著者
伊藤 亮 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1041-1046, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

第二次世界大戦において、全国各地で空襲による市街地火災延焼防止のため、建物を除却し空地を確保する建物疎開が行われた。全国279都市で実施され、61万戸除却された。各都市における建物疎開の実態を扱ったものとして、大都市である名古屋、京都、広島を扱った研究や地方都市である長崎市や旧徳山市を対象としたものは確認できる。その中で、横浜市の建物疎開の実態は明らかになっていない。そこで本研究は、第二次世界大戦時の横浜における防空計画を示した上で、建物疎開の実態を解明することを目的とする。そして現在、建物疎開跡地がどのように利用されているか把握する基礎とする。調査の結果、神奈川県立公文書館に建物疎開の実態を収録した文書が保管されていることが判明した。その文書を解読した結果、建物疎開として1944年2月から11回376箇所が指定され、除却面積は173ha、21,603戸に及んだことがわかった。そして建物疎開跡地は現在、道路として利用されているものが多く、磯子区の掘割川周辺には「疎開道路」と呼ばれる5つの道路が存在し、また現在の鶴見区の汐入公園は建物疎開跡地を活用したことが読み取れた。
著者
会田 裕一 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1377-1384, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
29

台湾は二輪車中心の私事交通が発達しており、公共交通分担率は低いレベルにある。中央政府では公共交通システムを再定義し、BRTやLRTといった公共交通システムを積極的に推進している。淡海地区では高雄に次いで二番目のLRTが建設中であるが、最初の計画から事業計画の最終承認までに21年間を要している。本研究では、新たな公共交通システムを導入するにあたりどの公共交通システムを採用すべきかの意思決定プロセスを解明すること、LRT決定後のルート選定・構造形式選定といった路線計画の検討ポイントを整理し、その経緯を明らかにすることを目的とする。淡海では、MRT、LRT、BRTの導入が比較・検討された経緯があり、最終的にLRTが選定された。その意思決定プロセスでは、(1)台湾の公共交通政策による誘導が大きな影響を及ぼしていたこと、(2)道路空間などの物理的な制約や投資対効果といった経済性などが重要なポイントであったこと、(3)建設コストのみならず、利便性や景観といったポイントの評価を重視していること、等が明らかとなった。今後、わが国の都市がLRT導入を推進する際にも一つのモデルとなる事例と考えられる。
著者
岡本 寛子 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.773-778, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
7

旧国鉄債務は、土地、株式を財源とし償還することとされ、旧国鉄から引き継いだ土地の土地利用転換および売却処分が全国各地で行われている。こうした旧国鉄跡地は、大規模かつ駅周辺にあることから、その土地利用転換は周辺地域の土地利用、都市構造にも多大な影響を及ぼすことが考えられる。さらに単なる土地利用転換でなく債務返還の財源の種地となるため、円滑な債務償還に資する価格での売却が必要であった。つまり旧国鉄跡地は売却による旧国鉄債務の解決および都市課題の解決の両方の観点に基づいた土地利用転換が必要となっていた。そこで本研究では、旧国鉄跡地について分布状況、規模、活用実態等その全体像を明らかにし、さらに大規模跡地に関連した自治体へのアンケート調査を実施して、旧国鉄跡地の活用プロセスとそれに伴って生じた課題などを明らかにすることを目的とする。その結果、旧国鉄跡地の分布や規模、土地利用転換等の全体像を明らかにすることができた。またアンケート結果より、跡地利用については概ね高い評価が得られているが、一方で合意形成や要する資金と時間の問題など、解決すべき土地利用転換プロセスの課題も抽出することができた。
著者
太刀川 宏志 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.687-692, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
3
被引用文献数
1

災害後には瓦礫が発生し、まず復旧復興に先駆け、瓦礫処理を行う必要がある。第二次世界大戦では全国215都市が被害を受け、戦災復興においても、広範囲で一度に一気に行う必要がある瓦礫処理は大きな課題であり、戦災地応急対策として最初に清掃事業(瓦礫処理)が実施された。東日本大震災の被害は非常に広範囲に及んでおり、広範囲で一度に一気に発生した災害における瓦礫の処理方策を学ぶ上で、戦災復興の瓦礫処理を解明して今後に活かす必要がある。あわせて、災害時における瓦礫処理についての備えを考えていく上でも、過去の災害復興を振り返り今後に生かしていくことは意義があると考える。そこで本研究は、戦災復興誌より戦災復興における瓦礫処理の方針を把握した上で、実際の戦災瓦礫処理を都市別に抽出し、処理内容毎にまとめる。さらに、特徴的な戦災瓦礫の処理方策を見出す。戦災瓦礫処理は、制度として戦災復興土地区画整理事業区域を対象としたことが本研究を通じて確認できたことから、見直しにより土地区画整理区域外となった地区を多く抱えた東京の戦災瓦礫処理について具体事例として述べることとする。
著者
北浪 健太郎 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.85-90, 2003-10-25
参考文献数
4
被引用文献数
5

わが国最大規模の開発面積を誇る多摩ニュータウンも既に入居開始から30年が経過した。この多摩ニュータウンは高度経済成長期に「東京で働く勤労者向けに良質な住宅を大量に供給すること」を目的として出発したが、その後、時代の要請に対応しながら役割を見直し、今日では様々な機能を取り込んだ複合都市として整備されている。そして今、東京都施行の新住宅市街地開発事業が終了する等ニュータウンの開発に関する事業はいよいよ終息期をむかえようとしている。しかしながら一方では、初期に建設された住宅や施設の老朽化と居住者の急速な高齢化が進み、建築物の更新、増加する単身老人世帯への対応、学校の余剰・廃校問題等、新たな課題が顕在化しつつある。また、近年では転出者数が転入者数を上回る状況が続いており、都市機能の維持・成熟という観点でも陰りが見受けられる。 こうした事態の背景には、そもそもニュータウン入居者が一定の年齢層に偏っており、結果としてニュータウン全体の人口構成も「団塊の世代」(第1世代)と「その子供世代」(第2世代)に偏在していることがあるが、加えてこの第 2世代が近年、世帯分離のタイミングをむかえていることも状況を複雑にしていると考えられる。新しい課題に対応し、多摩ニュータウンを今後とも継続的に成長ないし成熟化させてゆく具体的な施策を検討するためにはこの第2世代の動向を的確に把握することが非常に重要である。 しかしこれまで地方都市の分析や世帯主に関する研究は行われているが、大都市ニュータウンの第2世代の住み替えを対象とした研究は実態把握の困難性もあってほとんど行われていない。そこで本研究では、第2世代が世帯分離後どのように住み替えを行っているのかを明らかにするために、アンケート調査を実施し、 (1)第1・第2世代の同別居状況 (2)第2世代の世帯分離後の住み替え先の傾向 (3)現在も第1世代と同居している第2世代のニュータウンへの定住意向、居住性の評価等 を明らかにし、ニュータウンで育った第2世代の住み替えの動向を把握することを目的とする。 調査方法としては、多摩市内のニュータウン区域には 59町丁目が存在するが、入居開始後に町名変更・編入が行われた町丁目並びに未だ人口定着が浅い人口 100人未満の町丁目と土地区画整理事業区域内の町丁目を除くと、結果的に19町丁目を抽出し、アンケートは各戸のポストへ投函・郵送回収で行った。また、アンケート記入対象者と主な質問内容は記入者の属性と同別居状況、別居の場合はその理由を聞いた上で、既に別居している場合は現在の世帯主(第1世代)に対して第2世代の住み替え先を、同居している場合は18歳以上の第2世代に対してニュータウンの居住性等を問う質問に答えて頂くように設定した。 分析方法としては、 (1)把握できた724人の第2世代に対して数量化_III_類を用いて類型化し、同別居状況についての特徴を導く。 (2)別居者の住み替え先と、多摩市全体の転出者の転出先を比較する。また「年代」と「別居理由」から特徴を導く。 (3)第1世代と同居している第2世代のニュータウンの居住性評価の特徴を分析する。 調査結果としては、 (1)第2世代の別居時期は、住宅所有関係で違いがあり、「借家」の方が「持家」に比べて別居する時期が早い。 (2)多摩市の転出者は一般に「23区以外の東京都」に多く移り住んでいるのに対して、第2世代は、「周辺県」や「都内23区内」にも多く移り住んでいる。 (3)年齢が「20代」「30代」の第2世代で「一人暮らしを希望」して別居した人は「都内 23区内」に住み替える割合が高く、特に多摩ニュータウンまで直接乗り入れている京王、小田急線沿線に住み替えている人が多い。 (4)現在も同居している第 2世代のニュータウンに対する愛着や住み良さの評価は高い。特に「10代」「40代」の居住性評価は非常に高い。しかし「20代」「30代」になると都心の利便性等との比較において否定的な評価が増加する。 また、同居第2世代の定住意向は多摩市政世論の結果よりも低い水準であり、今後も引き続き「20代」「30代」となった第2世代が多摩ニュータウンから離れて行く可能性は高い。その際にはニュータウン区域から「都内23区内」、「京王線小田急線沿線」への住み替えが起こる可能性が極めて高いことがわかった。
著者
大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.711-716, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

災害復興土地区画整理事業は、復興という公的性格が強いことから、公共団体もしくは行政庁により事業が実施されてきたが、過去においては民間的性格とも言われる組合施行での事業実施も確認された。本研究は、組合施行による災害復興土地区画整理事業の実施を検討する基礎的研究として、災害復興土地区画整理事業の施行者別の実施実態を踏まえた上で、(1)災害復興土地区画整理事業施行者について法制度の観点から位置づけを確認し、(2)組合施行による災害復興の位置づけの解明を行う。さらに(3)本研究で明らかとなった組合施行による復興の第1号と考えられる1925年の日暮里大火復興土地区画整理事業の実施内容を示した上で、組合施行による災害復興土地区画整理事業の特徴を明らかにする。その結果、震災復興の旧特別都市計画法では、法案審議過程で組合施行が追加されたが、組合施行は行われなかったことが判明した。戦災復興では、組合施行が行われていた。旧都市計画法においては、組合施行が行われていたが事業費や実施体制において公共団体の強力な支援のもと事業が行われ、公共団体による業務代行方式の組合施行であった。
著者
野尻 彰 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.151-156, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
9

鉄道廃止に伴い発生した線路跡地は、細長い特殊な形状であるため、一般にその有効活用は困難なことが多い。しかしながら近年、低炭素社会を目指す観点から過度の自動車交通を抑制し、公共交通への転換を促進する上でも、線路跡地を再度見直し、公共交通の一部として再活用する検討も必要であると考えられる。また駅跡地も跡地といったマイナス的なイメージで捉えるのではなく、まち再生及び活性化の種地として再活用することが必要である。そこで本研究は、鉄道廃止によって発生した線路跡地を確認するとともに、線路跡地と駅跡地の土地利用転換の状況をアンケート調査し、その活用実態を把握することを目的とする。その結果、線路跡地は道路として再活用されているものが多かった。その一方で3件に過ぎないが線路跡地を公共交通の一部として再活用した事例も抽出され、現在も活用されている富山地方鉄道射水線跡のバス専用道路について、再活用に至った経緯と運用状況を確認した。駅跡地は、公益施設として整備されたものが一番多かった。それ以外には、駅跡地を新たなまちの拠点として道の駅や観光拠点に再整備し、賑わいを取り戻している事例が抽出された。
著者
日野 祐滋 瀬田 史彦 木下 瑞夫 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.77, 2006

欧州に起源を有する区画整理制度は、我が国で発展し、全国各地で様々な都市問題の解決手法として活用されてきている。さらに今日では、急速な都市化に悩むアジア諸国の中にも区画整理を活用している国が現れている。タイ政府は、1992年の閣議での承認に基づき、政府として区画整理の導入に向けて本格的に取り組むことを正式に決定した。以来、日本政府は区画整理の技術協力を続けてきたが、その結果2004年には、タイ国の区画整理法が成立した。 本研究では、タイにおける区画整理法の草案作成から国会での修正可決までの過程をたどりつつ、日本とタイにおける区画整理の相違点について比較・分析し、その背景にある社会的、制度的な相違点との関係を明らかにするとともに、今後、タイにおいて区画整理を推進していくための課題についても分析した。さらに、タイへの区画整理制度の移転を事例として、区画整理制度の移転に関する特徴と課題について考察した
著者
大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.307-312, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年、土地区画整理事業が保有する換地手法と任意の土地先買いを最大限に活用した市街地整備が多く見られるようになった。この方策がどの時点から用いられるようになっていたのか過去を遡り調査した結果、関東大震災復興土地区画整理事業で、当時の鉄道省が土地先買いし内務省及び東京市の土地区画整理事業により先買い地を鉄道用地へ換地し鉄道用地を確保していたことが判明した。そこで本研究は、関東大震災復興土地区画整理事業における鉄道省による土地先買いと土地区画整理事業による鉄道敷への鉄道用地換地実態を明らかにすると同時に、鉄道省が本方法を採用するに至った背景と土地区画整理の技術的方針を解明することを目的とする。その結果、鉄道復興計画を明らかにし、鉄道省の土地の先買い状況を土地所有者名簿から詳細に把握した上で、土地区画整理事業を活用した鉄道用地創出状況を解明した。また土地の先買いと換地方法は法に定めず、任意の運用レベルで行っていたことが判明した。本手法採用の背景として、鉄道省は都市復興をチャンスと捉え、さらに鉄道用地確保に土地区画整理事業を活用する方策が良策であると認識していたことがわかった。
著者
会田 裕一 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_791-I_798, 2017
被引用文献数
1

台湾初のLRTプロジェクトが高雄市において2019年の全線開業を目指して進められている.計画から全線開業まで19年間を要する一大プロジェクトである.建設に長期間を要したのは,事業化の段階で民間投資に適したプロジェクト組成ができなかったことが一因であった.そこで,本研究は高雄LRTの事業計画の資金計画に着目し,事業推進上の課題を抽出すると共に課題への対応策を解明することを目的とする.その結果,事業費増加による高雄市の財政負担増,事業収入の低下といった課題が明らかになった.このような課題に対して,中央政府による公的な補助制度,開発利益還元施策や都市政策との連携による利便性の高いまちづくり促進など日本においても学ぶべき知見が得られた.
著者
小林 陽一郎 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.757-762, 2011-10-25

わが国の高齢化社会は着実に進み、街と自動車の接続点であり乗換口でもある駐車場では、今まで以上に高齢者を含めた移動制約者に配慮することが求められている。2006年にバリアフリー新法が施行され、移動制約者用の駐車スペース設置に関しては、路外駐車場は1台以上、建築物特定施設に関しては、200台以下は全体の2%、200台以上の場合は全体の1%+2台以上という基準となっている。しかし、駐車場の新築または増築時に適用されるため、既存の駐車場にはあてはまらない。そのため、現状では移動制約者用駐車スペースの設置数は極めて少ない状況にある。そこで本研究は、移動制約者を障がい者手帳を所持している人のみならず、妊婦や高齢者、一時的な病気・怪我人まで含めた広い概念として捉えた上で、実際に運用されている移動制約者用駐車スペースに関する設置基準を概観し、東京と横浜の駐車場においてアンケート調査を実施し、移動制約者が乗車している自動車の駐車ニーズと課題認識を明らかにする。あわせて移動制約者駐車マスの利用実態を現地で確認し、こうした利用状況から得られた結果を基に、移動制約者用駐車スペースの設置のあり方を提案する。
著者
岸井 隆幸 木下 瑞夫 大沢 昌玄 木下 瑞夫 大沢 昌玄 日野 祐滋
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

わが国が誇る都市開発手法である「土地区画整理」の技術がタイ国へ技術移転された過程を実証的に評価分析し、今後とも必要とされている他の国々に対する土地区画整理技術移転のあり方を理論的に考察した。また、タイ国への技術移転事例分析を通じて、今後より一層の普及を図るために「土地区画整理事業に関する技術の国際移転」に必要な技術開発の具体的課題を明らかにした。