著者
梶 茂樹
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.8-10, 2001-04-30 (Released:2017-08-31)

Tone is one of the common features of the world's languages. It is found not only in East and Southeast Asian languages, but in many languages of the world: native American, New Guinean, African, etc. If we add to this category pitch-accent languages, an overwhelming number of the world's languages can be seen to exploit this particular phonetic feature in varying degrees. Four languages and language groups are chosen in this issue to exemplify various tone types; namely, Chinese, Korean, Haida (North American) and Bantu (Africa). Although typology is considered in the analysis of these languages, we mainly intend to show different tone and/or pitch-accent languages, no unification being attempted as to the usage of the terms tone and pitch-accent.
著者
梶 茂樹
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.8-10, 2001

Tone is one of the common features of the world's languages. It is found not only in East and Southeast Asian languages, but in many languages of the world: native American, New Guinean, African, etc. If we add to this category pitch-accent languages, an overwhelming number of the world's languages can be seen to exploit this particular phonetic feature in varying degrees. Four languages and language groups are chosen in this issue to exemplify various tone types; namely, Chinese, Korean, Haida (North American) and Bantu (Africa). Although typology is considered in the analysis of these languages, we mainly intend to show different tone and/or pitch-accent languages, no unification being attempted as to the usage of the terms tone and pitch-accent.
著者
梶 茂樹
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.1-28, 2012 (Released:2021-09-15)
参考文献数
12

サハラ以南のアフリカは,いわゆる無文字によって特徴づけられてきた。しかし無文字社会というのは,文字のある社会から文字を除いただけの社会なのだろうか。実際に現地で調査をしてみると,そうではなく,われわれの想像もつかないようなものがコミュニケーションの手段として機能していることがわかる。本稿では,私が現地で調査したもののうち,モンゴ族の諺による挨拶法と太鼓による長距離伝達法,テンボ族の人名によるメッセージ伝達法と結縄,そしてレガ族の紐に吊るした物による諺表現法を紹介し,無文字社会が如何に豊かな形式的伝達法を持ちコミュニケーションを行っているかを明らかにする。無文字社会では,言語表現が十分定形化せず,いわば散文的になるのではないかという一般的想像とは逆に,むしろ彼らのコミュニケーションは形式的であり韻文的である。それは文字がないことへの対応様式であり,共時的に,そして世代を通して伝達をより確かなものにする努力の表れと理解できるのである。
著者
梶 茂樹
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.52, pp.3-27, 2019-03-30

本稿はウガンダ西部のニョロ語のタブー表現を記述し,その形式と内容の分析を試みるものである。ニョロ語のタブー表現を記載した文献はなく,またその他の民族のタブー表現についても本稿で行ったような内容の論理構造分析は皆無である。 ニョロ語のタブー表現は,例えば,「男の子はカマドに腰をかけてはいけない。」のように,行為の禁止を述べるものである。しかし,表現はされないが,「もし男の子がカマドに腰をかけると,父親が死ぬ。」という風に,行為の禁止の違反と結果が含まれる。しかし,行為の禁止の本当の理由である「火傷をするから。」ということは隠される。禁止の本当の理由の代わりに,怖い結果が違反の時間的推移による因果律のように示されるところに特徴がある。それに対してタブー化されていない通常の禁止を表す警句では,「寝る前に水をたくさん飲むと,寝小便をする。」のように,怖い結果はなく,違反に続いて禁止の本当の理由が述べられる。 タブーというのは,人の行動を制御する大きな原動力となっている。自らを律し,また人をいたわることを可能にする。アフリカの伝統的社会においては,これが大きな社会的役割を果す。こういった観点から見ると,なぜニョロ社会で多くの習慣的行為がタブー化されているかが理解できる。 またニョロ語にはタブーに関連して不吉というものがある。これは例えば「旅行に出かけようとした時,ネズミが道を横切るのを見たら,旅行を取りやめる。」と言ったものである。不吉はタブーと似た論理構造を持つが,タブーが命令に従うか従わないかは別にして,自らの判断で行為を行うか行わないかを決めることができるのに対して,不吉は自らコントロールできないことが生じた場合の対処の仕方を教えるものである。
著者
梶 茂樹
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.37-45, 2001-04-30 (Released:2017-08-31)

The Bantu languages of Africa show various tone types, ranging from pure tone languages to non-tonal languages. In this paper the author analyses the tone system of nouns in two languges: Tembo (J.57, eastern Congo) and Haya (J.22, northwestern Tanzania). With Tembo it is demonstrated that in this language each mora in principle should be marked either as high, low, falling or rising (the last two being combinations of high and low). The number of partterns increases in geometric progression. Tembo, therefore, can be characterized as a polymoraic tone language. In Haya, however, the number of tone patterns increases in arithmetic progression, as a function of the number of the syllables in the stem. High tone has become accentual in nature in Haya, in which only one high tone syllable per word is permitted in isolation. For typological reasons, examples of Safwa (M.25) and Swahili (G.42) are added to illustrate a language in which the number of patterns remains stable regardless of the number of the syllables (Safwa), and a bound accent language (Swahili).
著者
梶 茂樹
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.99, pp.13-20, 2021-05-31 (Released:2022-05-31)
参考文献数
8

現代スワヒリ語では,ndiyo「はい」とhapana「いいえ」は比較的よく使われる単語である。hapanaの由来は,ha-pa-na(動詞の否定標識-クラス16の主語接頭辞-「共に」を意味する小辞)であることは容易に分る。つまり,「(その)場所にはない」>「いいえ」というような変化である。それに対し,ndiyoは現代スワヒリ語の知識では分析することができない。筆者は,このndiyoは,例えばニョロ語のndíyôに相当する表現がかつてのスワヒリ語にもあり,そこから来ていると推測する。n-ri-yo(私-be動詞-「そこ」を意味する接語)「私はそこにいる」である。ニョロ語ではこの表現は人を訪問して,Olíyô?「(あなたは)いますか。」と訪われた時の返事「私はいます。」としてよく用いられる。本来,自分自身のその場での存在を示すndiyoが,スワヒリ語では,1) -li~-diの交替の不透明さ(形態音韻的交替),2) 欠如動詞-liの使用の極端な制限,さらに3) 接語-yoの不使用と相まって分析不能となり,たんに「はい」という肯定だけを表すようになったと考えられるのである。
著者
梶 茂樹
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.1-28, 2012

<p>サハラ以南のアフリカは,いわゆる無文字によって特徴づけられてきた。しかし無文字社会というのは,文字のある社会から文字を除いただけの社会なのだろうか。実際に現地で調査をしてみると,そうではなく,われわれの想像もつかないようなものがコミュニケーションの手段として機能していることがわかる。本稿では,私が現地で調査したもののうち,モンゴ族の諺による挨拶法と太鼓による長距離伝達法,テンボ族の人名によるメッセージ伝達法と結縄,そしてレガ族の紐に吊るした物による諺表現法を紹介し,無文字社会が如何に豊かな形式的伝達法を持ちコミュニケーションを行っているかを明らかにする。無文字社会では,言語表現が十分定形化せず,いわば散文的になるのではないかという一般的想像とは逆に,むしろ彼らのコミュニケーションは形式的であり韻文的である。それは文字がないことへの対応様式であり,共時的に,そして世代を通して伝達をより確かなものにする努力の表れと理解できるのである。</p>
著者
梶 茂樹
出版者
国立民族学博物館
雑誌
民博通信 (ISSN:03862836)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.58-60, 1985-01
著者
梶 茂樹 品川 大輔 古閑 恭子 米田 信子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

声調声調というと、東アジア大陸部のいわゆる単音節語をイメージすることが多い。しかしながら、これらをもって声調言語一般を語るわけにはいかない。アフリカにおいては多様な声調言語の類型が現れる。例えばコンゴのテンボ語のように、単語を構成する音節(あるいはモーラ)数に従って声調のパターンが等比級数的に増える言語もあれば、タンザニアのハヤ語のように互換の音節数に従って等差級数的に増える言語もある。さらにウガンダのニョロ語のように単語の音節数に関係なくパターン数2を保持する言語もある。さらにアフリカの声調・アクセント言語において重要なことは、声調の語彙的機能にも増して文法的機能が卓越していることである。
著者
窪薗 晴夫 梶 茂樹 岩田 礼 松森 晶子 新田 哲夫 李 連珠
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は世界の諸言語(とりわけ韓国語諸方言、中国語諸方言、アフリカのバンツー諸語)と比較することにより類型論的観点から日本語諸方言のアクセントを考察し、その特質を明らかにすることである。この目的を達成するために年度ごとに重点テーマ(借用語のアクセント、疑問文のプロソディー、アクセント・トーンの中和、アクセント・トーンの変化)を設定し、それぞれのテーマについて諸言語、諸方言の構造・特徴を明らかにした。これらのテーマを議論するために4回の国際シンポジウムを開催し、海外の研究者とともに日本語のアクセント構造について考察するとともに、その成果をLingua特集号を含む国内外の研究誌に発表した。
著者
梶 茂樹 米田 信子 古閑 恭子 品川 大輔 塩田 勝彦 神谷 俊郎 若狭 基道
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アフリカには多くの声調言語が話されている。アフリカの声調言語の特徴は、アジアの声調言語に比して、声調の語彙的機能が低く文法的機能が高いということである。例えば、多くのバンツー系諸語では、しばしば声調のみで時制・アスペクトが区別されるし、また声調のみによって関係節かそうでないかが区別される。またガーナのアカン語では所有表現が声調のみで表現されるということもある。このような声調の文法的機能はアフリカの声調言語の大きな特徴である。
著者
加賀谷 良平 宮本 律子 梶 茂樹 湯川 恭敏
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究期間の平成11年度〜13年度で、タンザニア、ケニア、ウガンダのバントゥ諸語の内、ほぼ30言語を調査した。この言語数は予定数をやや上回っている。具体的な調査内容について言えば、各言語において,ほぼ2000語におよぶ語彙,音声,音韻,文法等の全般的かつ精密な調査と分析を行った。この3年間の調査自体はほぼ満足すべきものであり,バントゥ諸語の音調研究を中心とした研究から新たな一般言語学的知見が得られ、また、言語変容、消滅の危機に瀕した諸言語の記述研究をとおして、我々の調査隊の成果は世界的に貢献できたと考える。しかし、未だに消滅の危機に瀕しているバントゥ諸語は多数存在し,現在を除いてはその記述・記録が不可能となること,また急激な社会変化により、多くの言語が歴史上かつて見られなかったほどの早さで変化していることなどを考えると,アフリカ諸言語の調査分析から得られる成果は極めて大であり,引き続き精力的かつこれまで増した大規模な調査が必要である。現在のアフリカはいわば壮大な言語実験場であり,幾つかの言語の定点観測を行いつつ,経験の深い優秀な調査者がより精力的に調査を行う必要があると痛感する。この3年間の調査成果は,言語学会,アフリカ学会や多くの学会誌等を通じて発表してきたが、今後も多くの成果発表を予定している。また別途の論文集として出版する予定である。なお、この調査隊には、R.Besha(ダルエスサラーム大学教授)、K.Kahigi(ダルエスサラーム大学教授)、小森淳子(大阪外国語大学非常勤講師)、神谷俊郎(東京外国語大学博士後期過程)、阿部優子(東京外国語大学博士後期過程)が研究協力者として参加・協力した。