著者
川崎 真弘 米田 英嗣 村井 俊哉 船曳 康子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2014 (Released:2014-10-05)

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求された。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。その方略の違いは発達障害のスケールと有意に相関した。また発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。今後の課題として同時に計測した脳波・光トポグラフィの結果を合わせて発達障害の方略の違いに起因する脳ネットワークを明らかにすることを目指す。
著者
川崎 真弘
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求する運動模倣課題を用いた。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。反応時間によるパフォーマンス結果から、心的回転を報告した被験者だけで回転角度依存性が観測されたため、この聞き取り調査が正しかったことを確認した。また、その方略の違いは発達障害のスケールの中でも「こだわり」や「コミュニケーション」のスコアと有意に相関した。さらに発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。この課題遂行時の脳波と光トポグラフィの結果を解析した結果、発達障害者は自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意に前頭連合野の活動が増加することが分かった。前頭連合野の活動は従来研究で認知負荷と相関することが示されている。つまり、発達障害者は視点取得の戦略を使うと心的負荷がかかることが示唆された。以上の結果より発達障害者は他社視点を使う視点取得の方法より自己視点を使う心的回転を用いて運動模倣を行っていることが示された。今後はこのような戦略の違いがどのようにコミュニケーション困難と関係するかを分析する必要がある。
著者
川崎 真弘
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

発達障害者はコミュニケーションが苦手であることが知られているが、その原因については不明な点が多い。本研究では京都大学医学部と共同研究することで、定型発達との比較脳波研究を行った。これまでに計測した協調コミュニケーション課題時の脳波解析より、発達障害者は他者との協調で前頭葉に認知負荷がかかることを示し、論文発表した(Kawasaki, Funabiki, et al., Cogn. Neurodyn. 2014)。これらの脳活動は発達障害の特徴の中でも特に「こだわり傾向」と関係することがわかった。さらにこれまでに定型発達者を対象として交互発話中に発話リズムが同期する2者間では脳波リズムが同期することを示してきた(Kawasaki, et al., Sci. Rep. 2013)。この解析方法を用いて、定型発達者と発達障害者の2者間の脳波リズム同期を比較した結果、発達障害者は脳波リズムが同期が少ないことがわかった。さらに位相振動子モデルおよび情報理論を用いて2者間の関係性を推定する研究を行っている。この成果について現在論文執筆中である。また発達障害者と定型発達者に対して、運動模倣課題を行った結果、発達障害者の多くは心的回転を、定型発達者の多くは視点取得の戦略を用いることが分かった。さらに発展研究として、視覚・聴覚記憶課題時の脳波、fMRI実験を実施し、発達障害者の注意の偏りに起因した脳活動や、うつ病患者の脳ネットワークの障害の検証を行っている。上記の研究は将来的に脳メカニズムから精神疾患を判断する診断法の開発に貢献する。
著者
川崎 真弘 山口 陽子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.9, pp.1570-1578, 2011-09-01

我々の日常生活における行動の多くは好きまたは嫌いなどの「主観的な好み」に左右されることが多いが,その神経機構については不明な点が多い.そこで本研究では,主観的な好みがワーキングメモリ容量に与える影響とそれに関わる脳波リズムの特定を試みた.19名の被験者に対して,好きな色と好きではない色に塗られた視覚刺激を用いて遅延見本合せ課題を行い,そのパフォーマンスと脳波の変化を調べた.その結果,好きな色を使った図形に対するパフォーマンスは好きではない色に比べて高いことが分かった.また記憶期間中の脳波データの周波数解析は,前頭連合野と頭頂連合野のシータ波(3~6 Hz)とアルファ波(9~14 Hz)が増加する結果を示した.興味深いことに,前頭連合野シータ波は記憶量が増えるにつれて増加するのに対して,頭頂連合野アルファ波は減少した.特に好きな色の記憶期間中にはこの前頭連合野のシータ波に加えて,ベータ波(15~20 Hz)も増加し,好きな色を用いたワーキングメモリ容量増加分と相関することが分かった.以上の結果より,前頭連合野シータ波は負荷が大きい能動的なワーキングメモリ保持に関わること,このシータ波に加えベータ波が主観的な好みに影響を受けることで保持容量が増加することが示唆された.
著者
川崎 真弘 山口 陽子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.1570-1578, 2011-09-01

我々の日常生活における行動の多くは好きまたは嫌いなどの「主観的な好み」に左右されることが多いが,その神経機構については不明な点が多い.そこで本研究では,主観的な好みがワーキングメモリ容量に与える影響とそれに関わる脳波リズムの特定を試みた.19名の被験者に対して,好きな色と好きではない色に塗られた視覚刺激を用いて遅延見本合せ課題を行い,そのパフォーマンスと脳波の変化を調べた.その結果,好きな色を使った図形に対するパフォーマンスは好きではない色に比べて高いことが分かった.また記憶期間中の脳波データの周波数解析は,前頭連合野と頭頂連合野のシータ波(3〜6Hz)とアルファ波(9〜14Hz)が増加する結果を示した.興味深いことに,前頭連合野シータ波は記憶量が増えるにつれて増加するのに対して,頭頂連合野アルファ波は減少した.特に好きな色の記憶期間中にはこの前頭連合野のシータ波に加えて,ベータ波(15〜20Hz)も増加し,好きな色を用いたワーキングメモリ容量増加分と相関することが分かった.以上の結果より,前頭連合野シータ波は負荷が大きい能動的なワーキングメモリ保持に関わること,このシータ波に加えベータ波が主観的な好みに影響を受けることで保持容量が増加することが示唆された.