著者
北畠 拓也 河西 奈緒 土肥 真人
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1089-1094, 2014

オーストラリアNSW州では、ホームレスの人々の「公共空間にいる権利」を保障するプロトコルが存在し、行政機関が部門横断的にこれに批准している。これは、2000年のシドニー五輪を契機に締結され、現在でも存続している。本研究では、このプロトコルの成立過程とともに、現在の、特にシドニー市周辺における現場レベルでの運用実態を明らかにすることを目的とする。文献調査および現地での行政機関、NGOへのインタビュー調査から、プロトコルの成立過程およびシドニー五輪における働き、現在の現場レベルでのホームレス支援団体・公共空間管理団体両者にとってのプロトコルの効果と影響が明らかとなり、ホームレス政策においてホームレスの人々の「公共空間にいる権利」を認めることの意義が見出された。
著者
遠藤 瞭太 後藤 春彦 山村 崇
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1083-1088, 2014
被引用文献数
1

昨今我が国を含めた先進諸国においては、社会の成熟とともに知識重視社会に向かいつつあり、教育インフラの重要性が高まっている。本研究では、サードプレイスで学習をする都市生活者を調査・分析したところ、以下の3点が結果として明らかになった。1)サードプレイスで学習する際の意思決定プロセスには、「学習を目的として場所を選択する場合」と「場所を選択する事を目的とする場合」の2種類がある。居住地や就学先周辺では、前者が多くみられた。2)サードプレイスで学習する理由には、物的な側面の動機と心的な側面の動機がある。このうち、心的な動機は、学習意欲に対して強い影響を与えている。3)サードプレイスで学習する人は「人がいる」「一人になれる」という2つの対極的な欲求を持っている。それを満たし、かつ求める物的環境の快適性を有する場所として、サードプレイスが利用されていた。以上のようにサードプレイスは都市における学習場所として価値を有していた。
著者
阿部 正太朗 藤井 聡
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.37-45, 2015
被引用文献数
1

自転車の放置駐輪は、社会的ジレンマ構造を内包し大きな社会問題となっている。京都市では放置駐輪に対して、駐輪場増設や撤去取締りなどに力を入れている。また、放置駐輪への警告看板を市内のいたるところに設置しているが、その内容は放置自転車の撤去に関する記載に留まり、看板自体も老朽化、陳腐化している。本研究では、心理学などの知見を援用しつつ、放置駐輪の抑制を目的としたポスターを設計した。そして、設計したポスターを、実際に放置駐輪多発地点に設置し、その効果の検証を試みた。その結果、自転車放置者が自転車の放置をためらう意識の活性化等が確認され、ポスター設置による放置駐輪抑制効果が示された。
著者
古山 周太郎 奈良 朋彦 木村 直紀
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.361-366, 2012

本研究では、岩手県気仙郡住田町の3か所の応急仮設住宅団地を対象に、団地で実施されているコミュニティ支援活動の実態と、入居者のコミュニティ活動の状況や活動への評価を明らかにすることを目的とした。研究方法は、仮設支援協議会の各組織が実施している活動の日誌の分析と、入居者を対象としたアンケート調査分析である。研究の結論は次の通りである。まずコミュニティ支援活動は、多数の組織の連携により実施され、目的や支援組織のかかわりかたで9つに分類できた。その活動の傾向は時期によって変化している。活動に参加した程度は年齢によって差がみられた。仮設団地でのコミュニティ支援活動は住民から一定の評価を得ており、住民同士や支援者との交流機会の提供とともに、住民に気分転換等の精神的な効果を与えていた。
著者
今村 洋一
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-46, 2014

本研究では、終戦直後の旧軍施設に対する全国の学校の使用希望状況から当時のニーズを整理した上で、名古屋を対象に、旧軍用地の学校への転用パターンについて具体的に明らかにするとともに、陸軍師団司令部の置かれた地方13都市での考察から、旧軍用地転用による文教市街地の形成について、全国的な実態を明らかにした。終戦直後は罹災学校の代替施設としての応急的な建物需要、1950年代以降は生徒増を受けた学校の新設・拡張のための土地需要が、転用背景にあったことが指摘できる。前者は一時使用のはずであったが、建て替えを経て継続使用となった事例がみられた。7都市で旧軍用地に形成された文教市街地が確認でき、城郭部での大規模大学キャンパス化(仙台、金沢)と市街地縁辺部での小中高大の集積の2タイプが見られた(名古屋、広島、熊本、弘前、京都)。
著者
坂村 圭 中井 検裕 中西 正彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.1009-1014, 2011-10-25

近年、地方自治体の財政難、住民ニーズの多様化など公立美術館を取り巻く環境は大きく変化しており、管理者は効率的な事業運営のもと事業を実施していくことが求められている。このような社会的背景から平成15年度に指定管理者制度が美術館へも導入されることとなった。しかし、地域文化と関わりの深い美術館への本制度の適用に関しては、自治体からの批判や運営に際しての問題点も多く、導入も顕著に進んでいない。今後、民間活力の登用を視野に入れて運営を効率化していくためには、現在の美術館に対する制度の包括的な効果と問題点を把握し、適切な導入手法を提供していく必要がある。本研究では、まず美術館における制度導入の実態を把握し、続いて制度導入による運営部門、学芸部門の変容を分析した。分析の結果、近年の公立美術館全般の運営費削減の実態が示せ、加えて制度導入による実施事業の質と量の改善が示せた。一方、制度導入手法の偏りも明らかになり、制度の導入を機に、各種問題が内包されていることが判明した。今後、公立美術館の運営改善のために本制度の導入を推し進めることは効果的だが、制度導入の環境や条件を整備していく必要があるだろう。
著者
木田 恵理奈 後藤 春彦 佐藤 宏亮
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.481-486, 2011-10-25
被引用文献数
2 1

本研究は、水神祭の運営における商店街組織と地縁組織の連携による社会関係資本構築のプロセスを示すことを目的とし、以下の4点を明らかにした。(1)水神祭復活以前の水神社及び八幡神交会と商店街の関わり、(2)商店街再開発に伴う水神社の変遷、(3)水神祭の運営における各主体の関係構築過程、(4)水神祭復活による効果
著者
佐藤 遼 城所 哲夫 瀬田 史彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.945-950, 2014
被引用文献数
1

本研究の目的は、大都市圏から地方への移住に「関心がある」層と移住が「可能である」層との間の、理想の地方移住後の生活イメージに関する選好パターンの違いを明らかにすることである。本研究では特に、移住先地域での暮らし方・働き方の質に関するイメージに着目した。まず、アンケート調査により地方へ「移住可能」である層を定義した。次に、因子分析により理想の地方での暮らし方・働き方のイメージに対する選好パターンを分析した。そして、ロジスティック回帰モデルを構築し、イメージへの選好パターンと「移住可能であるか」どうかとの関係性を分析した。結果、地方でのやりがいのある仕事のイメージを好む人ほど、地方移住して生活していけると考えている傾向があることがわかった。
著者
千代 章一郎 山田 恭平
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.595-600, 2012

本稿では、被爆都市における景観研究の一環として、平和記念式典に着目し、その歴史的な景観への眼差しの演出の変遷を明らかにすることによって、記憶を持続するための空間デザイン手法に関する知見を得ることを目的する。 式典において、丹下健三(1913~2005)の構想した南北軸線による眺望景観が演出されてきた。しかし、報道写真から、その軸線は平和記念公園内で切断されていくことがわかる。その一方で、献花を行う参列者からの景観の演出は変化しておらず、丹下健三の構想した軸線と一致している。
著者
阪井 暖子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1035-1040, 2014
被引用文献数
6

人口減少が進む中、全国的に空地等の増加が危惧されている。なかでも郊外戸建住宅団地の空洞化が危惧されている。そこで、本稿では人口減少している大都市圏郊外の戸建住宅地を事例にとり、空地の発生消滅の経年変化の実態について把握するとともに、その要因の分析を行った。その結果、郊外戸建住宅団地において、人口や世帯数は必ずしも継続して減少しているのではなく、また、空地の増加はみられずむしろ減少していることがわかった。空地等が減少している要因は、資産としての魅力の低下、相続の発生などにより空地等が市場にアフォーダブルな価格で提供され始めていることがあげられる。郊外戸建住宅団地において空地化はしていないが、しかし世帯当たり人員の減少や、空家化により空洞化は進んでいる。また、新規転入者に中高年齢層が多いことから、今後も高齢者比率は急速に高まり「限界団地化」が危惧される。
著者
古山 周太郎 和田 浩明
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.621-626, 2014
被引用文献数
2

本研究の目的は、実際に被災した山間地域を対象に、複数の集落における避難行動や災害対応の実態を把握することである。また、被災体験に基づく集落住民の防災意識をまとめている。研究対象地紀伊半島大水害で被災した五條市大塔町地区の集落とし、集落住民へのアンケート調査と、集落単位での防災地区懇談会で出された意見を分析した。その結果、被災地域の集落は、被災集落、避難集落、孤立集落、通常集落にわけられ、避難時には、行政や消防の支援の下、状況に対応しながら行動しており、避難しない集落でも、集落単位での安否確認や情報取得などに取り組んでおり、集落同士の協力関係もみられた。また、被災経験により災害に対する不安は高まり、早めの避難を意識する傾向がみられるが、孤立した経験をしていても自宅待機を望む住民もおり、体験の仕方によって防災意識に差が見られた。集落ごとの課題と対策においても、被災時の経験が影響しており、特に被災体験した集落では、直面した課題を現実的に捉えそれに対して実行的な対策を求めている。
著者
橋本 成仁 山本 和生
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.769-774, 2011-10-25
被引用文献数
1 1

自動車の利用を前提とした社会への移行が進み、地方都市やその郊外部、あるいは中山間地域においても地域構造自体が自動車依存型となっている。このような地域では多くの高齢ドライバーが不安を抱えながらも運転を継続し続けざるを得ない状況にある。今後、高齢ドライバーのより一層の増加が確実な日本において、運転免許を返納しても生活できる環境の創造は重要な課題である。そこで本研究では、岡山県において運転免許返納者を対象にアンケート調査を実施し、運転免許返納の条件や、返納後の生活で困っている要因について分析を行った。分析の結果、自主的に運転免許を返納するためには公共交通のサービスレベルが大きく影響していることを明らかにした。
著者
高見 淳史
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.145-148, 2011

社会的包摂の観点から雇用,教育,健康など重要性の高いサービスや活動機会へのアクセスを確保することは,少子高齢・人口減少時代を迎えたわが国にとって大きな課題である。本稿は,同様の問題意識のもとで2000年代中盤から英国・イングランドで進められてきたアクセシビリティ・プランニングの取り組みを取り上げ,その背景や枠組み,アクセシビリティ評価手法を概観する。また,交通施策だけでなく土地利用計画との統合を通じてアクセシビリティの問題に対処すべく,アクセシビリティの定量的評価を空間計画に反映させている(またはその方向で進めようとしている),グレーターロンドン,ウエストミッドランド,リバプールの事例を報告する。
著者
高見 淳史 大森 宣暁 青木 英明
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.55-60, 2011

2010年7月,ロンドン中心部で「Barclays Cycle Hire」のサービスが開始され,パリのVelib'に続く大都市での大規模な自転車共同利用システムの導入となった。本稿はこのシステムを取り上げ,導入の背景,Transport for London・Serco社・Barclays社など各主体の役割,需要予測の手法,ステーション敷地の選定基準,開業初期時点における利用状況や課題,などについて整理した。利用や運営の状況に関しては,計画された規模の完成に向けて整備が進められる途上の情報ではあるが,利用は1日平均約15,000回で目標水準に達していないこと,通勤利用の多さから一部地区で自転車や空きラックの不足が問題化していること,開業後の自転車再配置の改善やステーションの漸進的な設置の過程でそれへの対応が試みられていること,などを示した。
著者
北崎 朋希 有田 智一
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.639-644, 2013

本研究では、全国の都市再生特別地区の指定手続きの運用実態を明らかにすることで、都市再生特別地区の課題及び運用改善の方向性を提示することを目的としている。現在、都市再生特別地区は13自治体に60地区指定されており、約7割弱が東京都と大阪市に指定されている。このうち東京都では、民間提案制度を用いた指定を行う方針である一方で、大阪市は通常手続きによる指定を行う方針を採用している。 これらの自治体における指定手続きの実態を把握すると、「不確実性の高い公共貢献に対する評価、不明確な緩和容積率の設定根拠、不十分な公共貢献の評価と緩和容積率の設定体制、不完全な都市計画決定事項以外の履行担保」という課題が存在した。この課題を克服するためにも、公共貢献の評価や緩和容積率の設定に際して、学識経験者や地元住民の代表者等、不動産鑑定士、会計士、コンサルタント等の実務者の多様な主体が必要と考えられる。
著者
高橋 正義 十代田 朗 羽生 冬佳
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.571-576, 2003-10-25
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究は、戦後まもなく制定された観光関係特別都市建設法(以下、「国観法」)及び国観法制定都市に着目し、まず、(1)国会での議論から戦後復興期の観光政策の中で国観法並びに国観法制定都市がどのように位置付けられていたのか。を把握した上で、制定都市では、(2)法制定前後の時期に観光都市建設を目指してどのような計画が描かれたのか。さらに、(3)その構想実現のためにどのような具体的整備計画が立てられ、その後どのように変遷していったのか。の3点を明らかにすることを目的としている。資料としては、国会議事録、計画案、関連新聞記事、市史、関連文献・研究等を用いている。<BR> その結果、以下のことを明らかにしている。まず(1)国会での議論から観光政策が縦割り行政を越えられず都市計画行政の枠組みにはめられていったこと、また発言内容を総合すると、各都市の個別法を支える基本法あるいは一般法を制定すべきだという議論が議員からなされたが、政府はそれに対して都市計画法の改正での対応を示唆するなど否定的な見方をしており、結果的に国庫からの助成措置もほとんどなされることはなかったことを確認している。次に(2)各都市の計画内容から、現状認識を6項目、コンセプト4タイプ、主要目標14項目に大凡まとめている。この内、都市内部の条件や計画コンセプトに共通性がある都市間では、主要目標にも共通性がみられる傾向がある。一方で、国が推進する広域的な都市の位置付けよりも、都市内部に目を向けた計画となっていることが読み取れる。さらに(3)具体的な方策を見ていくと、法案提出以前から観光都市建設のビジョンのある都市では方策の中に観光要素が盛り込まれ、ビジョンを持っていなかった都市では既存の制度に則った計画づくりが行われているという史実を確認している。例えば、別府では、構想実現のため計画を既存制度に当てはめることが行われ、その後、国策の重点が工業開発へと変わると方向転換を余儀なくされ、結局、多くの事業が実施されることなく現在に至っている。<BR> 以上総括すると、国側における制度的裏付けの欠落、都市側での計画技術(構想力、実現力)の不足から国観法は機能しなかったと考えられる。<BR>
著者
山本 和生 橋本 成仁
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.763-768, 2012
被引用文献数
2

高齢ドライバーの引き起こす交通事故の増加が社会問題となっている。こうした事故を防止する目的で、運転免許返納制度が実施されている。多くの人がいつかは運転を諦めなければならないことを考えると、高齢ドライバーの増加が確実な我が国では、返納を行える環境を整えていくことが非常に重要な課題である。そこで本研究では、免許保有者と返納者で「車に頼らなくても生活できる」と感じる要因の違いについて把握し、保有者と返納者をわける意識構造、返納者の返納満足度に関する意識構造について分析を行った。その結果、保有者と返納者で要因や意識構造に違いがあること、また保有者の返納制度活用意向や返納者の返納して良かったと感じる意識を高めていくためには、公共交通の充実度を高めていく必要があることを明らかにした。
著者
栗田 治
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.27-27, 2003
被引用文献数
1

線分都市上の2つの店舗の立地競争に焦点を当てる.このテーマの嚆矢は周知のホテリングのモデルであろう.このモデルは3つ以上の店舗や様々な移動コストに関して一般化されてきた.しかしながら,客の店舗選択行動に関する一般化を行った研究は数少ない.そこで本研究では,客の店舗選択をハフモデルによって記述し,2つの店舗の市場占有率最大化行動を分析する.我々のモデルにおいては,店舗の立地競争は,必ずしも都市中央への集中に帰着しない.さらに本研究では,店舗の逐次立地競争を都市交通の速さとハフモデルの距離抵抗係数によって分類した.
著者
松原 康介
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.213-218, 2013

2011年3月に勃発したシリア内戦は今日まで終わりの気配がみられない。これまでの都市計画分野における協力の実績を考えると、内戦終了の折には戦災復興都市計画において日本が協力していくことが考えられる。この観点から、本稿はベイルートの都市計画通史の分析を行う。オスマン帝国時代の計画、フランス委任統治領時代の計画、あるいはエコシャールや番匠谷といった都市計画家の存在など、シリア主要都市との共通項が多いためである。エコシャールによる1943年の計画は、今日に至るまで後継計画に影響を与えており、ガルゴールとサイフィ二地区の再開発は、ハリーリー及びその後継者達による強いリーダーシップの下で現在進行中である。
著者
村木 美貴
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.602-607, 2015

オリンピックは地域の都市再生を推進する契機となりえる。本研究は英国の面的市街地再開発、特に、ロンドン・オリンピック・パーク(以下、オリンピック・パーク)に着目し、大規模な面的市街地開発の中でどのような計画間と主体間の連携が存在し、それがオリンピック後の都市づくりに活かされているのか明らかにすることを目的とする。研究の構成は以下の通りである。まず、オリンピックに関連する主体と計画の関係を明らかにした上で、オリンピック・パーク整備の方針をロンドン市と基礎自治体について見る。最後に大会のテーマである低炭素を基軸に、その政策と分散型エネルギーネットワークの導入における主体間連携について議論する。研究を通して、(1)横と縦の計画間の連携は十分図られていたが、全体最適が地域の課題となるケースも見られるため、インフラ整備のための資金を広域で提供すること、ハコもの整備のための資金提供を超えて、住民サービスなども含めたソフト事業に対しても、細かく対応すること、(2)投資回収に時間のかかる地域冷暖房事業では、契約のための透明なプロセスと、市民、民間、公共にとってメリットが享受できる状況を考えることを指摘した。