著者
柚原 雅樹 鮎沢 潤 大平 寛人 西 奈保子 田口 幸洋 加々美 寛雄
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.275-287, 2005-11-30
被引用文献数
3 5

The Cretaceous granitic rocks, the Kitazaki Tonalite and Shikanoshima Granodiorite, and veneer Oligocene sedimentary rocks, the Tsuyazaki Formation, are distributed in the Watari Peninsula, Fukuoka Prefecture. There are mineral veins composed by calcite and zeolites in those rocks. Rb-Sr, and fission track geochronological analyses were carried out for granitic rocks, in order to determine the cooling process of granitic rocks and timing of hydrothermal activity. Biotite and felsic fraction separated from the Kitazaki Tonalite and Shikanoshima Granodiorite give Rb-Sr isochron age of 108.6 ± 2.5 Ma and 107.0 ± 0.7 Ma, respectively. Fission track ages from the Kitazaki Tonalite are 97 Ma (titanite), 89-88 Ma (zircon), 14 Ma (apatite). Fission track ages from the Shikanoshima Granodiorite are 95 Ma (titanite), 87-84 Ma (zircon), 15 Ma (apatite). Fission track ages of apatite from granitic rocks are younger than the Tsuyazaki Formation, which suggests a thermal event at about 15 Ma to reset the fission track apatite age. The homogenization temperature of fluid inclusions in calcite are 89-111 °C (Kitazaki Tonalite), 95-118 °C (Shikanoshima Granodiorite) and 85-91 °C (Tsuyazaki Formation). Sr isotopic compositions of calcite and zeolites in granitic rocks and Tsuyazaki Formation are overlap with one another. These data suggest that vein minerals in granitic rocks and zeolites and calcite in the IC Member of the Tsuyazaki Formation were formed by a series of hydrothermal activity at about 15 Ma.
著者
石井 浩之 中田 誠 加々美 寛雄 平 英彰
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.21-32, 2009

&nbsp;&nbsp;1. これまで研究事例のなかった,標高的な森林限界に達していない山岳の亜高山帯針葉樹林域に高山性植物群落が成立している要因を明らかにするため,長野県黒姫山のカルデラ内壁の岩塊斜面下部において,植物群落の特性,立地・気象要因について調査した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. TWINSPANの解析によって区分された各群落は,斜面下部から上部へ向かって順に,チシマザサ群落,コメバツガザクラ-ミネズオウ群集,コケモモ-ハイマツ群集,アカミノイヌツゲ-クロベ群集(オオシラビソ群集のコメツガ亜群集),オオシラビソ群集に相当すると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 黒姫山の岩塊斜面は最終氷期の中期ころ形成され,天狗の露地に成立している高山性植物群落(コメバツガザクラ-ミネズオウ群集)は,そのころに分布していた極地性植物群落に由来すると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 高山性植物群落の成立に対して積雪が影響を及ぼしているとは考えられなかったが,風穴から吹き出す冷気は高山性植物の繁殖や生存に影響を及ぼしている可能性が考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 天狗の露地には高木性樹種の種子が供給されていたが,岩塊上では土壌の発達がきわめて悪く,薄い植物腐植しか堆積していないため,定着した高木性樹種はその生育が著しく抑制されていた.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 本調査地の高山性植物群落に侵入し,その生育地を縮小させるパイオニア的役割を果たしている樹種は,ハイマツと低木状のコメツガであった.<BR>&nbsp;&nbsp;7. 本調査地の岩塊斜面上での植物群落の変遷は,高山性植物群落からコメツガ群落,オオシラビソ群落へと進んでいったと考えられ,岩塊斜面に侵入した植物によるリターの供給と有機物層の堆積が重要な役割を果たしていた.<BR>&nbsp;&nbsp;8. 岩塊斜面の下部に位置する天狗の露地では,粗大な岩塊の影響で土壌の発達が妨げられているために高木性樹種が定着しにくく,高山性植物群落が遺存できたと考えられた.
著者
本間 弘次 中村 栄三 加々美 寛雄
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1。薩南諸島海域の火山島・海底火山の岩石のRb・Sr・NdとSmの含量、およびSrとNdの同位体比を分析・測定し、一連の火山岩の成分変化の主要部分がマグマの分化によるものであること、島弧横断方向における微量元素を中心とする化学的変化が、マントルペリドタイトの部分溶融度の差にもとづく初生マグマの違いを反映するものであること、Sr-Nd同位体システマティックスは単なる2成分混合モデルでは説明できず、MORB源-堆積岩源スラブ成分からなるマントル源混合と島弧型マグマ-地殻岩石からなる地殻内混合の組み合わせ=2段階2成分混合モデルを考えなければならないことを明らかにした。2。琉球島弧系の新生代火山岩類では、後期更新世以降の、火山前線と背弧海盆の火山岩類はマントル配列を右上側に離れしかも高^<87>Sr/^<86>Sr低^<143>Nd/^<144>Nd比で特徴づけられる。硫黄鳥島の含石英安山岩はマントル配列のやや近くに位置する。一方第三紀のもの(トカラ列島平島のものを含む)はマントル配列に近い組成をもつ。尖閣諸島の現世アルカリ岩類はホットスポット型で、マントル配列上ないしその左下方に位置する。高苦土安山岩は比較的に海嶺玄武岩に近い同位体組成をもつ。これら同位体的特徴とその多様性は、1次的なものであり基本的にマグマ源物質の性質を反映している。マグマ源の性格は古第三紀から現世まで、それぞれの地質セッティングによって変化している。現世島弧-背弧系火山岩類のSr-Nd同位体システマティックスでの2成分混合モデルによれば他の島弧火山岩に比べ琉球系火山岩の^<87>Sr/^<86>Sr比が高く^<143>Nd/^<144>Nd比が低いのはスラブを構成する堆積物が大陸起源成分に富むことおよびマグマの変化の1部に地殻岩石が関わっているためである。これらは琉球島弧系が大陸縁にある若い沈み込み帯であってしかもやや厚い地殻をもつことと密接な関係にある。
著者
吉田 勝 奥平 敬元 有馬 真 古山 勝彦 加々美 寛雄 小山内 康人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1)平成11年度と12年度の2年間ににかけて、インド原生代変動帯を主題とし、UNESCO-IUGS-共催事業国際地質対比計画(IGCP)No.368プロジェクトの総括研究を行った。補助金によって蛍光X線分析装置と走査電子顕微鏡を購入し、後者には既存のEDXを装着し、研究地域の岩石・鉱物の分析的研究を行い、多くの成果を得た。インド楯状地及び関連地域の内いくつかの重要地域の野外研究を実施した。インドから科学者2名を招聘し、同位体年代分析あるいはインド原生代変動帯に関する全般的な情報提供を頂いた。また、インドの研究協力者らによってインド半島原生代変動帯の重要地域の地質研究成果のとりまとめが行われた。これらによってインド亜大陸の原生代変動帯に関する広く新しい知見が得られ、多くの国際集会に参加して研究発表、討詮及び研究のまとめを行った。2)これらの研究の結果、インドの原生代変動帯はメソ原生代のロディニア・東ゴンドワナの集合テクトニクスで重要な役割を演じたこと、ネオ原生代には基本的には再変動であったことが示された。最近Powellら(Gondwana Research 4,PP.736-737)などによって東ゴンドワナのネオ原生代集合モデルが提案されているが、我々の研究成果は、この新しいモデルはさらに精密な検討を要することを強く示唆している。3)これらの研究成果は研究分担者、協力者らによって国際誌等での学術論文公表135編・国際シンポジウムなどでの研究発表59題、国際誌特別号や学会メモアなど18冊の論文集冊などとして公表され、或いは印刷中である。4)本研究の成果報告書として「インドの原生代変動帯:IGCP-368の研究成果」(英文、GRG/GIGE Misc.Pub No.15)が発行された。本書は全376頁で、第1章:東ゴンドワナ研究の最近の進歩、2章:東ゴンドワナのテクトニクス、3章:インド半島のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、4章:アフリカと周辺地域のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、5章:南極のテクトニクスと岩石・6章:その他のゴンドワナ地域の地質、7章:IGCP-368プロジェクトの活動-国際シンポジウムとフィールドワークショップ-から成り、公表論文リスト、講演リスト、文部省提出書類ファイル一式が付録として付けられている。
著者
加々美 寛雄 飯泉 滋 大和田 正明 濡木 輝一 柚原 雅樹 田結庄 良昭 端山 好和
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.309-320, 1995-11-30
被引用文献数
10

瀬戸内・近畿地方の領家帯地域に分布する火成岩類の活動時期は, ジュラ紀初期-中期, 後期白亜紀, 中新世中期の3回である。最初のジュラ紀初期-中期に活動した火成岩類は領家花崗岩中に捕獲岩体として分布するはんれい岩, 変輝緑岩である。前者は下部地殻条件下 (6-8 kb) におけるソレアイト質マグマからの早期晶出相と考えられる。ノーライト, 角閃石はんれい岩, 変輝緑岩によるSm-Nd全岩アイソクロン年代は192±19 Maである。また, ノーライト, 角閃石はんれい岩中に不規則な形の産状を示す斜長岩質はんれい岩のSm-Nd全岩年代は162±29 Maである。後期白亜紀の火成活動は約110 Ma 前, 安山岩質マグマの活動で始まり, その後, 花崗岩の大規模な深成作用に引き継がれた。この深成作用は100-95 Maと80-75 Maの2つの時期に分けることができる。中新世中期の火成活動はユーラシア大陸から西南日本が分離, 移動したことにより引き起こされたものである。日本海形成(15 Ma)に関係した火成活動は, ユーラシア大陸東縁部の狭い範囲で始新世後期-漸新世初期に始まった。ジュラ紀初期*中期火成岩類の ^<87>Sr/^<86>Sr初生値, εNd初生値は後期白亜紀花崗岩類のこれらの値と似ている。このことは両火成岩類が似た起源物質から形成されたことを暗示している。一方, 中新世中期火成岩類のSr同位体比初生値, εNd初生値は以上の火成岩類の値とは著しく異なっている。中新世中期の日本海形成とともに, 西南日本弧の大陸性リンスフェアがフィリピン海プレート上にのし上げた。この出来事によって, 瀬戸内, 近畿領家帯地域下のリンスフェア・マントルはLILあるいはLREE元素に枯渇した化学組成をもつ様になった。中新世中期に活動した玄武岩はこの様にして形成された新しいマントルから形成された。高マグネシア安山岩は玄武岩を形成したマントルより浅い, 沈み込むプレートに由来する流動体相の影響を受けたマントルから形成された。安山岩, 石英安山岩は上部マントル由来のマグマと下部地殻の部分溶融によって出来たマグマとの混合物から形成された。それらのSr同位体比初生値とεNd初生値は, 下部地殻の部分溶融によって出来たマグマの寄与の程度により変わる。この下部地殻は苦鉄質化学組成をもち, 西南日本弧の後期白亜紀に活動した花崗岩類にとっても重要な起源物質である。