著者
平 英彰 寺西 秀豊 劒田 幸子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.1466-1471, 1992-10-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
3

季節はずれのスギ花粉飛散の現象を明らかにするため, スギ空中花粉の調査を3年間にわたって行うと共に, 10月及び11月におけるスギ雄花の開花条件を検討した. 7月上旬から9月下旬にかけて形成されたスギ雄花から飛散したと考えられる花粉は10月中旬以降認められた. 10月, 11月に採取した雄花を低温処理したあと6℃から20℃の温度条件下で栽培したところ, ごく限られた特定のスギの雄花は, 10℃以上の高温条件下で容易に開花し花粉を飛散させた. 10月から1月にかけての気温を検討すると, 10℃以上の気温の高い日が多かった. 雄花の開花状況は, すべての雄花がいっせいに開花し, 花粉を飛散するのではなく, 全雄花のおよそ1/3程度が開花するだけで, 同じ房の中でも全く開花しない雄花もあり, 枝によっても開花状況が異っていた. したがって, これらの時期に飛散するスギ花粉の濃度は低いが, 豊作年では局所的に高い濃度を示す地域もあると推定され, アレルギー症状を引き起こす場合もあると考える.
著者
平 英彰 吉井 エリ 寺西 秀豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1187-1194, 2004-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
27
被引用文献数
5

スギは日本の準固有種で, 最も古い化石は秋田県田沢湖の北方, 檜木内川の上流にある宮田のおよそ530万年前の地層から発見されている. このことから, 日本におけるスギの出現は, 他の針葉樹に比べ比較的新しいと考えられている. スギは現在, 青森県から鹿児島県の屋久島まで広く天然分布している. 日本列島に生育しているスギは, 環境に対する適応性が高く, 他の樹木に比べ成長が早く, また, 材は通直で割裂性が高いため, 柱などの建築材やたらい, 桶等の生活品として古くから利用され, 日本の文化を支えてきた重要な樹木である. 万葉集(十巻1814)にも「古の人の植けむスギが枝に霞たなびく春は来ぬらし」と歌われているように, スギの植林は1000年以上も前からおこなわれていた. 商品としての材を生産するための大面積の植林も400年以上も前からおこなわれており, 江戸時代においては, 都市近郊に大面積のスギの植林地があった. そして, 江戸末期から明治年代にかけて, 産業の発展に伴いスギ材の需要が高まり, 全国でスギの植林が盛んに進められた.
著者
平 英彰 寺西 秀豊 劒田 幸子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.1466-1471, 1992
被引用文献数
7

季節はずれのスギ花粉飛散の現象を明らかにするため, スギ空中花粉の調査を3年間にわたって行うと共に, 10月及び11月におけるスギ雄花の開花条件を検討した. 7月上旬から9月下旬にかけて形成されたスギ雄花から飛散したと考えられる花粉は10月中旬以降認められた. 10月, 11月に採取した雄花を低温処理したあと6℃から20℃の温度条件下で栽培したところ, ごく限られた特定のスギの雄花は, 10℃以上の高温条件下で容易に開花し花粉を飛散させた. 10月から1月にかけての気温を検討すると, 10℃以上の気温の高い日が多かった. 雄花の開花状況は, すべての雄花がいっせいに開花し, 花粉を飛散するのではなく, 全雄花のおよそ1/3程度が開花するだけで, 同じ房の中でも全く開花しない雄花もあり, 枝によっても開花状況が異っていた. したがって, これらの時期に飛散するスギ花粉の濃度は低いが, 豊作年では局所的に高い濃度を示す地域もあると推定され, アレルギー症状を引き起こす場合もあると考える.
著者
三浦 沙織 行田 正晃 山本 格 五十嵐 正徳 平 英彰
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-7, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
23
被引用文献数
8 12

四分子期に異常が発生するスギ雄性不稔4系統 (福島不稔1号, 福島不稔2号, 新大不稔11号, 新大不稔12号) の発現過程を明らかにするため, 光学顕微鏡, 蛍光顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, 透過型電子顕微鏡を用いてそれらの雄花の内部微細構造の観察を行った。小胞子形成過程において, 4系統はすべて正常個体と同様に四分子を形成した。しかし, カロース分解後小胞子に遊離せず, 花粉飛散期には塊状となって花粉は全く飛散しなかった。これらの雄性不稔では, カロースに囲まれている間に形成される外膜の初期外膜内層が発達せず, 小胞子同士が部分的に癒着していた。カロースの分解後, タペート組織からユービッシュ体の放出は認められず, 半透明の無定型物質が放出されそれが増加していった。4系統のスギ雄性不稔性が発現する原因は, 小胞子細胞質とタペート組織が, 花粉壁の外膜を構成する物質を正常に供給せず, 異常な活動を行うためであると考えられた。
著者
平 英彰 寺西 秀豊 劔田 幸子
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.377-379, 1993-07-01 (Released:2008-12-18)
参考文献数
8
被引用文献数
10

We found male sterility of sugi (Cryptomeria japonica D. DON) trees located in to Goto district of Toyama Prefecture. Sugi normally grows male and female flowers as well as produces seeds. The seeds usually have normal germination ability. By observation, both male and female flowers appeared to be almost normal. However, no pollen grains were dispersed from the male flowers in the pollination season from February through April in this particular sugi specimen. The inside structures of the male flowers appeared to be quite different from the normal flowers under an scanning electrion microscope. We observed no mature pollen grains in the pollen sacs of the male flowers collected before and during the pollination season. The lack of normal growth of the sporogenous tissue is suggested to be one of the causes of this male sterility.
著者
平 英彰 庄司 俊雄 寺西 秀豊 剣田 幸子 槻陽 一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.467-473, 1995-04-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

一般に空中花粉調査ではスギの花粉飛散は, 2月から3月にかけてスギ雄花の開花に伴って観察される. しかし, スギ雄花の花粉飛散状況を直接観察すると, スギ花粉は Durham型花粉検索器でほとんど検索されなかったが, 1月上旬からすでに肉眼的に少量の花粉飛散が認められた. また, スギ花粉症患者の発症は, 1月上旬から認められており, Durham型花粉検索器で観測したスギ花粉数から判定したスギ花粉飛散開始日までに, スギ花粉症患者1,366人の内265人(19.4%)が発症していた. したがって, 少量ながらスギ花粉は1月上旬からすでに飛散しており, 敏感なスギ花粉症患者においては, 1月上旬から, スギ林から飛散した花粉によって症状が誘発される場合があると考えられる.
著者
平 英彰 吉井 エリ 寺西 秀豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1187-1194, 2004
参考文献数
27
被引用文献数
6

スギは日本の準固有種で, 最も古い化石は秋田県田沢湖の北方, 檜木内川の上流にある宮田のおよそ530万年前の地層から発見されている. このことから, 日本におけるスギの出現は, 他の針葉樹に比べ比較的新しいと考えられている. スギは現在, 青森県から鹿児島県の屋久島まで広く天然分布している. 日本列島に生育しているスギは, 環境に対する適応性が高く, 他の樹木に比べ成長が早く, また, 材は通直で割裂性が高いため, 柱などの建築材やたらい, 桶等の生活品として古くから利用され, 日本の文化を支えてきた重要な樹木である. 万葉集(十巻1814)にも「古の人の植けむスギが枝に霞たなびく春は来ぬらし」と歌われているように, スギの植林は1000年以上も前からおこなわれていた. 商品としての材を生産するための大面積の植林も400年以上も前からおこなわれており, 江戸時代においては, 都市近郊に大面積のスギの植林地があった. そして, 江戸末期から明治年代にかけて, 産業の発展に伴いスギ材の需要が高まり, 全国でスギの植林が盛んに進められた.
著者
石井 浩之 中田 誠 加々美 寛雄 平 英彰
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-32, 2009

&nbsp;&nbsp;1. これまで研究事例のなかった,標高的な森林限界に達していない山岳の亜高山帯針葉樹林域に高山性植物群落が成立している要因を明らかにするため,長野県黒姫山のカルデラ内壁の岩塊斜面下部において,植物群落の特性,立地・気象要因について調査した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. TWINSPANの解析によって区分された各群落は,斜面下部から上部へ向かって順に,チシマザサ群落,コメバツガザクラ-ミネズオウ群集,コケモモ-ハイマツ群集,アカミノイヌツゲ-クロベ群集(オオシラビソ群集のコメツガ亜群集),オオシラビソ群集に相当すると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 黒姫山の岩塊斜面は最終氷期の中期ころ形成され,天狗の露地に成立している高山性植物群落(コメバツガザクラ-ミネズオウ群集)は,そのころに分布していた極地性植物群落に由来すると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 高山性植物群落の成立に対して積雪が影響を及ぼしているとは考えられなかったが,風穴から吹き出す冷気は高山性植物の繁殖や生存に影響を及ぼしている可能性が考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 天狗の露地には高木性樹種の種子が供給されていたが,岩塊上では土壌の発達がきわめて悪く,薄い植物腐植しか堆積していないため,定着した高木性樹種はその生育が著しく抑制されていた.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 本調査地の高山性植物群落に侵入し,その生育地を縮小させるパイオニア的役割を果たしている樹種は,ハイマツと低木状のコメツガであった.<BR>&nbsp;&nbsp;7. 本調査地の岩塊斜面上での植物群落の変遷は,高山性植物群落からコメツガ群落,オオシラビソ群落へと進んでいったと考えられ,岩塊斜面に侵入した植物によるリターの供給と有機物層の堆積が重要な役割を果たしていた.<BR>&nbsp;&nbsp;8. 岩塊斜面の下部に位置する天狗の露地では,粗大な岩塊の影響で土壌の発達が妨げられているために高木性樹種が定着しにくく,高山性植物群落が遺存できたと考えられた.
著者
平 英彰 嘉戸 昭夫
出版者
富山県林業技術センター
雑誌
富山県林業技術センタ-研究報告 (ISSN:09150013)
巻号頁・発行日
no.8, pp.19-23, 1994-12

1984年1月23日午前8時10分頃、杉の樹冠上部におわんをかぶせたような雪塊が発達していた。そして、それが約9日間保持され、2月1日その雪塊がとけて落ちたときに梢端が折れていることが確認された。樹幹上部に異常な雪塊が発達したときの降雪条件は、気温がプラスからマイナスに変化し、その間に約23cmの降雪があった。その後、気温は低温下で推移した。樹幹の変形過程を観察すると、冠雪が発達していく過程で梢端部は着雪によって大きく傾き、傾いた幹にさらに雪が積もって梢端部は下垂し、梢端部についている雪塊と下部の雪塊が融合し、梢端部は折りたたまれるような状態で大きな雪塊の中に埋もれた。その後、低温が続いたため、新雪がしまり雪に変化し、その時の雪の収縮に伴って梢端が折れたものと推定される。
著者
斎藤 真己 平 英彰
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.187-191, 2006-06-01
被引用文献数
1 2

スギ採種園における園外からの花粉汚染対策として,閉鎖したガラス室内にミニチュア採種園を造成し,その得失と有効性を検討した。ガラス室内のスギの開花時期は,雄花が2月4日から3月27日であり,雌花は2月5日から3月22日であった。これに対して,野外のスギ花粉飛散は2月21日から4月6日であったことから開花時期はガラス室内の方が野外より3週間程度早かった。室内の80%以上の個体が開花した時期は,雄花が2月17日から3月13日までで,雌花が2月15日から3月3日までであり,その期間はほぼ完全に重複していた。この採種園から得られた種子の発芽率は21.4%であり,従来型の採種園から得られた自然交配種子のそれと同程度であった。以上のことから,ガラス室内ミニチュア採種園を利用することで園外からの花粉汚染を防ぎ,さらに雌雄の開花期が揃うことから確実な交配が行われると期待される。今後のスギ造林は多品種を少量面積で植栽する方向に向かうと予想されることから,このことを実現する上においても,本手法は有効な手段になると考えられた。