著者
島田 和子 野村 寛美 原 由美 藤本 房江 喜多村 啓介
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.122-128, 1998-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
25
被引用文献数
7 9

豆腐の食味に及ぼすLOXの影響について検討するために,普通大豆とLOX欠失大豆を用いて調製した豆腐の各種成分含量と官能評価との関係について調べた.普通大豆としてスズユタカ,LOX欠失大豆として各々スズユタカを反復親として育成されたゆめゆたか(2,3欠)といちひめ(全欠)を使用した.(1) スズユタカの豆腐はいちひめ(全欠),ゆめゆたか(2,3欠)の豆腐と比べて有意に甘味が感じられた.こく味の程度はスズユタカ,いちひめ(全欠),ゆめゆたか(2,3欠)の順で感じられ,スズユタカが最もこく味があるとパネルにより判断された.不快味程度は3種の豆腐間で違いは認められなかった.(2) 豆腐中の水分含量,タンパク質含量,総脂質含量は各豆腐間において大きな差は認められなかった.(3) 甘味を呈する遊離糖のスクロース,スタキオース,ラフィノース,グルコース含量は各豆腐間において差がなかった.(4) 不快味成分であるイソフラボン組成と各含量は各豆腐間で大きな差はなかった.(5) カルボニル化合物とヘキサナールは,普通大豆スズユタカの豆腐においてLOX欠失大豆の豆腐よりも多く含まれていた.上記の他成分量に豆腐間の差はなかったことから,官能評価で認められた豆腐のこく味を示す成分の一つはLOXによる脂質酸化生成物であると推察された.さらに,脂質酸化生成物が豆腐の甘味を増強する可能性も示唆された.
著者
高杉 美佳子 加藤 雅子 前田 典子 島田 和子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.121-127, 2010-03-15 (Released:2010-05-01)
参考文献数
32

14種の乾燥ハーブ熱水抽出物のヒスタミンおよびロイコトリエン(LT) B4放出抑制作用,DPPHラジカル消去活性,デオキシグアノシン酸化阻害活性を検討し,ポリフェノール量およびフラボノール類量を定量した.ペパーミント,ローレル,バジル(F),ローズマリーは,ラット腹腔細胞からのヒスタミンの放出を50%以上抑制し,ポリフェノール量の多い乾燥ハーブ熱水抽出物ほどヒスタミン放出量が低下する傾向が認められた.また,タイム,スペアミント,マジョラム,セージ,オレガノ,ペパーミント,タイム(F),ローズマリー(F),ローズマリーは,LTB4の放出を約50%以上抑制した.ヒスタミンおよびLTB4放出を抑制した乾燥ハーブ熱水抽出物には,ポリフェノールが多く含まれ,DPPHラジカル消去活性およびデオキシグアノシン酸化阻害活性が高い傾向が認められた.この結果は,ハーブ熱水抽出物によるヒスタミンおよびLTB4放出抑制作用では抗酸化作用を有するポリフェノール類が関与している可能性を示唆しており,その作用機序の一つとして,ラジカルの消去が考えられる.
著者
島田 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.957-962, 2003-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25

緑茶浸出液に含まれる茶葉サポニンの簡易定量法について検討した.(1) 緑茶浸出液中の茶葉サポニンをフェノール硫酸法にて測定すると, 共存するカテキン類も発色し, 大きな測定誤差が生じる.そこで, 緑茶浸出液の茶葉サポニンとカテキン類を固相抽出カラムで分離して, 茶葉サポニンを測定する方法を検討した.標準物質の EGCGを保持させた固相抽出カラムに20%メタノール水溶液15mlを通すと約95%のEGCGが溶出された. 一方, カラムに保持された茶葉サポニンは20%メタノール水溶液15mlを用いても3%以下しか溶出されず, 80%メタノール水溶液5mlで完全に溶出された.(2) 緑茶の主要カテキン類の中で, EGCG, EGCおよびECは20%メタノール水溶液15mlで95% 以上が溶出されたが, ECGは約30%が溶出されなかった.しかし, ECG はEGCG, EGC に比べて緑茶に含まれる量が少ないことから, また, 発色強度も茶葉サポニンの約1/6と低いことから, 茶葉サポニン画分にECG が混入しても大きな測定誤差にはならないと考えられる.(3) 以上の検討結果から, 緑茶浸出液の固相抽出カラムによる分画は次のとおりとした.緑茶浸出液 2ml を固相抽出カラムに注入し, さらに蒸留水8ml を流して水溶性ペクチン画分 (水溶性ペクチン定量試料) を回収した.次いで20%メタノール水溶液15ml をカラムに通してカテキン類を除去した後, 80% メタノール水溶液5ml を通して茶葉サポニン画分 (茶葉サポニン定量試料) を回収した.(4) 回収した画分を用いて, 各種緑茶浸出液中の茶葉サポニンをフェノール硫酸法で, 水溶性ペクチンをカルバゾール硫酸法で定量した.その結果, 通常の飲用条件では, 茶葉サポニンは玉露に多く, 次いで煎茶および抹茶, ほうじ茶, 番茶の順で多く含まれていた.水溶性ペクチンは玉露と抹茶すなわち覆下茶に多く含まれることが認められた.
著者
島田 和子
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

抹茶は、5月に製造された新茶(碾茶)を半年以上低温下で熟成保存させ、それを茶臼で微細紛にしたものである。保存しない新茶(碾茶)を用いて製造した抹茶は、抹茶特有の香り、こく味などの風味に欠け、泡立ち性も劣ることが製茶業者では知られている。この研究は、「抹茶特有の風味が生じるためには、なぜ碾茶を熟成保存する必要があるのか」について明らかにすることを主目的とし、以下の結果が得られた。抹茶の官能評価では、碾茶を含気包装で6ヶ月間保存して調製した抹茶は、保存しない碾茶から調製した抹茶より、うま味・甘味があり、渋味・苦味が抑えられ、まろやか感があると判断された。また、窒素充填包装保存よりも含気包装保存の方が、抹茶らしい風味があると判断された。渋味・苦味成分であるカテキン類の抹茶溶出液中の量は、保存期間が長くなるにつれて僅かに減少した。苦味成分のカフェイン、うま味・甘味成分の遊離アミノ酸、甘味成分の遊離糖の各溶出量は保存期間中ほぼ一定であった。抹茶の泡立ち性は含気保存6ヶ月の抹茶が最も泡立ち性が良く、次いで窒素充填保存6ヶ月の抹茶、保存0ヶ月の抹茶の順であった。以上の結果より、碾茶を保存した抹茶の方が抹茶らしい風味であって、総合的においしいと評価が得られたのは、泡立ち性の向上がその一因であると推察した。碾茶を5℃、6ヶ月間保存しても、抹茶中の総ビタミンC及びアスコルビン酸の残存率は80%以上で高かった。クロロフィル及びクロロフィル誘導体含量、クロロフィラーゼ活性も変化がなかた。以上のことから、抹茶の風味生成のための碾茶保存条件では、茶葉の品質は劣化しないことが確認された。また、カテキン類、カフェイン、ペクチンは茶葉採取時期による抹茶の風味の違いに大きく寄与していないことが認められた。