著者
宮澤 楓 島田 将喜
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.153-162, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
33

ヤンバルクイナによる台石を使用したカタツムリの殻の割り方と殻の割れ方の対応関係を,行動の直接観察と殻の割れ方の分類によって明らかにした.沖縄県国頭村にて,センサーカメラをもちいた行動観察と,カタツムリの殻の採取を行った.動画内で識別された4個体すべてから地上に露出した石に,カタツムリの殻口を嘴で咥え保定し繰り返し叩きつけて殻の反対側を破壊し中身を食べるというパタンが観察された.台石使用行動はヤンバルクイナにとって一般的で定型化した採餌行動と考えられる.採取されたカタツムリの殻の割れ方は4つのタイプに分類されたが,うち大多数を占めるType 1と,Type 2はヤンバルクイナによる食痕の可能性が高いことが示唆された.クイナ科の系統でこの台石使用行動が直接的証拠により確認されたのは,ヤンバルクイナが最初である.台石使用行動は,丸飲みは不可能だが常時利用可能性の高い大型のカタツムリを採食可能にするという機能をもつ.
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

ヤンバルクイナは、やんばる地方のみに生息する無飛翔性鳥類である。琉球人の共存の歴史は長いが、民間伝承の中にクイナは明示的に登場しない。クイナは赤い嘴と足で忙しく地上を走り回り、道具を用いて大型のカタツムリを食べる。沖縄のキジムナーのもつ特徴は、クイナのもつ形態・行動的特徴と類似している。鳥と人間との境界的特徴が、現実世界と異世界の境界的存在としての妖怪のモチーフとなったとする仮説について検討する。
著者
島田 将喜
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-73, 2018-03-01 (Released:2018-09-01)
参考文献数
52

The existence of meaning arbitrarily created and shared among playing partners, or the existence of culture as a network in which the created meaning and another meaning connect with each other have been claimed to separate animals from humans. A play pattern, so-called play chasing with a target object is observed among juvenile Japanese macaques in provisioned Arashiyama troop. This play pattern is characterized by following two interactive regularities: participants regard only the thing involved now as a target of the play, and a holder of the target object takes a role of the chasee. This play pattern has been established among juvenile macaques in Arashiyama troop, but not established among those in non-provisioned Kinkazan troop. These findings suggest that in play activities, creation of arbitrary meaning and the connection between their food culture and the created meaning can be found among not only humans but also among non-human animals.
著者
宮澤 楓 島田 将喜
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.153-162, 2017

ヤンバルクイナによる台石を使用したカタツムリの殻の割り方と殻の割れ方の対応関係を,行動の直接観察と殻の割れ方の分類によって明らかにした.沖縄県国頭村にて,センサーカメラをもちいた行動観察と,カタツムリの殻の採取を行った.動画内で識別された4個体すべてから地上に露出した石に,カタツムリの殻口を嘴で咥え保定し繰り返し叩きつけて殻の反対側を破壊し中身を食べるというパタンが観察された.台石使用行動はヤンバルクイナにとって一般的で定型化した採餌行動と考えられる.採取されたカタツムリの殻の割れ方は4つのタイプに分類されたが,うち大多数を占めるType 1と,Type 2はヤンバルクイナによる食痕の可能性が高いことが示唆された.クイナ科の系統でこの台石使用行動が直接的証拠により確認されたのは,ヤンバルクイナが最初である.台石使用行動は,丸飲みは不可能だが常時利用可能性の高い大型のカタツムリを採食可能にするという機能をもつ.
著者
島田 将喜 落合 可奈子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.159-165, 2016 (Released:2017-02-07)
参考文献数
27

タヌキ(Nyctereutes procyonoides)はアナグマ(Meles anakuma)の掘った巣穴を利用することがある.ニッチの多く重なる2種が同所的に生息する場合,いずれかの種が何らかの方法で巣穴付近の利用タイミング(時期かつまたは時間帯)をずらすことで種間の直接競合を避けると予想される.山梨県上野原市大野御春山においてアナグマとタヌキが利用することがわかっている巣穴付近に赤外線センサーカメラを設置し,2014年6月下旬から12月中旬までの非繁殖期や非冬眠期の6か月間,2種の行動観察をおこなった.カメラごと種ごとの撮影日時を記録し,巣穴付近での行動を5つのカテゴリーに区分し,1秒単位の連続記録をおこなった.アナグマとタヌキは時期,時間帯をずらして同一の巣穴を利用することによって,両種が時間的ニッチ分化を実現していることが示唆された.タヌキはアナグマに比べて巣穴付近での探索行動の持続時間が長く,その割合も多かった.アナグマは巣穴内をより頻繁に利用することが示唆された.タヌキは嗅覚を用いた探索行動をおこなうことで,アナグマとの出会いを回避しつつ巣穴を共有しているものと考えられる.
著者
盛 恵理子 島田 将喜
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.30, pp.31, 2014

日本の伝統芸能猿回し(猿舞師)では、サルは調教師であるヒトの指示を聞き、観衆の面前で様々な芸をすることができる。しかしサルは芸が初めからできるわけではない。では、「芸ができるようになる」とはどのようなプロセスなのだろうか。エリコ(第一著者)は調教師として茨城県の動物レジャー施設、東筑波ユートピアにおいて、餌を報酬としたオペラント条件付けによる芸の調教を行っている。アカネと名付けられたニホンザル(4歳♀)に、今までやったことのない芸「ケーレイ」を覚えさせるべく調教を行ったアカネはすでに「二足立ち」、「手を出すと前肢をのせる」などができていた。7日間(1日20分間)の調教を行い、その全てをビデオカメラに記録した。動画解析ソフトELANを用いアカネとエリコのパフォーマンスを、ジェスチャー論の枠組みを援用し、コマ単位で分析した(坊農・高橋 2009; Kendon 2004; McNeill 2005)。ストローク長(右手がアカネの場合右背側部、エリコの場合右大腿部で静止してから額に付き静止するまでの動作時間)と、開始・終了同調(エリコのパフォーマンス開始・終了コマに対する、アカネのパフォーマンスの遅れ)の調教日ごとの平均値・標準偏差を算出した。アカネ・エリコ双方において、ストローク長の標準偏差は後半になるにつれ小さくなっていき、平均値は最初と最後でほとんど変化が見られなかった。開始・修了同調は、後半で平均値は0に近づき、標準偏差は減少した。古典的モデルによればエリコは「情報」を教える側であり、芸ができるのでばらつきは最初から小さいと予想されたが、予想とは逆に、エリコもアカネの変化に合わせて自分のパフォーマンスを変化させていたことが示唆される。調教とはサルとヒトの双方が状況と互いに他のパフォーマンスに応じて自分のパフォーマンスを調整し同調させてゆくプロセスのことであり、芸を完成させていく異種間相互行為であると考えられる。
著者
島田 将喜
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.127-139, 2011 (Released:2012-01-19)
参考文献数
48

Previous studies have used some verbs or nouns in ordinary language to describe, count, or analyze different types of animal behavior. However, the concept of "play" is problematic for ethological analysis. Although ethological analysis should be based on well-defined concepts, play is an ill-defined concept because the various meanings of the term necessarily make the boundary of the concept ambiguous and because the phenomena of play do not form discrete categories. Considering these difficulties, the ethological study of play should posit the argument that the concept of play is characterized by prototypeness. Consequently, the question "What is play?" is divided into the following three sub-types: (1) The question on our own cognition of play, "What type of phenomena do I (we) call play?"; (2) the question on the objective features of play, "What are the ethological features of the phenomena that we call play?"; and (3) the question on the animal cognition of play, "How do target animals recognize the phenomena that we call play?" By integrating prototype theory and the ethological study of play, we can establish various important and positive research agendas with respect to these three questions.
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.386-405, 2015-12-31

インタラクションの結果、ある動物Aが相手の動物Bを死亡させてしまうことがある。死亡させた側の行動に肉食や防御といった社会生物学的利益が明白に見いだされる場合には、殺しの因果プロセスモデルを適用できるため、その現象を動詞「殺す」を用いて「AがBを殺す」と記述できる。しかし野生チンパンジーと他動物との間の「狩猟」や遊びのインタラクションにおいては、結果として相手の動物が死亡する場合でも、チンパンジーの行動に明確な殺意や相手を殺す動機を認めることのできない事例が多く観察される。チンパンジーにとって他動物とのインタラクションは相手の動物からアニマシーを最大限引き出すこと自体やインタラクションの持続自体に動機づけられた感情的な実践である。チンパンジーの他動物に対する「狩猟」はアニマシーを有する対象と対峙し、互いに相手の動きを読みあうといった高度な駆け引きを要するゲームであり、インタラクションの持続自体に動機づけられていると考えられる。ヒトの殺しは動機、殺意ともに多義的であるといわれるが、仮にチンパンジーと他動物のこうしたインタラクションを、「チンパンジーが他動物を殺す」と記述することを許容するならば、その含意はヒトと同じく多義的でありうる。
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.117, 2013 (Released:2013-05-27)

動物行動への理解がすすむにつれて、私たちは動物に対して過剰な合理性を押し付け、動物は無駄な殺しをしないはずだと信じている。しかしヒトにもっとも近縁なチンパンジーにおいては、他の動物を殺す場合に、必ずしも明確な殺意や動機が存在しているとは解釈できない事例などが多数あることが分かった。こうした観察結果は、動物においても不合理な殺しはさまざまな形で遍在することを示唆している。
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F03, 2017 (Released:2017-05-26)

ヤンバルクイナは、やんばる地方のみに生息する無飛翔性鳥類である。琉球人の共存の歴史は長いが、民間伝承の中にクイナは明示的に登場しない。クイナは赤い嘴と足で忙しく地上を走り回り、道具を用いて大型のカタツムリを食べる。沖縄のキジムナーのもつ特徴は、クイナのもつ形態・行動的特徴と類似している。鳥と人間との境界的特徴が、現実世界と異世界の境界的存在としての妖怪のモチーフとなったとする仮説について検討する。
著者
島田 将喜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.386-405, 2015

インタラクションの結果、ある動物Aが相手の動物Bを死亡させてしまうことがある。死亡させた側の行動に肉食や防御といった社会生物学的利益が明白に見いだされる場合には、殺しの因果プロセスモデルを適用できるため、その現象を動詞「殺す」を用いて「AがBを殺す」と記述できる。しかし野生チンパンジーと他動物との間の「狩猟」や遊びのインタラクションにおいては、結果として相手の動物が死亡する場合でも、チンパンジーの行動に明確な殺意や相手を殺す動機を認めることのできない事例が多く観察される。チンパンジーにとって他動物とのインタラクションは相手の動物からアニマシーを最大限引き出すこと自体やインタラクションの持続自体に動機づけられた感情的な実践である。チンパンジーの他動物に対する「狩猟」はアニマシーを有する対象と対峙し、互いに相手の動きを読みあうといった高度な駆け引きを要するゲームであり、インタラクションの持続自体に動機づけられていると考えられる。ヒトの殺しは動機、殺意ともに多義的であるといわれるが、仮にチンパンジーと他動物のこうしたインタラクションを、「チンパンジーが他動物を殺す」と記述することを許容するならば、その含意はヒトと同じく多義的でありうる。
著者
西田 利貞 中村 美知夫 松阪 崇久 松本 晶子 座馬 耕一郎 松本 晶子 座馬 耕一郎 島田 将喜 稲葉 あぐみ 井上 英治 松本 卓也
出版者
財団法人日本モンキーセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

採食、道具使用、毛づくろい、遊び、求愛誇示、威嚇誇示のいずれの分野でも文化的行動パターンが見られ、その発達過程の概要を明らかにすることができた。社会的学習のプロセスとして検討した「対角毛づくろい」は形式自体は母親によって「モールディング」で伝達される可能性が高いが、細かいパターンは試行錯誤で決まるようである。記録された40以上の新奇行動のうち、いくつかは「流行」と呼べる程度まで頻繁に観察されるにいたったが、文化として固定される確率は低いことがわかった。