著者
宮島 直子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.116-127, 2010-06-30 (Released:2017-07-01)
参考文献数
25

本研究の目的は,統合失調症患者の手記から,発症前エピソードを生活の視点で抽出し,その概要を記述することである.手記を研究対象とすることは,研究に関わるプライバシーの問題を解決するとともに当事者に詳細に尋ねることによる過重なストレスを与えない方法として,有効と考えた.研究の手順および分析方法は,まず手記から発症前生活エピソードが記述されている文章をすべて抜き出し,一文を一データとした.次にデータは,意味内容から抽象度を上げコード化し,それぞれのコードは類似性を基にカテゴリー化した.そして得られたカテゴリーの関連性を検討し,カテゴリーについての説明可能な軸を抽出した.結果として,9冊の手記から3,401のデータを得た.データから138の二次コードを抽出し,それらは13のカテゴリーに分類できた.そして,それらのカテゴリーは6つの軸で説明することができた.軸は,【対人関係をめぐる苦痛】【認識の歪み】【的外れな対処】【状況把握の困難】【日常生活上の障壁】【仮面の生活】であった.【状況把握の困難】は,人間の言動の根幹に影響を与え,他のすべての軸に関連する中核的存在とみなすことができた.それぞれの軸について,過去の文献と比較検討し,その妥当性を確認した.
著者
中島 直子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.14, pp.1001-1024, 2003-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
73

19世紀,大英帝国の首都ロンドンは拡大を続け,1851年に人口は236万人を超えた.中産階級は,次第に環境の良い郊外に移り住み,スラム化した都心部には労働者が多数残された.しかし大都市問題に関わる公的機関の介入は限られ,改良事業の多くが博愛主義者の慈善活動に依存していた.本稿では,1860年代以降,英国のオープン・スペース運動の発展に貢献した,社会改良家オクタヴィア・ヒルの環境への関心と行動の範囲・内容を明らかにする作業を通して,緑に囲まれた都市や国土の景観を保全する活動が,当時の人間のいかなる意識や理解に基づいて始まり,社会の批判や合意を得て進んでいったのかを検討する.ヒルのオープン・スペース運動は,都心部に小さな遊び場を造ること,身近な「使われない墓地」を開放することから始まり,コモンやフットパスの保護,英国南東部ウィールド丘陵の眺望点の保護,さらに湖水地方の景勝地の保護へと発展した.19世紀末にオープン・スペース運動は躍進期を迎え,ヒルは英国全体のオープン・スペースの保護を対象とし得るナショナルトラスの創設者の一人となった.ヒルの著した論文・書簡・報告文の内容から・オープン・スペース意識と行動とを検討し,オープン・スペース運動は博愛主義に基づく社会改良事業から始まった環境保護運動であり,「美の普及」に関わる芸術活動と関連していたこと,さらに彼女のオープン・スペース運動への貢献が,先行研究で示された本のより大きかったことを論じる.
著者
辻村 祐香 西村 さなえ 飯島 彩花 小林 礼奈 宮島 直子
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.3-9, 2020-03-31

本研究の目的は,サージカルマスクの着用の有無による笑顔度の相違を異なる笑顔度において調査することであった。対象者はA大学の日本人看護学生75名であった。対象者は,同一人物の10種類の顔写真を見て,笑顔度を0%(笑顔なし)から100%(満面の笑み)で判定した。提示された10種類の写真は,笑顔測定器で0%,25%,50%,75%,100%と評価された顔写真,およびそれらをサージカルマスクと合成した顔写真であった。顔写真は,アトランダムに1枚につき10秒間提示した。結果として,笑顔度100%の顔写真を除きサージカルマスクの着用の有無で有意差を認めた。笑顔度が25%,50%,75%の場合,サージカルマスクの着用により,10~20%程度低い笑顔度で受け取られることが確認された。調査結果からサージカルマスク着用時に笑顔による肯定的フィードバックをする場合には,笑顔度を高めるか,他のコミュニケーション・チャンネルで補う必要が示唆された。
著者
佐島 直子
出版者
日本ニュージーランド学会
雑誌
日本ニュージーランド学会誌
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-54, 1999-12-10

冷戦下、ニュージーランドは、ANZUS同盟(米国、オーストラリアとの三国間同盟)の一員として,西側の安全保障に積極的に貢献した。しかしニュージーランドでは、70年代から国民の反核意識が高まり、80年代に入ると核に対する態度の違いから、米国との同盟関係に亀裂が生じた。1985年、米海軍の核兵器塔載可能な駆逐艦「ブキャナン」の寄港をニュージーランドが拒否したことから、米国はニュージーランドへの安全保障義務を停止し、現在もなお、その関係は改善されていない。 このANZUS機器を契機として、ニュージーランド労働党政権は,より自立的、地域的な安全保障上の役割を模索した。その結果、ニュージーランドでは冷戦の終焉を待たずして、周辺各国との間に独自の安全保障ネットワークが形成された。 しかしながら、1990年に成立した国民党政権(その後一時連立政権)は、米国との関係改善を最重要外交課題として掲げ、湾岸戦争ではいち早く医療チームを派遣するなど、伝統的な安全保障上の役割への回帰を希求している。もっとも、核に対する強硬な政策は国内政治上の配慮から転換されていない。また、80年代半ばから進められた行政改革の波は国防予算をも締め付けている。軍事力の近代化が著しいアジア・太平洋地域にあって、ニュージーランド装備は老朽化が目立っている。1997年にはようやく長期的な防衛力整備計画が示されたものの、その実現には様様な障害が立ちはだかっている。かたや、冷戦後の国際社会では国際的な平和維持活動の所要は拡大する一方である。現状のニュージーランドの防衛力では、いずれ思うような貢献がままならない事態となる。 今後のニュージーランドは、安全保障上の役割を抜本的に参考する必要がある。とりわけ問題となるのは、陸海空三軍の合理的統合;オーストラリア軍との防衛力緊密化計画;周辺国との良好な安全保障関係の維持・継続;平和維持活動への参加基準、の見直しである。 こうした課題と真摯に取り組むことで、米国とも「同盟国ではないが友好国」としての新しい関係が構築されていくであろう。また、安全保障上の役割を拡大している日本との二国間関係も今後より重要になるであろう。
著者
奥田 匠 花牟礼 豊 笠野 藤彦 鹿島 直子
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.9, pp.835-841, 2005-09-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
26
被引用文献数
6 4

蝶形骨洞に限局した疾患あるいは蝶形骨洞を主病変とする疾患では, 頭痛・眼症状など, 通常の鼻副鼻腔疾患とは異なった症状により耳鼻咽喉科以外の科で気付かれることが多い. このような症例には炎症や嚢胞性疾患が多いが, 良性腫瘍や悪性腫瘍, 真菌症も含まれる. それぞれが比較的まれな疾患であるため本邦では数例ずつの症例報告とならざるを得ず, 概要がつかみにくい. 今回我々は, 1999年から5年間に鹿児島市立病院耳鼻咽喉科を受診し, CTやMRIの画像により蝶形骨洞が主病変と診断された44例 (男性21例, 女性23例) を対象に, 病変の分類, 主訴, 治療法等を検討し, 蝶形骨洞を主病変とする疾患の診療の指針について考察した. 病変の内訳は炎症32例, 嚢胞8例, 良性腫瘍1例, 原発性悪性腫瘍2例, 転移性悪性腫瘍1例であった. 症状は頭痛が59%, 眼症状が27%に認められた. 眼症状の内訳は, 炎症症例の60%が眼痛であり, 嚢胞症例の63%が視力低下, 腫瘍症例の100%が複視と, 病態により症状が異なる傾向があった. 頭痛に複視を来した場合は悪性腫瘍の可能性が高く特に注意を要する. 保存的治療に反応の良い症例以外では, 腫瘍性疾患も含め, 診断的治療を兼ねた内視鏡下鼻内副鼻腔手術が有用であった. 早急な治療を要する疾患 (急性化膿性炎症, 視力障害を伴う嚢胞, 悪性腫瘍) の鑑別が重要と考えられた.
著者
中島 直子
出版者
お茶の水地理学会
雑誌
お茶の水地理 (ISSN:02888726)
巻号頁・発行日
no.33, pp.45-56, 1992-05-09
被引用文献数
1
著者
中島 直子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.14, pp.1001-1024, 2003-12-01
参考文献数
74
被引用文献数
1

19世紀,大英帝国の首都ロンドンは拡大を続け,1851年に人口は236万人を超えた.中産階級は,次第に環境の良い郊外に移り住み,スラム化した都心部には労働者が多数残された.しかし大都市問題に関わる公的機関の介入は限られ,改良事業の多くが博愛主義者の慈善活動に依存していた.本稿では,1860年代以降,英国のオープン・スペース運動の発展に貢献した,社会改良家オクタヴィア・ヒルの環境への関心と行動の範囲・内容を明らかにする作業を通して,緑に囲まれた都市や国土の景観を保全する活動が,当時の人間のいかなる意識や理解に基づいて始まり,社会の批判や合意を得て進んでいったのかを検討する.ヒルのオープン・スペース運動は,都心部に小さな遊び場を造ること,身近な「使われない墓地」を開放することから始まり,コモンやフットパスの保護,英国南東部ウィールド丘陵の眺望点の保護,さらに湖水地方の景勝地の保護へと発展した.19世紀末にオープン・スペース運動は躍進期を迎え,ヒルは英国全体のオープン・スペースの保護を対象とし得るナショナルトラスの創設者の一人となった.ヒルの著した論文・書簡・報告文の内容から・オープン・スペース意識と行動とを検討し,オープン・スペース運動は博愛主義に基づく社会改良事業から始まった環境保護運動であり,「美の普及」に関わる芸術活動と関連していたこと,さらに彼女のオープン・スペース運動への貢献が,先行研究で示された本のより大きかったことを論じる.
著者
森満 保 平島 直子 松元 一郎
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-30, 1973

In 1971 Morimitsu et al reported on the effects of sodium chloride crystals administered on the round window membrane upon the cochlear microphonics which were recorded from the basal turn of the cochlea of guinea pigs with differential electrodes technique. The amplitude of CM after the administration of NaCl-crystals showed changes in a regular pattern which is composed of an initial overshoot, a primary decrease, a recovery and a secondary decrease. It was considered that the action of NaCl-crystals should be affected by the permeability of the round window membrane, the production and absorption of the inner ear fluids and the vulnerability of the organ of Corti by the biophysical changes of the fluids.<BR>In order to clarify the mechanism ofthese changes of CM and the effects of sympathomimetic and sympathoplegic drugs in the cochlea, the changes of CM modified by NaCl-crystals were observed after the intravenous injection of the following drugs; norepinephrine, isoproterenol, epinephrine, phenoxybenzamine and propranolol. The &alpha;-receptor stimulant (norepinephrine) prolonged the initial overshoot and depressed the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade, of the secondary decrease. The &beta;-receptor stimulant (isoproterenol) depressed the grades of both decreases and therefore the recovery after the primary decrease was complete. The &alpha;-receptor blockade (phenoxybenzamine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot, and depressed the grades of both decreases. The &beta;-receptor blockade (propranolol) acted to depress the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade of the secondary decrease. The &alpha;-&beta;-receptor stimulant (epinephrine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot and influenced so as to depress the both decreases. The action of epinephrine showed a slight resemblance to that of the 13-receptor stimulant. The results obtained showed that the &beta;-receptor stimulant and the &alpha;-receptor blockade have a favorable effect on the reactivation of the homeostatic processes govering the labyrinthine fluids and have a effect to minimize the irreversible damage of the organ of Corti occurring after the placement of NaCl-crystals. Considering different actions between &alpha;-receptor acting drugs and the &beta;-receptor acting drugs, it is suspected that the sympathetic nerves in the cochlea also consist of the a and &beta;-receptor which act in a sense antagonistic. As the several possible mechanisms of the actions of these drugs, an effect on the permeability of the blood vessels of the cochlea and of the round window membrane besides an effect on the cochlear blood flow was considered. Furthermore, an effect on the sympathetic nerve which was recognized in the basilar
著者
中島 直子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.39, 2007

<BR> 英国の社会改良家オクタヴィア・ヒルはオープン・スペース運動の中心人物である.同運動は1880年代から1890年代にかけて全盛期となる.ヒルは同運動を発展させるために,関係者と協力し,コモンズ保存協会・カール協会・首都圏公共公園協会・コモンズ保存協会ケント・サリー委員会・ナショナルトラストなどオープン・スペース運動を行う複数の組織の充実や創設に関与する.ヒルは同運動を,労働者階級を対象とする住宅改良運動を行う仲間たちと共に始めるが,イングランド教会の牧師,博愛主義者,芸術家,高位聖職者,労働者層らも協力した.シティ,教区会,地域委員会区,首都圏建設局など地方自治体の議員,ならびに上下両院の国会議員ともヒルは交渉があった.オープン・スペースを都市内外に保護する活動を全英に周知させ,同運動を発展させるには,国会での同問題の発議・審議,さらに法案の制定など国会議員との連携が必要であったからである.<BR> 1850年代~1880年代にかけてヒルが友人に宛て書いた書簡を中心資料として,彼女と議員と社交の拡がりを示す.ヒルはシャフツベリー,ケイシャトルワース,ショールフェーブル,クロス,ホランド,ブライス,オコナーらの国会議員との交渉があった. 上記議員の所属は上下両院,与野党,自由・保守両党と様々であるが,彼らは各々の立場と得意とする諸分野とから社会改良を実現させようとするリベラルな議員であった.なかには福音主義者やアイルランド自治論者も含まれた.<BR> 今回の発表では,ヒルや議員の著した論文ならびに国会議事録を資料に加え,彼女と国会議員との交渉の内容と拡がりを検証する.19世紀後半の英国で,オープン・スペース運動が,どのような議員の関心と支持を得ていたのか.ヒルはどのように巧みに活動し,同運動を強化,発展させることに成功したのか明らかにする.
著者
北村 元仕 仁科 甫啓 飯島 直子 橋本 史子 三輪 史朗 掛橋 順子
出版者
Japan Society of Clinical Chemistry
雑誌
臨床化学シンポジウム (ISSN:03863417)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.178-181, 1972

A case of complete deficiency of lactate dehydrogenase subunit H has been presented. Deficiency of LDH H-subunit of this case is one of inborn errors of metabolism. The propositus (J. A.) is a 64 year-old male with mild diabetes, which has been under good control by restricted diet and torazamide. Low serum LDH activity was noticed upon recent laboratory check-up, and finally, complete absence of LDH H-subunit was discovered by serum isoenzyme study. In addition, the erythrocytes, leukocytes, platelets as well as saliva of the propositus were found to be deficient in LDH H-subunit. LDH of the propositus was composed only of M-subunit. Hence, the LDH isoenzyme patterns of the serum, blood cell and saliva in the propositus showed only one band, LDH-5 (MMMM tetramer). It is of special interest that erythrocytes fructose 1, 6-diphosphate, dihydroxyacetone phosphate, as well as glyceraldehyde 3-phosphate concentration in the propositus were found to be definitely increased. These data strongly suggest that disturbance in erythrocyte glycolysis exists at the glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase step. However, the erythrocyte glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase activity in this case was within the normal range, which suggests indirectly that the cause of this disturbance in glycolysis might be due to high NADH and relatively low NAD caused by block of LDH step. In the whole blood of the propositus, lactate concentration came out to be low, whereas that of pyruvate was within the normal range.<BR>The studies on reduction of methemoglobin with glucose and lactate suggest that LDH activity plays only a minor role in the reduction of methemoglobin in human erythrocytes.
著者
原 進 三島 直子 桑村 航矢
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.855, pp.17-00303-17-00303, 2017 (Released:2017-11-25)
参考文献数
10

Horizontal moving body settling control mechanism which is mainly realized by momentum exchange, can be expected to save time of article transportation. Momentum exchange impact damper (MEID) is one of the mechanisms in order to solve shock response control problems. This paper proposes a novel hybrid mechanism consisting of passive MEID (PMEID) deceleration and active MEID (AMEID) rebound suppression for realizing rebound reduction of horizontal moving body colliding with a wall. In this method, all of the dampers are not released to the outside of the horizontal moving body but captured by soft springs to assume the actual usage condition. For the same reasons, the function to reduce the rebound and to extend the time in the state of zero rebound velocity is especially focused. The effectiveness of the proposed method is discussed by simulations and experiments. Simulations are conducted with both ideal and experimental conditions. Compared with the system with AMEID or PMEID only, the proposed hybrid MEID combines the advantages of each system and can realize settling control efficiently without releasing dampers out of the horizontal moving body. Ideal simulation results show that it is possible to reduce the rebound and the acceleration of moving body at the time of the collision, and reduce the active control input, simultaneously. These two advantages of the proposed method are also shown by the simulations with experimental conditions and the experimental results.