目の中には,高齢者や病弱者向けに特に開発した食品5品目がある。これらは,健常者にとっても食べやすく美味しい食品である。53品目中で商品化予定のものは,現在3品目である。