著者
岩田 礼 Iwata Rei
出版者
金沢大学文学部
雑誌
平成18(2006)年度 科学研究費補助金 基盤研究(B) 研究成果報告書 = 2006 Fiscal Year Final Research Report
巻号頁・発行日
2005-03-01

This project follows the preceding projects performed since 1989, and aims, through the use of a newly developed computer system, to develop a large-scale linguistic atlas of Chinese dialects. The linguistic theoretical framework and the methodology referred to are those of linguistic geography, whose ultimate target is to disclose various aspects of linguistic changes.<br />(1)Construction of the PHD system<br />An XML based data accumulating and processing system, PHD (Project on Han Dialects), was developed and operated on our own server. It comprises and integrates the basic resources (data on localities and dialect materials), linguistic data (indicating Chinese characters, IPA etc.), and digital map data. Client applications were also developed to facilitate our work. This system enhanced to share information and resources and to achieve efficient team work via the intemet.<br />(2)Basic work<br />Supplementations and revision were made for the resources accumulated in the preced ing projects, then we input the linguistic data (especially IPA) for nearly 100 items (mostly lexical items).<br />(3)The drawing of the maps and their interpretation<br />Linguistic maps on about 80 items were drawn. The parameters selected for each map as well as the interpretation proposed by the author were discussed at the research meetings, and were also open for discussion on the forum set up on our site.<br />(4)Research output<br />A part of the output of this project was shown in the two research reports. Some of our findings were presented at various conferences held in and outside Japan.<br />(5)Others<br />We started a philological survey of some items related to folklore, and also started to stock basic data to get a better assessment of the linguistic affinity of various dialects by statistical methods. Next plans<br />(6)Next plans<br />Our research will go on at lelast for two years, until we complete the official publication of the linguistic maps and their interpretations.
著者
岩田 礼
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.18-27, 2001
被引用文献数
1

金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系
著者
窪薗 晴夫 梶 茂樹 岩田 礼 松森 晶子 新田 哲夫 李 連珠
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は世界の諸言語(とりわけ韓国語諸方言、中国語諸方言、アフリカのバンツー諸語)と比較することにより類型論的観点から日本語諸方言のアクセントを考察し、その特質を明らかにすることである。この目的を達成するために年度ごとに重点テーマ(借用語のアクセント、疑問文のプロソディー、アクセント・トーンの中和、アクセント・トーンの変化)を設定し、それぞれのテーマについて諸言語、諸方言の構造・特徴を明らかにした。これらのテーマを議論するために4回の国際シンポジウムを開催し、海外の研究者とともに日本語のアクセント構造について考察するとともに、その成果をLingua特集号を含む国内外の研究誌に発表した。
著者
太田 斎 秋谷 裕幸 木津 祐子 岩田 礼
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

中国における方言研究は長らく字音を対象とした記述研究と比較音韻史研究が中心であった。方言地理学は決して新しい方法論ではないが、中国では従来ほとんど行われることがなかったため、中国方言学の分野では大きな収穫が期待された。これまで日本で志を同じくする研究者が、方言地理学を核として新たな方法を模索しながら共同研究を継続して、漢語方言地図集を第3集まで発表してきた。今回の我々の共同研究はそれを受け継ぐものであった。我々は方言地理学に利用可能な文献データを集積する一方で、文献のみでは埋められない地理的空白をフィールドワークを行うことで埋めることを計画した。また歴史文献に現れる方言データ及び社会言語学的事例についても分析を進め、歴史的考察に利用することにした。初年度には文献データの整理を一段落させ、『地方志所録方言志目録 附方言専志目録』を完成、また初年度のフィールドワークのデータを整理し、次年度初頭に『呉語蘭渓東陽方言調査報告』を作成した。これらの作業と平行して、パソコンによる方言地図作成ソフトSEAL (System of Exhibition and Analysis of Linguistic Data)利用のための環境整備を進め、この年度でほぼ作業を完成させた。そして最終年度に試行錯誤を繰り返して方言地図を作成し、討論を重ねてその修正作業を行った。またこれまでは個々の音韻、語彙、文法項目の地図を作成して中国語における様々な特殊な変化の類例を集積して、一般化を模索してきた訳だが、今回は同源語彙間に現れる特殊な変化を容易に観察できるような語彙集も編纂し、「類推」、「民間語言」、「同音衝突」といったような体系的変化以外の変化の事例の集積を図った。これにより従来の方言地図で行われた分析も類似の事例が複数見出せることになり、我々の方言地理学的考察により強い説得力が付与されることになった。その最終報告書が『漢語方言地図集(稿)第4集』である。
著者
今井 敬子 岩田 礼
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、将来的な中国語デイスコース論の構築のために、基礎的な作業と理論的な検討を進めることを目的にスタートした。デイスコース("談話"とも称される)という観点からの言語研究は、文レベルの文法研究(統語論)の形式主義、抽象主義による限界を見極めた上で近年盛んになった研究分野であり、言語主体のありかた(思考、主観)、言語環境(文脈)、言語使用の背景(文化・社会)などへも目を向けて言語を捉えようとする立場である。中国語でも近年、デイスコース研究への関心が増しているが、本格的な研究はこれからといった段階である。当該期間中に行われた本研究の実際とその成果は以下のようにまとめることができる。本研究ではデイスコースを、表現内容の上でまとまりをもつ複数の文の集合体と捉え、その使用実態と機能を観察した。実際の発話からデータ(音声データおよびそれを文字化したデータ)を収集し分析するという実証的な方法をとった。まず、デイスコースというまとまりを成立させる代表的な手段として、連接語について観察した結果、ごく限られた連接語(因果、逆接など)の目立った多用があり、さらに因果関係を表す連接語の調査を進め、作用域の広さ、多重的な因果関係、表現類型の選択使用と話題の展開のしかたとの関わりを分析、さらには、本来の意味(因果関係の表示)を失い、発話を単に繋いだり終結させたりする機能が見られた。このように実際のデータの中での連接語は、談話の継続、展開、終結などに密接に関与していることから、デイスコース標識として再認識されるべきであろう。本研究ではまた、シナリオのせりふにおける人称代名詞の使用実態を調査し、登場人物間のコミュニケーションのありかたと人称代名詞の選択使用の相互関係を明らかにした。また、声調という音声的特性について、そのピッチの変動を、個別言語、発話主体という両者の面から観察・分析した。なお、残された課題も多い。特に、デイスコースと「視点」の関係性、主題展開の方式につての研究が成果を出せぬまま現在に至ったことが残念である。今後は、これらのテーマについて研究を継続していく計画である。