著者
橋本 千絵
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.261-267, 1994 (Released:2009-09-07)
参考文献数
17

Immature bonobos genital contact behavior with individuals of most age classes. Genital contact between immature individuals was most frequently performed in the ventro-ventral posture. It was usually observed during play sessions, and males participated more frequently than females. Both males and females perform genital contact with adult males though not so frequently. On the other hand, only males frequently perform genital contact with adult females and its frequency increased with age. As they grew older, genital contact behavior of immature males with adult females became more like copulation between adults. By contrast, immature females did not have any genital contact behavior that resembled copulation. Females became very active in copulation with adult males and genital contact behavior with adult females after they had moved to non-natal groups.
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに最も系統的に近いチンパンジーにみられる「妊娠しにくい」形質の進化の解明のため、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーを対象に、直接観察によるメスの性行動のデータと、ヒト用妊娠検査キットを用いた妊娠時期の判定とをあわせて分析した。さらに、妊娠検査キットによる妊娠判定を一歩進め、2009年度より尿や糞試料によるホルモン分析の予備調査を行った。
著者
横山 拓真 橋本 千絵 古市 剛史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第36回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2020 (Released:2021-04-23)

ボノボは類人猿の中で唯一、メス中心社会を築いている。メスの社会的順位はオスと同等またはそれ以上であり、社会的交渉や性的交渉、遊動の主導権はメスが握ると言われ、このようなメスの特徴が平和的な社会を維持するのに重要だとされている。またボノボは、交尾を繁殖目的だけではなく、食物分配のために行うなど、社会的機能を含むことがあり、メス同士では「ホカホカ」と呼ばれる特徴的な社会的・性的交渉が観察される。さらに、ボノボのメスには「ニセ発情」と呼ばれる、排卵を伴わずに性皮を腫脹させる特徴的な生理状態がある。チンパンジーと比較すると、ボノボは社会構造、社会的・性的交渉、メスの生理状態において大きく異なる特徴を持つ。 これまでの遺伝的研究では、ボノボの子どもの50%以上はアルファオスの子どもであるため、高順位オスは効率的に交尾を独占しているだろうと言われていた。一方で、行動観察からは、ボノボは常に複数のメスが同時に性皮を腫脹させているため、高順位オスは交尾を独占できないだろうとも言われていた。また、「ホカホカ」は社会的緊張の緩和や順位誇示など、複合的な機能があると考えられてきた。しかし、ボノボの社会的・性的交渉をメスの生理状態と行動学の見地から分析した研究は少ない。 本研究では、コンゴ民共和国ルオー学術保護区にて、ボノボの交尾と「ホカホカ」における相手選択の傾向と、メスの生理状態との関連を分析した。その結果、高順位オスは相手のメスの生理状態に関わらず、独占的に交尾をしている傾向が見られた。また、「ホカホカ」では、高順位メスが誘いかけることが多く、他の調査地で見られるような、マウントポジションを取ることによる順位誇示は行われていないことが明らかになった。
著者
橋本 千絵 宮部 貴子 徳山 奈帆子
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

メスが寿命よりも数十年も早く繁殖を終えるという「閉経」は、これまでヒトとクジラ類でしか確認されたことのない非常に稀な進化しにくい形質で、ヒトでなぜ閉経が進化したかについては未だに解明されていない。ヒトに最も系統的に近いチンパンジー・ボノボにおいても、閉経の有無は未だに決着がついていない。本研究は、これまで長期継続調査を続けたウガンダ共和国カリンズ森林保護区の野生チンパンジーとコンゴ民主共和国ルオー科学保護区の野生ボノボを対象に、非侵襲的に収集する尿試料による性ホルモンの動態分析を行い、加齢による性生理の変化と閉経の有無について明らかにする。さらに、閉経の進化に関係する社会的・繁殖戦略的な要因、つまり、老齢メスの子どもの生存率や母親から子どもへのサポートによる孫世代の繁殖成功度の増加などについても調べ、大きな議論を呼んでいる「おばあさん仮設」の検証を行う。平成31年度においては、研究代表者の橋本がウガンダ共和国カリンズ森林保護区で野生チンパンジーを対象とした調査を行い、現地調査補助員によるホルモン試料収集と老齢メスの行動記録を行った。また、研究代表者の橋本と研究分担者の徳山がコンゴ民主共和国ルオー科学保護区で野生ボノボを対象とした調査を行い、現地調査補助員によるホルモン試料収集と老齢メスの行動記録を行った。さらに、分担者の宮部と研究協力者の毛利がホルモン試料の分析について実験を開始した。また、これまでに採取した尿試料についてのホルモン分析を行い、学術誌に投稿するための論文を準備・投稿を行い、学会で発表した。
著者
西田 利貞 松本 晶子 保坂 和彦 中村 美知夫 座馬 耕一郎 佐々木 均 藤田 志歩 橋本 千絵
出版者
(財)日本モンキーセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

文化とされるチンパンジーの地域変異行動の学習・発達過程、伝播経路、習得率や、新奇行動の発生頻度と文化定着率を、タンザニア、マハレ公園のM集団を対象にビデオを用いて調査した。アリ釣りは3歳で始まり、5歳でスキルが向上し、7-8歳で完成する。対角毛づくろい(GHC)も社会的に学習され、相手は5歳頃母親に始まり、次に大人雌、9歳頃に年長雄となり、認知的に困難とされる道具行動より遅れて出現する。多くの文化行動は5歳以上のほぼ全員で確認したが、年齢や性に相違のある行動もある:葉の咬みちぎり誇示をしない雌がいる、灌木倒しは雄に限られ、水中投擲や金属壁ドラミングは大人雄のみなど。新奇行動のうち、赤ん坊の首銜え運搬、腹たたき誇示や水鏡行動は少なくとも他の1個体に社会的に伝播したが、まったく伝播しなかった行動もある。腹叩き、飲水用堀棒、乳首押さえなどの新奇行動は、個体レベルでは3-10年続くが、伝播せずに廃れる可能性が高い。一方、スポンジ作りやリーフ・スプーン、葉の口拭き、落葉かき遊びなどの新奇行動を示す個体は次第に増え、社会的学習に基づく流行現象と考えられた。覗き込みは子供の文化習得過程の1つで、採食、毛づくろい、怪我の治療、新生児の世話が覗かれる。年少が年長を覗く傾向は学習説を支持するが、大人の覗き込みは、他の社会的機能も示唆する。親子間や子供同士での食べ残しの利用は、伝統メニューの伝播方法の1つだ。新入雌が直ちに示すGHCなどの行動は、地域個体群の共通文化らしい。移入メスの急速なヒト慣れも、M群の態度を習得する社会化の過程と考えられた。ツチブタ、ヒョウなどM集団が狩猟しない動物の死体を食べないのは、文化の保守的側面であろう。一方、ヒヒがM集団の新メニューに加わる新奇行動の定着例もある。尿・糞によるDNA父子判定によると、子供の半数の父親が第1位雄で、集団外雄が父親になる可能性は低い。父子間の行動の比較が、今後の課題である。Y染色体多型分析から、Mと北集団の雄の祖先共有が示された。収集資料:DVテープ750本、写真1万枚、野帳220冊、骨格3体、昆虫標本900点、尿標本112個、糞標本139個。
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-22, 2000 (Released:2009-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

We captured 26 males for marking with tattoo using a blowpipe dart containing anesthetic. Individuals shot with a blowpipe got temporarily disabled. When these individuals were released still being disabled, members of the same troop showed various attitudes toward them. Only young males of 5 to 9 years old received aggressive behaviors. Aggressors were also young males of 7 to 8 years old, and they showed both aggressive and affinitive behaviors against the disabled individuals. An adult male and adult females showed only affinitive behaviors, and they protected the disabled individuals from the attack by young males. Close and unstable dominance relationships might cause the aggressive interactions between young males.
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.259-269, 2001 (Released:2009-09-07)
参考文献数
33
被引用文献数
1 5

We examined the 20-years records of female transfer of wild bonobos at Wamba, D. R. Congo. Most females left their natal group between 6 and 9 years old, and immigrated into new groups between 10 and 12 years. Females seemed to travel several groups before settling in a new group. After settling down, they start reproduction and will not transfer to other groups for the rest of their life. We examined average of coefficient of consanguinity of males with whom females may copulate in new groups. The probability of inbreeding drastically decreases when a female transfers groups, and it decreases according to the amount of intergroup travel. Differences in female transfer pattern between bonobos and chimpanzees seem to be due to the differences in the risks of traveling alone, such as predators, social relationships between females, and high social status of females. The balance between cost and benefit of intergroup transfer may determine philopatric social structure in chimpanzees and bonobos.
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第20回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2004 (Released:2005-06-30)

これまでの研究から、チンパンジーの交尾パターンには、「高順位オスによる独占的な交尾」、「機会的な交尾」、「コンソートによる交尾」の3つがあるといわれている。ウガンダ・カリンズ森林では、これまで3年にわたって、チンパンジーのメスが高頻度に交尾を行うことが観察されてきた。これまで行った分析によると、オトナオス同士の順位があまり明確でないこと、また、オトナのオスの数が多い(20頭)ということが、このような高頻度交尾の原因になっていると考えられた。本発表では、実際にメスがどのような状況でこのような高頻度交尾を行っているかを明らかにしたい。調査は、2001年から2003年にかけて、ウガンダ共和国カリンズ森林において、Mグループを対象として行った。発情しているメスを終日個体追跡を行った。メスの発情が続いている限りは、連続して追跡を行った。すべての交尾について、その前後のオスとメスとの交渉パターンを記録した。また、5分毎に、対象メスの行動と、周り5m以内にいる個体の行動を記録した。発情メスが見られない日には、非発情メスについて、行動と周りの個体についての記録を行った。発情期間中、メスはあまり採食をせず休息やオスとのグルーミングを行う時間が長かった。発情メスと非発情メスとの行動の違い、1日の中での交尾の頻度や行動の変化、周りにどういう個体がいるか、どういったオスが交尾を行っているのか、という点についても分析を行い、考察する。
著者
古市 剛史 黒田 末寿 伊谷 原一 橋本 千絵 田代 靖子 坂巻 哲也 辻 大和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ボノボ3集団と、チンパンジー2集団を主な対象として、集団間・集団内の敵対的・融和的交渉について研究した。ボノボでは、集団の遭遇時に融和的交渉が見られるが、その頻度やタイプは集団の組み合わせによって異なり、地域コミュニティ内に一様でない構造が見られた。チンパンジーでは、集団間の遭遇は例外なく敵対的であり、オスたちが単独で行動するメスを拉致しようとするような行動も見られた。両種でこれまでに報告された152例の集団間・集団内の殺しを分析したところ、意図的な殺しはチンパンジーでしか確認されていないこと、両種間の違いは、環境要因や人為的影響によるものではなく生得的なものであることが明らかになった。