著者
小島 直子 コジマ ナオコ
出版者
同志社大学学習支援・教育開発センター
雑誌
同志社大学学習支援・教育開発センター年報 = Doshisha University annual report of Center for Learning Support and Faculty Development
巻号頁・発行日
no.7, pp.25-41, 2016-06-30

第一部研究論文・実践報告<研究論文>本稿では日本の大学において急速な広がりを見せている、言語の学習を主たる目的としない英語による開講講座(English as a Medium of Instruction, 以下EMI)の現状とその問題点を探った。EMI準備講座履修生への質問紙及び面接調査を行い、EMIでは英語学習動機づけと科目学習動機づけの間に正の相関がある可能性、科目に関する予備知識と英語学習動機づけがEMIにおける学習動機づけに影響している可能性が示唆された。
著者
宮島 直子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.116-127, 2010-06-30

本研究の目的は,統合失調症患者の手記から,発症前エピソードを生活の視点で抽出し,その概要を記述することである.手記を研究対象とすることは,研究に関わるプライバシーの問題を解決するとともに当事者に詳細に尋ねることによる過重なストレスを与えない方法として,有効と考えた.研究の手順および分析方法は,まず手記から発症前生活エピソードが記述されている文章をすべて抜き出し,一文を一データとした.次にデータは,意味内容から抽象度を上げコード化し,それぞれのコードは類似性を基にカテゴリー化した.そして得られたカテゴリーの関連性を検討し,カテゴリーについての説明可能な軸を抽出した.結果として,9冊の手記から3,401のデータを得た.データから138の二次コードを抽出し,それらは13のカテゴリーに分類できた.そして,それらのカテゴリーは6つの軸で説明することができた.軸は,【対人関係をめぐる苦痛】【認識の歪み】【的外れな対処】【状況把握の困難】【日常生活上の障壁】【仮面の生活】であった.【状況把握の困難】は,人間の言動の根幹に影響を与え,他のすべての軸に関連する中核的存在とみなすことができた.それぞれの軸について,過去の文献と比較検討し,その妥当性を確認した.
著者
小松原 幸子 花牟礼 豊 須田 佳人 春田 厚 笠野 藤彦 鹿島 直子
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.412-415, 2008-05-20
被引用文献数
2 10

耳鼻咽喉科領域では, 脂肪注入術は, 主に声門閉鎖不全に対し行われる方法である. われわれは, 喉頭摘出後にボイスプロステーシス (PROVOX2<SUP>®</SUP>) を留置したがシャント孔が拡大し, 保存的には縮小困難であった症例に遭遇した. この症例に対し, 声帯内脂肪注入術を応用して, シャント孔周囲に脂肪を注入した. その結果, シャント孔の十分な縮小が得られた. これにより, ボイスプロステーシスを用いた発声が継続可能となった.
著者
満島 直子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本年度は、政治、道徳論に関する著作を中心に「怪物」の種類や扱いを調査することで、社会的次元の問題へ考察を進めた。この分野での怪物概念は、個人の内面、社会のシステム、真、善、美の三位一体論等のテーマを中心に、統一性(ユニテ)の理想を前提とするなどの基本的特徴を保ちつつ、自然科学や美学思想の変化と連動しながら、年代毎に推移していくことを確認できた。特に、目的論的理神論から唯物論的一元論への移行後、宗教的道徳基準が消失すると、様々な「怪物」の例が、理論の可能性や限界を見極める思考方法として利用されていくことになる。ディドロの著作において、通常と異なる性質をもつ人物の一部は、支配的立場や、非現実的立場に意義を申し立てるという形で著者の思考を活性化させたり、人間の自然な性質を取り戻させるオリジナリティを持つ人物、人類を進歩させる天才等として評価される。また、通常の多くの人間も、複数の矛盾する傾向を持つ点で怪物と考えられており、そうした矛盾の起源と考えられる、個人の自然な性質と社会との軋轢をなくすためには、自然法、宗教法、市民法の一致が必要とされる。しかしその実現は難しく、街、国家などの団体もまた怪物とされる事がある。ディドロは悪人への憧れももつ一方で、基本的には社会の為になる行動を評価し、種の幸福を顧みない人間は、賞罰などで修正不能な場合、共同体からの追放や抹殺が正当化されていく。但し、善悪の区別は困難で、ディドロ自身、自分が怪物なのだと考える一面があり、価値基準の設定の難しさが示されている。自然論において、稀な形も現象の必然的結果と説明されるようになると、必然のものに善悪はないとの発想から、身体や環境によって悪行へ決定付けられる個人への責任追求や、共通道徳の基礎付けが困難となる。このためディドロの怪物概念は、規範学において大きな問題を提起するテーマであることが明らかになった。