著者
左古 輝人
雑誌
ジェンダーをめぐるコミュニケーション齟齬の研究 : 専門的概念の再帰性に着目して
巻号頁・発行日
pp.17-39, 2014-12-15

「ジェンダー」という概念それ自体に照準し,専門知と日常知の関係をあきらかにするという,これまでの研究方針ににもとづき,各自データの収集・分析をすすめ,研究内容をまとめた.以下の内容はそれぞれ,ひとつの報告書としてまとめられ,現在編集作業をおこなっている.左古研究分担者は,検索語「ジェンダー」で該当する論文を網羅的に収集したコーパスを完成させ,「ジェンダー」概念のフレーム(関連概念との共起関係)がいつどのように変遷したのかを量的に分析し,日本社会学会大会において発表した.鶴田研究分担者は,相互行為のなかで実際に「ジェンダー」に関するふるまいがおきる様子を,医療従事者やトランスジェンダーのひとびとへのインタビュー調査にもとづいて分析し,日本社会学会大会において発表した.林原連携研究者は,保守系論壇誌『諸君!』所収の記事を対象に,反フェミニズム言説がどのように変遷して,近年のバックラッシュ言説が登場したのかを分析し,日本社会学会大会において発表した.江原研究代表者は,①「ジェンダー」概念の導入や否定をめぐるかけひき(鶴田・林原両研究者が質的に分析)を,②「ジェンダー」概念の変遷という文化的背景(左古研究者が量的に分析)に位置づけた.
著者
左古 輝人
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-21, 2009-03-30

From Auguste Comte onward, sociology has been a science to diagnose the contemporary human condition with long-term historical perspective. This paper clarifies the nature and the future of the modern State system, with reference to Philip Bobbitt's recent study on the history of the State that seems best represent the sociological spirit today. As Bobbitt says, the State -a permanent infrastructure that is represented as an entity autonomous from the ruler as a person-- is a political creation since the end of the 15^<th> century. The main source of state's power is not just physical, but also metaphysical, as its existence depends on people's belief in its unity (sovereignty) and rationality (reason of state). Although its volatility, the State system survived for these 500 years, and still strong enough. This mystery of the State will be unraveled by articulating the similarity between Thomas Hobbes's conception of 'natural state' and Bobbitt's conception of 'marketstate of terror'.
著者
江原 由美子 左古 輝人 鶴田 幸恵 林原 玲洋 須永 将史
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

学問の世界において生み出された概念である「ジェンダー」は,広く一般に使われる言葉として普及した.だが,その使用が政治的に批判されるようになると,「科学・社会・政治」が交錯し,相互に影響を与える状況が生じた.このような状況は,どのようなコミュニケーション齟齬を生み出したのだろうか.学問の世界における「ジェンダー」概念は,もともとかなり限定された文脈において創案されたものであるが,その文脈から切り離されることで,かえって広範な応用可能性を持つことになった.だが,その一方で,学問的であるか否かにかかわらず,「ジェンダー」概念の使用が批判されるという,複雑な政治的状況を招くことにもなったのである.