- 著者
-
座馬 耕一郎
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
- 巻号頁・発行日
- pp.202, 2013 (Released:2014-02-14)
昼行性霊長類は日中に活動性が高く,夜間に活動性が低い.しかし昼行性霊長類の中には,日中に昼寝をしたり,夜間に目をさます種も知られている.では彼らの 24時間の活動性は,実際にはどのような周期があるのだろうか?調査はタンザニア,マハレ山塊国立公園に生息する昼行性霊長類の野生チンパンジー( Pan troglodytes)を対象に行った.昼間の行動調査を 2010年 12月~ 2011年 1月に,夜間の行動調査を 2011年 8月~ 9月に行った.昼間調査は 8時から 18時まで,10分ごとにスキャンサンプリングを行い,仰臥位,伏臥位,横臥位を除く姿勢(座位,立位)をとっていた場合を活動性が高いと定義した.夜間調査は 18時から 7時まで,チンパンジーがベッドを作成した樹木付近で定点観察を行い,発声や活動音が聞こえた場合を活動性が高いと定義した.結果,昼間調査で活動性の高かった時間帯は,早朝と昼 12~ 14時,夕暮れであり,11時と 15時に活動性の低下がみられた.また夜間調査で活動性の高かった時間帯は,夕暮れと 23~ 2時,早朝であり,21~ 22時と 3~ 4時に活動性の低下がみられた.以上より,活動性には, 24時間中に,平均 6時間間隔の 4つのピーク(早朝,真昼,夕暮れ,深夜)をもつ周期があり,ピーク間の谷間に昼寝や夜間睡眠の時間帯があると考えられた.深夜の活動性は排泄時に活発になることが知られていることから,昼間の排泄リズムについても検討を行った.2003年 8月~ 11月に,朝 8時から夕方 16時まで個体追跡して収集した資料を分析したところ,排泄の観察頻度の高い時間帯は早朝と真昼(11~ 14時),夕方であり,10時と 15時に観察頻度が低かった.排泄リズムは活動性の周期とやや似ており,日中の採食 .排泄により作られたリズムが夜間の排泄に影響し,24時間の活動性の周期を作り出していると推察された.